たった1つの笑顔   作:粗茶Returnees

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 2章は1章より短くなると思ってた過去の私へ。2章の方が長くなったよ。未来の私より。


ウタ③

 

 ウタはこと音楽に対して誰よりも誠実だ。誰よりも音楽を愛し、誰にでも最高のものを届けようとしている。

 それは過去の出来事も関係しているかもしれないが、ウタの性格から来るものが大きい。真面目で責任感が強いのはもちろん、全力で取り組もうとする姿勢がある。

 

「「「UTA! UTA! UTA!」」」

 

 その努力が実を結んだ光景が今だ。天竜人との諍いを起こしたにも拘わらず、その人気はむしろ跳ね上がっている。ツアー中に1ヶ月という空白期間を生んでもだ。

 ウタの持つ楽曲自体はまだ多いとは言えない。好きな歌手のカバー曲を混ぜたセットリストとなり、今はもうライブの終盤。

 最後の1曲を歌い切り、歓声を全身に浴びながらウタは深々と頭を下げた。過去の罪を考えれば、歌うべきじゃないとも考えたが、ファンたちはこうして熱を込めて応援してくれる。感謝の気持ちが溢れていた。

 

「みんなさいこうーー!! 大好きだよーー!!」

 

 顔を上げてそう高らかに叫ぶと、更なる歓声でファンからも気持ちが返ってきた。

 ライブはそういうものだ。一方通行では成り立たない。双方の気持ちが混ざり合い、昇華されることで成功を収められる。

 何度ライブをしても、嬉しさで感極まって泣きそうになるウタの姿は、これまでもライブと配信で見られてきた姿だ。その純粋さもまた、ファンの心を掴む要因となっている。一部ではウタは泣き虫とも言われていたりする。

 

「今日の最っっ高のライブもあっという間に過ぎちゃったけど、ここで重大発表があります!」

 

「重大発表?」

「なんだろ?」

 

 ざわつくファンたちをウタは静かに待ち、ある程度落ち着いたところで1人の男を招待した。

 

「このエレジアで、1人で私を育ててくれて、私に音楽を教えてくれた育ての親ゴードン!」

 

 名を呼ばれるとゴードンは舞台袖から姿を現し、観客に会釈しながらステージの中央へ。そこでウタからマイクを渡された。

 世界の歌姫を育て上げた男と紹介されては、ファンたちも熱烈に歓迎するというもの。ステージ上から観客を見るという懐かしい光景に、ゴードンもまたサングラスの下で涙を滲ませた。

 

「紹介にあったゴードンだ。私はこのエレジアで国王もしていた音楽家でもある」

 

「エレジアの国王!?」

「生きてたんだ!?」

「そういえば記事もそうだったような……!」

 

「皆知っての通り、このエレジアは滅んでしまった。私はウタを育てることを、生涯最後の音楽家活動と考えていた」

 

「……ぇ?」

 

 その言葉に最も驚いたのは、他ならぬウタだ。そんな話は一度も聞いたことがなかった。

 いや……聞かなかったのはウタ自身か。

 

「だが、ウタと共にツアーをしていて、ライブの光景を見ていると私の中で強く蘇るのだ。音楽を愛した者たちが演奏するあの光景を! 観客たちと作り上げるこの空気感を! この島でともに高め合う音楽家たちの姿を!」

 

 忘れられるはずがない。これまでは考えないようにしていただけだ。

 だが、ツアーで何度も見ていてはそれはフラッシュバックを起こす。愛した景色が訴えかけてくる。

 

「私は音楽を愛し、このエレジアを愛している。だから、またこのエレジアを世界一の音楽の島として再興させたい!」

 

「エレジアを再興!?」

「でもそんなこと……」

 

「私は国王に戻りたいわけではない。1人のエレジア国民として、音楽家として、またここで音楽が奏でられる日々を取り戻したいのだ」

 

「みんなが不安になるのはわかるよ。ここは……か、海賊のせい、で……滅んじゃったし……」

 

 真実と現実の違いを知りながら現実に合わせるのは、ウタにとって辛いことだった。ファンの目には、また違うように見えたかもしれないが。

 

「でも安心して! こうして今日ライブができたし、これからも安心で安全だって保証できるから! 2人とも来て!」

 

 ウタに呼ばれてこれまたステージに姿を現した2人に、観客の全員が驚愕を顕にした。なにせそれは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「が、ガープ。英雄ガープだ!!」

「その横にいるのは七武海のバギーだ!!」

 

「ったく、何が悲しくてロジャーのとこの見習い小僧と()()()()を出さにゃあならんのじゃ」

 

「ギャハハ! 七武海様の力も必要なんだろ。ウタきっての頼みだ」(相変わらずおっかねぇ! 白ひげと言いジジイ共が出していい圧じゃねぇだろ!)

 

「ふん。この島の安全はわしの名で保証する! もし海賊に襲われたら必ずそいつらを捕まえると約束しよう」

 

「それにおれ様も力添えするって話だ!」

 

「……戸惑うみんなの気持ちもわかるよ。七武海は政府側と言っても海賊。海賊嫌いの私がなんでって、そう思うよね?」

 

 反発の声が生まれる前に、ウタは理由を話していく。これまでのツアーで感じたことを話すために。

 

「知っての通り私はツアーをして、いろんな島を見てきた。それまではね10年半も私はここで過ごしたの。外のことを何も知らずに、配信で少し齧ったりするぐらい。知識が浅くて、視野が狭かった」

 

 それを変えたものこそワールドツアーだ。

 

「海賊は悪。海軍や政府は正義。世界はそうできてるけど、世界も人も単純なわけがないんだもんね。気のいい海賊もいれば、ヤクザみたいな海軍もいる」

 

 出会ってはいないが、G5のことをウタはそう聞いている。ベルナートもそう言っていたから、事実なんだろうと受け止めたわけだ。

 

「もちろん海賊を許そうねなんて言わないよ。99%以上は悪いと思ってる。でも、それぞれだとも今は思うんだ」

 

 一般人は正義か悪か。世界を二分させると一般人は正義側となるだろう。海賊という存在が悪なら、海賊じゃなければ正義だ。極端に分けるとそうなる。

 だが一般人が悪になることもあろう。海賊だって海賊になる前は一般人だ。そうならなくとも、人を殺めることもある。盗みを働くこともある。

 分類だけで判断することは危険だ。それこそがウタがツアーで気づいたこと。自分の視野の狭さだ。

 

「エレジアが再興して、他の人の手を借りなくても安泰になるならそれが一番。バギーにもガープさんにもお願いしてるのは、エレジアがそうなるまでだよ」

 

 つまり、エレジアが世界政府に加盟できるようになるまでだ。

 加盟する前だと、ベルナートの故郷の二の舞いになりかねない。エレジアはウタの故郷とも呼べる大切な場所であり、天竜人はウタを狙う。そこを防ぐために、ガープとバギーの名を借りた。

 そして秘密裏にだが、シャンクスの力も借りることは確定している。

 

「みんなに改めて宣言するよ。私はウタ。()()()を音楽で幸せにする、新時代を作る音楽家! そんな私に付いてきてくれる人に向けて重大発表! ファンクラブ作ります!!」

 

「え……」

「「「ええええぇぇぇぇぇー!!?」」」

 

「加入条件は簡単! 私のグッズを何かしら買ってくれること! それがファンクラブの証明! あとファンクラブには限定の特典も考えてるよ! それとグッズの売上は全部エレジア再興のために使うから!」

 

「待って待って頭が追いつかない!?」

「ファンクラブで!? 七武海と英雄が保証してて!?」

「ウタの人脈どうなってんの!?」

 

「ぶわっはっは! 短い間に思ってた以上の器に成長しよったな!」

 

(シャンクスにも会えたようだし、殻は破れたってとこか)

 

「グッズ販売に関してもバギーに力を借りるけどね」

 

「ん!?」

 

「なんじゃ、わしの方で受け持ってもよかったぞ」

 

「そこも2大体制にしようか」

 

「今決めんな! ……まぁやってやるけどよ」

 

 伝説の海兵と王下七武海の全面協力。それをわざわざこの場で言ったのはもちろん、より効果的に世界に知らせるためだ。

 ウタのライブとなれば配信の視聴者は多い。政府関係者も見ていると予想し、ライブ後ではなくライブ終盤に宣言した。こうなれば世界政府も手を出しにくい。天竜人であったとしても。……そこで一考するのかは別として、政府側が抑制しようとする。

 もし強引に出るとすれば、それは政府の信用を落とす行為になり、何よりも四皇を相手にすることになる。それどころか七武海までセットだ。これ以上の抑止力はないだろう。

 

 

 

 

 

 

「ライブはもうそろそろ終わりかな。私も眠くなってきたし」

 

「そっか」

 

 寄りかかっているウタの背に手を回し、ベルナートはウタを抱き上げてその場を跳躍して離れた。

 急なことだったがウタもベルナートの首に腕を回しており、眠そうにしながら疑問を目で語った。その答えはステージ上に姿を現した人物だ。

 

「そっちから堂々と来るんだな」

 

「トット・ムジカの楽譜。その所在を聞くためじゃ」

 

「なんであれを……」

 

「2つの鍵のうち1つを、政府側が手中に収めて管理しようってか」

 

「そういうことじゃ。元国王に聞くつもりだったんじゃが、仮想世界側にいるようじゃからな」

 

「城の地下の奥深くにあるはず。封印されてるやつだから、厳重に保管されてると思う」

 

()()()()()()()()()

 

「なかったか」

 

「え!?」

 

「……その様子じゃと所在は知らんか。元国王に聞くにしても、目を覚ますのを待つ必要がある」

 

「チッ」

 

 ウタを抱えたまま一歩横にズレる。その直後には地面に穴が開けられていた。

 

「残念じゃが、歌姫の身柄を拘束させてもらう」

 

「!!」

 

「嫌なタイミングをついてくるな」

 

 ウタウタの実は強力だが、弱点も欠点も存在する。能力を展開できる時間の限界などもあるが、最も注意すべきなのは能力が切れるタイミングだ。

 ウタは眠ることになり完全に無防備な状態となる。しかもウタワールドにいた者たちが目を覚ます時間もバラバラ。このタイミングに、潜んでいた者がしかければウタ本人になす術はない。誰かしらに守ってもらわないといけない。

 それを今回は、ベルナート1人でだ。

 

「ベルナート……」

 

「大丈夫。オレに任せてウタはゆっくり寝ときな」

 

「でも……!」

 

 カクの発言からウタもわかっている。敵は1人じゃないということを。複数人を相手に、ベルナートはウタを守りながら単独で戦わないといけない。

 その不安にウタの瞳が揺れる。

 それでもベルナートは朗らかに笑った。心配無用だと。

 

「オレを信じろ」

 

 力強くそう言う相棒(パートナー)に、ウタは頷くことしかできなかった。

 怖さはあるのだ。自分の身のことではなく、ベルナートの身のことで。起きたら嫌な現実が待っていた、なんてことになりかねないこの状況。

 それを振り払うように、ウタはまぶたを閉じた。

 ウタが寝ることで、ベルナートに味方する者たちが起きるはずだから。

 

「悠長にはしていられんな」

 

 ウタが寝ること。そして観客たちが起きること。これがカクたちにとってのタイムリミットだ。一般市民の前で堂々とウタを連行するわけにもいかない。何よりも赤髪海賊団の相手は戦力差で不可能である。

 

(ソル)

 

 目にも止まらぬ速さで移動する技。六式と呼ばれる体技の1つ。それを使ったところで未来視する相手に奇襲はできないが、圧をかけることはできる。

 

「ドアドア」

 

 ベルナートの足下をドアにして動きを封じようとするも、先に読まれて跳躍される。空中に浮いたところをカクが嵐脚を放つが、それも体を捻って避けられる。そのままベルナートは月歩で移動し、()()()()()()()()()()()()()

 

「マハ!」

 

 仮面を手で持つ人物が、移動先に待ち構えて足を振りぬく。ベルナートは体を反らして躱しながら、カウンターとしてサマーソルトをマハに放った。

 

「手で持つくらいなら仮面つけろよ」

 

「余計なお世話だ」

 

 蹴られようとも一歩も引かず、マハは指銃(しがん)を繰り出す。それも躱したベルナートは、真下へと急降下してステーシューの飛ぶ指銃をも避けた。

 

「悪いが人数有利は崩せんぞ」

 

「ぐっ……!」

 

 着地に合わせて放たれていた嵐脚をベルナートは背で受けた。抱えているウタに傷を負わせるわけにはいかなかったからだ。

 いくら未来視ができようとも、捌き切れない未来を用意されては最小被害を選ぶしかない。

 闇の正義たるサイファーポール。その誰もが実力者なのは言うまでもない。それを4人同時に相手しながら意識のない者を守るのは、簡単にはいかないものだ。

 

「ったく。ウタの睡眠が悪くなったらどうしてくれんだ」

 

「気にするのそこなのね。ふふふ、大人しく引き渡してくれたら彼女の睡眠の質も保証するわよ?」

 

「断る」

 

「頑固ね」

 

 CP0はベルナートの包囲を崩さない。常に3方向に人がいて、なおかつドアドアの実の能力者たるブルーノが潜んでいる状態だ。未来視があるとはいえ、ブルーノがアクションを起こさない限りベルナートは全方向に注意を向けないといけない。

 背後でマハが動くのを察知し、未来視込みで嵐脚を放つ。先読みされてはマハも動きを中断するしかなく、その一瞬の隙をベルナートが見逃さない。

 

「まずはお前から」

 

「そうはさせん」

 

 ベルナートとマハの直線上。そこにブルーノがわざとドアを開ける。空間さえドアにできるその力は、ウタワールドとはまた違った異空間に人を入れられる。

 それを開けられたことでベルナートもまた動きを中断し、踏ん張った足で真上に飛び上がった。

 

「嵐脚は便利だな」

 

 姿を見せたブルーノを含めた4人。その全員に目掛けてベルナートは空から斬撃を何発も降り注がせる。

 

「やられる側は厄介じゃな」

 

 そうは言うが1人あたりの斬撃量は少ない。4人全員がそれを難なく躱しつつ、ベルナートとの距離を詰める。

 

「技のキレが悪いぞ」

 

「ご指摘どうも!」

 

「うおっ!?」

 

 空中に上がったのは4人を視界に収めるためでもあるが、もう1つの目的は相手を誘き出すためだ。なまじ月歩で空中を自在に動ける分、そこに飛び込みやすい。

 ベルナートはそこを狙い、空中で最速を叩き出し、カクに蹴りを叩き込んだ。鉄塊での防御は間一髪間に合ったようだが、勢いのままにカクはステージに埋め込まれた。

 

「つッ……!」

 

 そうやって全力を出すと、背中の傷が開く。血が吹き出すのを自覚しながら、たった今撃ち抜かれた右足の状態を把握する。

 飛ぶ指銃は銃と変わらない。人数不利の逆境を改善するために強引な手を取ったベルナートだったが、ステューシーにそこを狙い撃ちされた。

 撃たれたのは右ふくらはぎ。急所はぎりぎり避けており、骨も問題ない。だが踏ん張りが効かない。

 

「歌姫という重荷があなたの敗因ね」

 

「ウタは軽いぞ。羽毛みたいにな。この負傷はオレの弱さ。それ以上でも以下でもない」

 

 左足に力を入れて距離を取る。カクを埋めたことで包囲を崩せたが、すぐにブルーノが救出している。再包囲の前に陣形は返させた。

 

「……これ以上の怪我はできないな」

 

 空気が変わったことをCP0は感じ取った。分かっていたが、ベルナートはこれまで本気を出してはいない。素人かつ睡眠中のウタのことを気にかけながら動いていたのだから、負担がかからないようにぎりぎりの範囲で収めていた。

 しかしそれでは守れない。

 腕の中の温もりに目を向け、表情を確認して前を見据えた。ウタは僅かに不安そうに眉を顰めていた。それでは駄目なのだ。

 

「お前らにはご退場願おうか。迷惑なファンにはそれ相応の対応が必要だからな」

 

「厄介なセキュリティだな」

 

鳴鏑(なりかぶら)!」

 

「……あら、女の顔を狙うだなんて」

 

 ツーっと流れる血を拭いながら、ステューシーはベルナートのさらに後方を睨んだ。舞台袖から出てきたのは、棍棒を携えて角の生えている人物。ヤマトだ。

 

「傷が怖いなら出てくるべきじゃないよ。この戦闘、僕も混ぜてもらおうか!」

 

「起きるの早いな」

 

「ウタに起こされてね。大丈夫かいベルナート? 傷を負ってるみたいだけど」

 

「気にすんな。ニューファッションだ」

 

 ニヤッと笑うベルナートに、ヤマトも笑って返した。本人が大丈夫だと言うのだからそうなのだろう。まだ余裕がある証でもある。

 

「1人増えたが、任務を遂行するぞ」

 

「当然だ」

 

「いや、お前たちには任務を降りてもらおうか」

 

 仕切り直しだと構えたCP0の耳に、重みを感じさせる声が届いた。その声の主を見て4人は戦慄した。

 その声の主こそ、四皇の一角。赤髪のシャンクスだからだ。

 

「トット・ムジカの脅威を取り除く。その事自体は大いに賛成だが、ウタを狙うとあっては話が別だ」

 

「関わりがあると?」

 

()()()()()()()()

 

「「!?」」

 

「大切な仲間(家族)を攫おうってんなら──死ぬ気で来い!」

 

 浴びせられる四皇赤髪のシャンクスの覇気。海軍本部の中将ですら一部持っていかれるそれを、CP0は膝をつきながらなんとか意識を保たせた。

 

「……っ、かは! はぁはぁ」

 

「手を引くしかないな……」

 

「せめて楽譜のありかは知りたかったが、仕方ないの」

 

 これ以上の滞在はできない。任務が失敗に終わることになるが、シャンクスに立ち塞がられたとあれば当然の結果だ。文句の言われようもない。

 撤退していくCP0を見届けたシャンクスは、ホンゴウを叩き起して急いでベルナートの手当をさせるのだった。

 

 

 

 

 

 それから数時間後。ファンたちの出航もすべて見届けた。ガープは船を近隣の島に停泊させており、そこに連絡して迎えに来てもらう手筈。バギーもまた同様の流れだ。

 

「赤髪ィ……!」

 

「直接見るのは戦争以来か。ガープ。今日はオフなんだろ?」

 

「フン! その調子の軽さ、ロジャーを思い出すわい」

 

「2人とも仲悪いの?」

 

「そりゃ海賊と海兵は基本相容れないからな」

 

「それもそっか。どっちとも知り合いだとなんか複雑」

 

 ウタも目を覚ましており、不穏な空気を作っている2人の間に割って入った。この光景が成り立つのも、ひとえにウタのおかげだ。

 

「バギーもこっち来てー」

 

「来てたとは驚いたぞバギー! 言ってくれても良かったのによ水臭え」

 

「うるせぇ! テメェに会う気はなかったんだよシャンクス!」

 

「まったくじゃ!」

 

「まぁまぁ3人とも。ガープさんの部下も、バギーの仲間もこっちに向かってるんだよね?」

 

「そうじゃな」

 

「今度は何を企んでる?」

 

「打ち上げしたいから、一緒にどうかなって! ワールドツアー完了記念とエレジア再興祈願を兼ねて!」

 

「「滅ぼした本人ここにいるが?」」

 

「ううん。シャンクスは私の罪を被ってくれてるだけ。本当は私がトット・ムジカを起こしちゃって滅んだの」

 

「はぁ!?」

 

「ウタ……!」

 

「いいんだシャンクス。この2人は信用できる。広めもしないし」

 

「……そういう事じゃったか。センゴクも引っかかっていたがやはり……」

 

 しんみりしそうなところを、ベルナートがウタの頭を撫でて和ませた。結局ファンのみんなには言えなかったが、協力者となる2人には明かせた。第一歩としては十分だろう。

 ならばあとは暗くなるのではなく、明るく盛り上がるべきだ。

 

「打ち上げに付き合ってくれますよね?」

 

「無論じゃ。うちの部下はすっかりウタのファンじゃからな」

 

「コビーとヘルメッポも来るの?」

 

「ああいや。あの2人はもうわしの下から巣立った。今は新世界におるぞ」

 

「そうなんだ。ちょっと残念だけど、また会えるよね」

 

「互いに海を渡っておればな」

 

「バギーの方は?」

 

「もちろんやらいでか! うちも派手好きな連中ばかりよ! 盛り上げてやるぜ!」

 

「うん! みんなで楽しもうね!」

 

 海兵、四皇、王下七武海。

 それぞれの立場こそ違えど、部下たちの大きな戸惑いもあったものの。ウタのファンであることは共通していた。

 この日、ウタが理想とする景色が、しっかりと彼女の目の前に広がるのだった。

 

 

 ~2nd take complete~

 

 




 短編でやろうと思ってたことは終わってるんですよね。次の章はどうしたものか。次が最後の章なのは確定ですが、構想中~。
 次の更新はあんまり日が開かないと思います。めいびー。
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