社畜きわめてるのでリアタイできませんが、楽しみです。
誤字報告、ここすき機能もいつも感謝です。
「この状況だとルフィはドフラミンゴを倒す気満々だと思うんだよね」
「そんな感じはするな」
「共闘するの?」
「ドフラミンゴを討てるなら任せるのも視野。オレが倒したい気持ちはあるけどな」
「へぇ~。頭は冷えてるみたいだね」
「ウタのおかげで」
「うんうん! あれは効いただろうね~。僕もやってあげようか?」
「ヤマトに叩かれるのは痛いからいやだ」
「……残念」
「ドSめ」
「そっちじゃないんだけど。失礼しちゃうな……」
そうやって軽口を叩き合いながら、挑んでくる相手をノンストップで返り討ち。やる気に満ちた雄叫びは、いつの間にか悲鳴へと変わっていく。
「宣戦布告したからには自分で、とかはないんだ?」
「あるにはあるけど、今の相手はドンキホーテファミリーだけじゃ済まない」
「……あぁ、黒ひげ海賊団」
「そう。ドフラミンゴが配置を整えてくれたおかげでわかりやすい。デカイ気配がまだいる」
「じゃあそっちに向かうわけだね」
「何狙いかによる。……能力者狩りなのはそうだろうけど、その対象が誰かだ」
「ウタがここにいることはまだバレてないはずだけど」
「可能性はあるからな。他だと、……正直ドフラミンゴのなら邪魔せずに持って行けって話がつくんだけど」
「ひどい嫌いようだね」
「シュガーとか、麦わら狙いなら止める」
「なるほどね。今は王宮目指してるけど、こっちでいいの?」
「まずは麦わらを王宮に辿り着かせないとな。道を作ってからだ」
「了解」
ただひたすら真っ直ぐに駆け抜けていく2人を、誰もが1秒たりとも止めることができていない。前方にいた同士たちが次々と宙を舞う光景は最早一種のホラーなのだろう。次第に挑むものはいなくなり、2人の道を作るように左右へと退いている。
嵐の如く過ぎ去った2人の背も、またたく間に見えなくなる。こういう時には、ヤマトが隣にいるのが様になっているなとウタは自然と思った。
そのことへのざわめきはなかった。相手がヤマトだからというのもあるが、ベルナートの隣にそういう相手がいることが嬉しかったからだ。1人でいることも多かったベルナートは、今や誰かといる姿が様となっている。無意識にウタは頬を緩めていた。
「……能力者か」
「さすがは海軍の英雄、気づかれるわよね」
「モネ! ついさっきまでベルナートがいたんだけど」
「知ってるわ。彼が王宮に向かったから私は今ここに来たのよ。……彼も気づいてたでしょう?」
「そうだけど……」
モネが今は会う気がないと言っていたのは、隠れているとベルナートが気づいていたからだ。それが裏打ちされ、ウタはどこか納得のいかない顔をしている。
「いいのよ。……正直に言うと、何を話せばいいかわからないから」
「……モネ……」
この場にいはドンキホーテファミリーの最高幹部が2人いたが、もう1人幹部もいた。ウソップの人間離れしたリアクションによって気絶させられたシュガーだ。
ディアマンテは王宮まで強制送還。トレーボルは重傷で動けない。末端の部下たちは、この場に来る際にヤマトが薙ぎ払っており、残りの者たちもガープがいては下手に動けなくなっていた。
つまりシュガーは置き去りにされている状態であり、モネはそのシュガーを回収しに来たのである。
ホビホビの実を食べた時から体の成長が止まった妹を、モネはそっと優しく抱き上げた。
「モネはどうするの?」
「……見届けるわ。王の台地で」
今のドレスローザは、王宮か王の台地からが国のほぼ全体を見渡せる状態だ。王宮の方が高い位置にあるが、そこには行けない。
モネはドンキホーテファミリーを辞めたわけじゃない。裏切りと見なされたとしても、モネ自身はファミリーの一員だと名乗る。トップであるドフラミンゴに直接追放されない限りは。
それと同時に、ベルナートの戦う理由も理解している。今回もまた、板挟みだ。ベルナートとの冒険の日々が終幕したあの日と同様。モネにはどちらかだけを選ぶことができなかった。
「誰かを好きになるのは、難しいわね」
「モネ……」
「……」
「ウタ。ベルナートは昔と変わらないけれど、でも変わったものもあるわ」
「え、そうなの?」
「私の推測が正しければ、だけどね」
「じゃあ変わってるんだろうね」
「え」
「だってモネがそう言うんだもん」
笑顔で断言されてモネは言葉を詰まらせる。それはウタがモネを信じている証。ウタとは正反対の、闇側の組織に属している人間なのに、ウタはそれを理解してなおモネのことを信じていた。
それは、モネがこの状況でどっちにも付かないからだ。ベルナートを裏切らずに、誠実に向き合っているから信じることができている。
何よりも、信じたいという気持ちがウタを後押ししている。
「私も王の台地に行くよ。これは私が見ないといけないことの1つだから」
「ウタは強いのね」
「だってベルナートがいてくれるんだもん。側にいてくれるから、私は最強にだってなれる。でしょ?」
「……うふふ、ええ。そうね」
「移動するなら早めに動くとしよう。この鳥カゴとやら、これだけで済むとは思えん」
「うん。あ、ガープさん。ちょっとやりたいこともあるんだけど」
□
ドレスローザの歴史は、世界創生の歴史に関連する。現在の世界政府を作り上げた20の国の子孫が、天竜人と呼ばれる者たち。厳密にはアラバスタのネフェルタリ家が拒否しているため、19の国の子孫だが。
聖地マリージョアに住まう彼らだが、遥か昔からそこにいたわけではない。
そこに住む前は、それぞれの国に国王として存在していた。その内の1つがこのドレスローザ。
リク王家が統治する以前は、現国王と同じドンキホーテ王家が統治していた。ドフラミンゴの帰還は、いわば先祖の地へと帰還。正当性がないとは言い切れない。
「よっと。あなたがリク王ですか」
「うわっ。改まってるベルナート久々に見た。違和感しかないね」
「うるさいなーこの野郎」
「いひゃいいひゃい!」
「君は……」
「トレーボルを打ち倒していた剣士ね。味方と見ていいのかしら?」
「それでいいですよ。ニコ・ロビンもここにいるのか」
「随分と早い到着ね。ルフィなら今トラ男くんと王宮に向かってるところよ」
レベッカも一瞥したベルナートは、ヤマトの柔らかな頬から手を離して王宮を望んだ。打ち倒そうと挑む者たち、それを迎え撃つために布陣するドンキホーテファミリー。
道を作るためには、ルフィがそこに辿り着く前に追いつく必要がある。この場に長く居座る理由はなかった。
「リク王に1つお聞きしたい」
「……何かね」
「ドンキホーテファミリーが敗北した後、この国をどうされますか?」
「私はこの悪夢を防げなかった王だ。玉座に戻る資格などない」
「では誰に統治させるおつもりで? あなたの娘か、それとも孫ですか?」
「それは……」
レベッカはその出生の経緯から、王宮を離れて生活していた。ドンキホーテファミリーに捕らえられた後は剣闘士生活。
その点ヴィオラは王宮生活の経験があり、リク王の統治も見てきた。ドフラミンゴが国王に座ってからも、交換条件を下に王宮内で、国の中心で見てきた。だが、建て直しというスタート地点から始まる国を背負うには力が足りないだろう。
その問題点をリク王だって気づいている。気づいてはいるが、責任感の強い彼がその座に戻ることを、彼自身が望めない。
「……仮に全く新しい統治者が誕生したとして、それが戦争を是とした場合あなたはどうしますか? 認めますか?」
「……その場合私はただの国民の立場となっているだろう。その上で、私はそれに反対する。それだけは声を大にして抗う」
「あなたは、そうする人でしょうね。……ひとまず、悪夢は和らげておきます」
「?」
今の状況で何が最も悪夢たらしめているのか。それは本人の意志とは無関係に、周囲の人間を傷つけさせられている人たちがいることだろう。ドフラミンゴがよく使う手だ。
不可視のその糸を、ベルナートは斬撃を飛ばすことで切断していく。それにより周囲の人間を襲う手が止まり、そのことをヴィオラが千里眼で確認した。
「ドフラミンゴがまたやったら、その時にまた糸を斬ります。オレとヤマトは最前線に行ってきますね」
「政治のこととかよくは知らないけど、国民に呼びかけはした方がいいんじゃない?」
「私の信用は10年前にとうに尽きている……」
「そうかな? 僕はリク王の行動1つで変わることもあると思うよ」
「あっ、2人とも待って! 最前線に行くのならこの鍵を!」
「なにこれ?」
「トラファルガーの手錠の鍵よ。彼は今海楼石の手錠がつけられてて能力が使えない」
「なんでそんな状態で行ってるの!?」
「ルフィが連れて行ったのよ」
「何してんだあいつ!?」
行動力の塊ではあるが、それは後先考えないでのことらしい。むざむざと殺されに行ってるようなものであるローの心境たるや。かわいそうになぁとベルナートとヤマトは同情した。
ヴィオラからヤマトが鍵を受け取り、ヤマトを抱えたベルナートが王の台地から飛び去る。空中を走り抜けて行くその様に、リク王家はぽかんと口を開けた。
「ゼルセナス・リチャード……いや、今はベルナートか」
「お父様?」
「……今は考えるべきではないな」
「?」
□
ドフラミンゴが仕掛けたこのゲーム。それに挑むは麦わら海賊団だけでなく、ドフラミンゴの支配を受けていた元おもちゃの剣闘士や海賊たち。今日の大会に出場した名だたる戦士たちも加担している。
彼らの前ではドンキホーテファミリーの一般兵は歯が立たず、次々と撃退されていく。
王宮があるのは全部で4段となっている台地。3段目には幹部メンバーが立ち塞がっている。
「巨大な石像があるね」
「ピーカの能力だな。今は動いてないみたいだけど」
「2段目が荒れてるね」
「麦わらもそこにいるみたいだし、急ぐか」
ヤマトがベルナートの首に回している腕に力を込めると、それを合図にベルナートが加速。高度を下げていってルフィの前に着弾した。
「モッ!?」
「なんだなんだ!?」
「もうちょっと着地を優しくしてほしいかな」
「テキトウで悪かったな」
「お~! ベル男にヤマ男じゃねぇか! どっから降ってきたんだ?」
「追いついて何よりだ」
「お前もミンゴ狙ってるのか? あのなぁ。ミンゴはおれがぶっ飛ばすからな」
「そのへんはご自由にどうぞ。トラファルガーの手錠の鍵を預かってきた」
「本当か! 早く外せ!」
闘牛の上で大人しく横になっていたローが飛び上がる。手錠を外す前にルフィに連行されたから、気が気ではなかったのだろう。ヤマトが持っていた鍵を、能力者じゃないベルナートが持ってすぐにローの手錠を外した。
これにより、ドンキホーテファミリーに挑む者たちの体勢が完全に整ったことになる。
「ししし! な! 手錠外れたろ?」
「天喰い屋が持ってきたおかげでな! あとで覚えてろ麦わら屋!」
「あー待て待てお前ら。オレとヤマトで道を作るから、お前らはそこを真っ直ぐ進め。体力は温存するもんだ」
「道だと?」
ヤマトが先に闘牛の前で武器を構える。ベルナートもそれに続いたことで、ルフィは2人が何をするつもりなのかを理解した。闘牛のウーシーに少し下がるようにと指示を出し、ルフィはその背で待機。ローもそれに倣ってウーシーの背に座る。
それは魚人島でもやってのけた合わせ技。真っ直ぐに進めという指示は、ルフィにリトルガーデンでの記憶を彷彿とさせる。
「今回は王宮まで貫けばいい。互いに全力でやるぞ」
「わかった。道は?」
「オレに考えがあるから気にすんな」
魚人島ではヤマトが威力を担い、ベルナートが制御に意識を割いた。しかし今回はそんな分担がない。ベルナートが多少工夫はするが、どちらも威力に重きを置いている。
「「覇龍!!」」
2段目の位置から、4段目にある王宮目掛けて大技が駆け抜ける。その範囲内にある大地は抉れ、一部の幹部も薙ぎ払われた。
それでいて抉れた地面は一定の間隔で段状になっている。闘牛のウーシーが駆け抜けやすい作りだ。
「うは~~! これすげぇな!」
「王宮までの道ができた! 牛を走らせろ麦わら屋!」
「ああ! 2人ともありがとな!」
「ドフラミンゴは任せたよルフィ! あとローも」
手を振ってルフィたちを見送るヤマトは、隣にいるベルナートをちらりと覗いた。
その目は王宮を見ているようだったが、正確に追いかけてみると少し違う。王宮の中心ではなく、その横を見ていた。
「そこにいるなら、僕らも上に行こうか」
「だな。黒ひげ海賊団の邪魔をしに」