途中読みにくかったらすみません。気分に任せて書きました。
ワノ国は世界政府未加盟国である。ベルナートの生まれ故郷のような資金問題が原因ではない。ワノ国は比較的安定した国家だった。それなのに加盟しなかった理由は、歴史を辿ることで知ることができる。
世界政府が研究を禁止にしている「空白の100年」。世界政府という組織が発足する要因となった抗争。
どういう形だったのか、ワノ国はその戦いに関与している。
世界政府にとってワノ国は敵対国家ともとれる国だ。鎖国をすることで外界との関わりを断っているが、その国への警戒を解くことはできない。世界に存在する3つの古代兵器。そのうちの1つたるプルトン。それが眠る国となれば殊更に。そして下手に手出しできなかった理由でもある。
ここ数十年はカイドウが拠点にしていたのだから余計に手出しできない。
「面白い戦いにはなってきている」
そんな国に入り込んでいる3人の男。仮面で顔を隠しているこの者たちは、世界政府が抱える特級諜報員であるCP0。将軍オロチと接触していたこの者たちは今、用意された一室にて戦況を静観している。
『仮にカイドウが敗北した場合、ワノ国は世界政府の管理下に置くことが決まった』
通信相手は天才と称される諜報員ロブ・ルッチ。彼からの話はすべて、世界政府の意向が示されている。主にそれを決めているのは五老星だが。
この戦いが大方の予想通りに、つまり四皇側の勝利に終われば世界政府は手出しをしない。四皇同士で同盟を結んだカイドウとビッグマムを相手にするなど、それこそ2年前の白ひげとの頂上決戦以上の規模となる。
あの時は世界中の優秀な海兵を呼び寄せての迎撃態勢。それを上回るものとなれば総力戦となるだろう。どちらかが確実に滅ぶ規模の戦い。時代の節目どころではない。世界の構造そのものが変わってしまう。
そのリスクを犯すわけにもいかず、四皇側の勝利となれば派遣されている政府の船団及び兵士たちは撤退だ。
『決着がどうであれ、ニコ・ロビンは連行しろ』
「当然だな」
オハラの生き残り。
2年前には一度エニエス・ロビーにまで連行できたものの、麦わらの一味により奪還。一味の活動休止期間では革命軍と接触。現在に至るまで最早手出しできない状況にいた。
そのガードが崩れるチャンスこそ今だ。四皇との全面戦争。カイドウの幹部が次々と倒されているものの、カイドウとビッグマムは健在。さらには兵力差がある。連戦を重ねれば疲労が溜まり、注意も散漫となる。狙うには申し分ない。
実行するのはゲルニカとマハの2人だ。ヨセフは状況把握のためにこの部屋に残る。
「悪いがお前らにはこの場に留まってもらうぞ」
ゲルニカとマハが部屋を出ようとしたその時、どこからともなく現れたベルナートが、刀に手をかけたまま声をかけた。
同じ部屋の中だ。すでにベルナートの間合いに3人ともいる。誰も下手には動かず、まだ通信を繋いでいたルッチが声を発した。
『天喰い。なぜお前がその場にいる。カイドウともビッグマムとも因縁はないはずだ』
「カイドウとは前から間接的にあったぞ。ビッグマムの方も、ウタを狙って息子どもをけしかけてきたしな」
『……お前の目的は何だ。まさか四皇の首ってわけでもないだろ』
「そうだな。そんなものに興味はない。最悪の世代たちにそこは任せる。目的は親友の手伝い。あと今1個追加で、
『喧嘩を売る相手はよく選ぶことだな』
「ははは。2年前に麦わらに負けた男は言うことが違うな」
『ッ……』
電伝虫からルッチの苛立ちが伝わってくる。表現豊かな電伝虫は、こういう時には不便かもしれない。本来顔の見えない相手とのやり取りを、擬似的に可能としているのだから。
「本気でオレを潰しに来るなら来たらいいさ。それ相応の覚悟をしてな」
『政府は既にそのつもりだ。お前は自身の懸賞金が上がった意味を理解していない』
「……なるほどな。でもま、個人の相手してる暇はないだろ。今年の
「……随分と挑発的に話しているな」
「ん?」
口を挟んだのは棒のついた仮面を手で持っているマハだ。遮るように話したために、何かがあったことはベルナートも察せられる。だが話の主導権は握られた。流れが変わる。
「エレジアの時とは違う。我々に目を向けさせるためか」
『貴様たちのことだ。ウタもワノ国におるんじゃろ』
『ならば任務は確定だな。ニコ・ロビン及びウタを連行しろ。その男の生死は問わなくていいそうだ』
「了解した」
これまでの方針では、ベルナートを生け捕りにすることになっていた。天竜人が自らの手でベルナートを処刑したがっていたからだ。手配書では元より生死を問わないことになっていたが、それは秘密を保持するためである。
しかしここに来てその方針が変わった。死体であろうと構わないことになった。痺れを切らしたことが1つ。それ以外の理由としては、革命軍に加担させないため。これから荒れる時代で邪魔になるため。そういった理由もある。
「カイドウとまともにやり合ったようだな」
「無傷であれば手を焼く任務だったが、その傷ならこちらに分がある」
ベルナートの体は回復が早いが、今はそれを期待できない。カイドウと一戦を交えた直後だ。仮面持ちのCP03人を同時に相手取るのは厳しい。
「なぜ我々の前に立ちはだかった? 我々は貴様の上陸を認知していなかった。ウタのこともそうだ」
認知されていたから先に姿を見せて立ちはだかる。これならマハたちも納得できただろう。ベルナートならそうする。ウタのことを最優先にするから。
しかし今回はそうではなかった。カイドウとの交戦を始めるまで、ベルナートとウタのことは知られていなかった。海賊たちに完全にすべてを任せていれば、リスクなくこの国を去れただろう。海賊嫌いとされている2人なら、その選択でもよかったはずだ。他人視点ではそうなる。
この質問は答える必要もないその質問だが、ベルナートはそれに答えた。調整も兼ねて。
「悪魔の子のよしみでな。それに麦わらたちには、楽しい冒険を味わさせてもらった借りもある」
ベルナートの船旅は安全が優先される。ウタがいるからだ。モネやシュガーと冒険していた時も比較的安全な船旅だったが、時折ハプニングを楽しんでいた。
ベルナートが純粋にその場のノリだけのような旅を楽しんでいたのは、エースの船に乗っていた時とルフィの船に乗っていた時だけ。つまりその時間は希少な時間でもある。
ウタにとっては、ある意味において初めてだっただろう。赤髪海賊団にいた頃はまだ幼く、留守番ばかりの旅だった。
それらを踏まえると、海賊嫌いのベルナートが手を貸す理由には十分である。
「時代は変わる。世界が動く。現体制のお前らにとってはここで危険を取り除きたいだろうが、現体制も嫌いな俺にとってはそれを見過ごす理由もない」
「随分と身勝手な意見だが、必然だったというわけか」
決して相容れることはない。話し合いで落とし所など見つからない。
ヨセフとマハが同時に嵐脚を放ち、ベルナートは後ろに飛びながらそれらを迎撃。続けざまに接近して指銃を使うゲルニカには、武装色を纏った腕で相殺するように防いだ。その間に刀は走らせ、斬撃をコントロールして床を斜めに切断。部屋ごとライブフロアに落下させ始める。落下中にも周囲を切り裂き、閉鎖的な空間を破壊している。
(
その一連の動きにマハは確信した。ベルナートが今の状況に勝ち目がないと判断していることに。
閉鎖的な空間においての1対3は、一見3人の方が圧倒的に有利だろう。しかし立ち回り次第ではそれを解消できる。狭いからこそ3人が連携を取るには空間が足りず、実力を発揮しきれない。
その状況よりも開放的な空間をベルナートが求めたのは、動ける範囲を広げるため。ベルナートはこの3人に勝つ必要はない。3人を倒せるのならばそれが最適だが、この3人を他の場所に行かせないことが重要だ。ロビンとウタを守るためにも。
それならば手負いであろうとも自分の速度を活かしやすい戦場に変えた方が良い。デメリットよりもメリットを優先した選択。
「誰が逃げ腰だって?」
「……!」
ベルナートも月歩を使える。空中であろうとも互いに動ける。ベルナートが突き出した刀を今度はゲルニカが鉄塊で防御し、その衝撃で壁に激突する。
視界から消えようとも得意な見聞色で見つけられる。逃すことなく足止めをし続けることは、ベルナートにとって容易い。
突き飛ばされたゲルニカをマハもヨセフも見向きもしない。それよりも任務を優先する。徹底したその判断と行動こそ彼らがトップエージェントである証。
だからこそベルナートも間髪入れずに対応できる。余計な空白のない戦闘。集中を持続させやすい。
落下中に何度も行われる攻防。誰しもが空中戦を続行させられるが、ベルナートにはその理由がない。部屋だった残骸がライブフロアに落下しきった後、その上に勢い良く着地。向き合うようにCP0の3人も着地した。
「お、おいあれ! 天喰いにCP0じゃねぇか!」
「あいつらなんでこの国にいるんだよ!」
「……?」
「……チッ。これも狙いか」
ワノ国の侍たちは理解できなかったが、百獣海賊団の船員たちは違う。ベルナートのことはもちろん、CP0という存在まで知っていた。彼らは世界政府の勅命により動く。つまり、世界政府が密かにワノ国と接触していたという根拠になる。
余計な目撃者は消すに限るが、今回はそれも一苦労だろう。万を超す人員での大混戦の最中だ。しかもこのライブフロアは最も人数が多い戦場。今気づいた者たちを消しても、そこでまた目撃者が増える。何度も繰り返そうものなら、百獣海賊団の幹部、あるいは最悪の場合カイドウと敵対しかねない。
非常に動きづらい状況を作られたのである。
しかしベルナートの狙いはこれだけではない。大混戦を極めるこのライブフロアの戦況を知るのも狙いだ。お玉の作戦やチョッパーの活躍により、百獣海賊団から寝返って侍側についた者たちがいる。それらを把握する。
さらに加えて言えば、
「ったく。こっちは10億超え2人を相手にしてたんだぞ? 人使いが荒い奴だよい」
「元白ひげ海賊団、不死鳥のマルコ」
この状況を見たらマルコが手を貸すだろうという打算もあった。
マルコもまたこの国とは縁がある。正確には、20年前の白ひげ海賊団のメンバーには、光月おでんと縁がある。戦争になることを避けるため、おでんの死を知っても白ひげは動かなかった。事前に知っていれば、頂上戦争のように駆けつけただろう。だがワノ国が鎖国国家であったがために、情報は外に出ずに事は終わってしまった。
後にエースは白ひげ海賊団加入後に再度ワノ国に乗り込もうとしていた。白ひげの許可が出ず、ついぞそれは叶わなかったが、その時にマルコとイゾウは助力を買って出ている。
亡きエースに代わって、という部分はベルナートと共通している。
「邪魔だてしなければ今回は見逃すが」
「冗談はよせよい」
「……そうか」
「次から次へと、想定外のことが続くものだ」
「さてと、まずは
発せられるベルナートの覇王色。得意の戦況を把握したからこそ、侍側についている海賊たちも対象外にできる。より精密に放たれたその覇気は、ライブフロアの海賊たちを次々に気絶させていく。それに耐えるものも多くいたが、形成が完全に逆転する。
「……ッ! 心底厄介な男だ」
「お互い様だろ」
5人同時に仕掛けた。
マルコの参戦で余裕が生まれたベルナートは未来視の精度を上げ、マハに斬撃を4発飛ばす。牽制狙いのそれを飛ばした直後に体を捻り、遠心力もつけて回転させた足をゲルニカの頭上に振り落とす。
腕を交差させて防がれるも、その衝撃までは消せない。足場になっていた床が悲鳴を上げて壊れる。
残っているヨセフはマルコが受け持ち、しれっとベルナートに青い炎を送っている。マルコの能力の最大の特徴はその再生能力にある。能力者本人であるマルコならば擬似的な不死身となり、その炎を付与された他の者はある程度再生能力を高められる。治療とまではいかないが、元々再生能力が高いベルナートが継戦するには、十二分の援護となる。
あくまでその場しのぎの力だが、その時間内に目の前の敵を倒せればいいだけのこと。
「つくづく厄介な男だ……!」
「そっちもな!」
壊れた床の下から飛び出したゲルニカとベルナートの刀が衝突する。マハの横槍は姿勢を低くすることで躱し、連携して仕掛けるゲルニカの指銃を刀の持ち手の端、
「ッ、ぐっ……」
そう動かさせるのだから、それに合わせて斬撃も飛ばしている。マハはそれも回避しようとしていたが、避けきれずに腕から血を流していた。
マハがベルナートと交戦するのは2度目だ。それ故にマハは仮面の下で歯を噛む。
状況の違いを考慮しても、ベルナートの厄介さが増しているのだ。この場に護るべきウタがいないにしても、カイドウと戦った後である。マルコの炎があるにしても、動きのキレがより洗練されている。
「躊躇いが消えたか……」
「あの時は頼れる人もいたしな」
四皇シャンクスという絶対的な信頼を置ける相手。その存在の有無は大きいだろう。
今は完全に吹っ切れた上に、四皇という後ろ盾はいない。自分が抑えるしかない。心境的には背水の陣だ。
そしてそれ以外のことをベルナートは考えていない。この場で、CP0たちを撃退させれば自分の役目は終わりだと考えている。カイドウはルフィに完全に任せる。
それ故にこそ、ベルナートはここで残っている力を出し切るつもりだ。マルコの炎で援助されている間に。
「翠竜の牙」
「ッ!」
抉るような斬撃を鉄塊で防ぐもマハの体は空中に浮かされる。間髪入れずに螺旋の斬撃が迫り、それも防いでいる間にベルナートが接近。刀を振り下ろそうとすると、ゲルニカの嵐脚で妨害が入る。
最小限の動きで嵐脚を躱し、その動きを予備動作として組み込み勢いをつけて今度こそ刀を振り下ろした。
マハは刀の腹に衝撃を加えることで軌道を逸らさせ、空を斬った斬撃が床どころかその下の地面まで切り裂く。
その威力の斬撃を放っていてもベルナートの動きに隙が生まれない。正確には、生まれている隙を隙と感じさせないほどに、その次の行動が速いのだ。
それは防がれることも想定しているからこそできること。強烈な一撃で決めるという考えを捨てているからこそだ。
(連撃で押し切る)
急がば回れ。時間制限があろうと、それに焦ることなく手堅く押し切る。そういう方針である。
「お前たちに麦わらたちの邪魔はさせない」
□
大混戦となっているこの討ち入りだが、誰もが常に戦闘しているわけじゃない。最も人が集中していたライブフロアは連戦に次ぐ連戦となっていたが、それもベルナートの覇気により負担が軽減されている。
覇気による気絶は一時的なものに過ぎないが、この討ち入りのタイムリミットも近い。このタイミングでの気絶は、この戦いでの脱落を意味する。
その様子をお玉は上から見ていた。ナミやスピードたちに護衛されている状態で、静かに戦況を見守っていた。お玉の能力はギフターズたちに有効。それを突いた作戦は大成功を収め、それと同時にここでの役割を終えている。
「ご主人様! あまり顔を出されていたら危険です!」
「……え?」
「戦況が気になるお気持ちはわかりますが、もう少しお下がりください」
「わかったでやんす。……?」
「お玉?」
きょろきょろと周りを見渡すお玉に、今度はナミが声をかけた。ビッグマムに捨てられ、ナミの友達となったゼウスもお玉を見つめる。
お玉の様子を察したのは、ギフターズになったことで身体能力が増したスピードだ。馬の能力を手に入れたことで、聴力も増している。
戦闘の音にかき消されていた音が、だんだんと聞こえる大きさになっていくのを感じ取れた。
スピードよりも先にお玉が気づけたのは、スピードほど周囲への警戒に意識割いていなかったから。素人が気をつけていても、長時間緊張状態を保つことは難しい。特にお玉はまだ子供なのだから。
「聞こえますね」
「なにが?」
「ナミちゃんも耳をすましてみるでやんす。戦いの音以外にも聞こえるでやんすよ」
「えぇ?」
この状況で戦い以外に意識を割いてもいいのかと不安を覚えたナミにスピードが促した。その程度の時間なら問題ないと。
背中を押されたナミは、ゼウスに周囲の警戒を任せつつ耳をすませた。
どうしても聞こえてくるのはやはり戦闘の音。それを意識から省いていき、他の音をナミは拾った。
聞いたことがある音だ。よく知っている。
「ウタ……?」
「やっぱりウタちゃんの声でやんすよね!」
「う、うん。でもどうしてウタの歌声が」
ベルナートがこの戦場にウタを同行させるはずがない。眼下でCP0と激戦を繰り広げているあの男は、ウタを危険から遠ざけたがるはずだ。
そうしているとして、ではなぜウタの歌声が聴こえるのか。この鬼ヶ島は空を飛んでいる。ゼウスが一度ドームの外に出ていたためその情報は正しい。ベルナートの力以外で、ウタがこの場に来ることは不可能。
「……いろんな所からウタちゃんの声が聴こえてくるでやんす」
「そう、ね。電々虫ってわけでもなさそうだし」
その歌声は鬼ヶ島のどこでも聴こえている。ワノ国本島へと近づくほどに、その音量は増していた。
それにいち早く気づいたのは、ドームの屋上でタイマンしているカイドウとルフィである。
「リスク管理がなってないな」
「いいや。ウタはウタの戦いをしてるだけだ」
「……」
「しっしっしっ! そうだよな。ウタ!」
ベルナートのような深い関係ではない。だが、幼少期を知っているのはルフィだ。幼馴染の考えも気持ちも、ルフィだって察することができる。
そのウタの行動は、彼女の歌声に乗せられている気持ちは、ルフィの力として染み渡って行く。
武装色の鍛錬はヒョウ五郎と行った。覇王色を纏って戦えることも実戦で理解した。
ここから見せるは未来の海賊王。麦わらのルフィの持つ能力、ゴムゴムの実の到達点。
「ギア5」
別名 ヒトヒトの実モデルニカ。
鬼ヶ島での戦争。その大一番。
世界最強の生物「四皇」百獣のカイドウvs最悪の世代麦わらのルフィ。
その戦いは最終局面へと突入した。
ウタは自分にできることと、自分ができないことに常に悩んでいた。幼少期であろうと現在であろうと、戦闘からは遠ざけられてきた。幼少期には理解できなかったことだが今ならわかる。それだけ大切にされていて、そして今も自分のことを大切に想ってくれている人がいる。
それと感情は別の話。どうにか力になれないかといろいろ悩んだ。サンジに料理を教わったのもその1つ。ホンゴウに正しい応急手当のやり方を教わったのもその1つ。
だがそれでは足りない。満足できない。
だってどちらも戦闘中には行えないことなのだから。
ウタが一番気に病んでいたのは、戦闘時に待つことしかできないことだ。
だから自分の能力に目をつけた。
ウタは何も戦闘したいわけじゃない。誰かに傷ついてほしいわけじゃない。世界のアイドルたるウタがそれを望んでも、世界から戦いは消えない。世界は、国は、人は、そんな単純なものではない。旅の中でよく学んだ事実だ。
だからウタは自分の歌を人に届ける。誰も傷ついてほしくない。死んでほしくないと祈るように歌い、支えるように歌う。戦いを肯定はしないが、その信念に理解を示して。
悪魔の実には覚醒というものがある。いつの日かヤマトにそう教わった。歌声に能力を乗せるのか乗せないのか。そのオンオフを身につけたウタが密かに着目したのは、その覚醒という次のステージだ。
つまりウタウタの実も周囲に影響を与える。歌声を周囲に乗せられる。それはウタの効果範囲、歌声が届く距離なら作用する。
ウタは鬼ヶ島に歌声を届かせ、鬼ヶ島そのものをスピーカーに見立てた。だからこそ島のどこであれ歌が聴こえる。
ウタワールドに引き込まないように注意も払っている。能力で歌が聞こえる範囲を拡張させながら、能力による引き込みは行わない。繊細なコントロールは通常以上に疲労を蓄積させている。体力の消耗は激しく、油のような汗が大量に流れていた。しかしウタはやめない。止まらない。
これはルフィが既に理解を示しているウタの戦いなのだから。
「ぷるぷるぷるぷる。ぷるぷる、がちゃ」
『五老星から勅命だ。ニコ・ロビンの拘束より麦わらの始末を優先しろ』
「……カイドウの戦いに横槍を入れろというのか……!」
『それが何を意味するかは承知の上だ』
「……五老星に連絡がある」
『……聞こう』
「ニコ・ロビンを捕らえることも、麦わらの始末も不可能だと」
『……』
一定距離からマルコに見られている状態で、傷に手を当てながらヨセフははっきりとそう言った。
それはマルコによる妨害のせいではない。
ヨセフの視線の先にいるのは、マルコではなくエージェント2人に完全に押し切っているベルナートだ。
火事場の馬鹿力というやつなのか。それとも秘密の力でもあるのか。なんにせよ
「あの男の実力は我々の想像以上だ。断言しよう。四皇に挑んでいるルーキーより確実に上だ」
『……伝えておこう』
戦いの様子を見届けながら通信を切る。
限界を超えた状態で戦いを続けているベルナートはともかく、休息を挟めているマルコは余裕がある。それは白ひげを支え続けてきた経験もあってこそ。
戦争というものでの立ち回り、ペース配分が上手いのだ。経験不足のベルナートとの違いはそれである。
だからヨセフの通信も、いつでも攻撃できる距離を保ったまま見逃している。
ヨセフは任務を達成できないことを認めていた。大海賊白ひげの下で、伝説の時代を第一線で戦ってきた男の目を盗むことなど不可能である。かと言って勝てる相手でもない。見届けるしかなかった。隣の戦場の決着を。
「無穹・
ゲルニカもマハもその場に前から倒れ込む。ベルナートがいつもの調子なら命に別状のない傷なのだが、ベルナートもカイドウ戦での蓄積と今の戦闘で満身創痍にはなっていた。
すべてを出し切っての一撃。そこに加減の余裕はなく、ベルナートのことを知っているマルコはやれやれと頭を掻いた。敵であろうと2人を死なせるわけにはいかない。その程度の処置くらいは受け持つつもりだ。
「……どこに、そんなちからが……」
「好きな人からの応援は元気出るだろ」
「「……」」
「「……」」
「愛の力ってやつ」
((惚気か))
テンションがバグっているベルナートの発言に、マルコもCP0も揃って同じ感想を抱いた。
可能なら少しでも距離を置きたいなと。