EXIT COLD WATER   作:海砂

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『オレと彼女と温泉と』

 温泉……に入ってる都子ちゃん……湯煙温泉旅情編!! 今すぐそこで都子ちゃんが絶賛入浴中!! これを覗かなきゃ男じゃない!!

 

 千早の説得を試みるも無残に終了し、あまつさえ牙をむいてガルルルルと言われてしまってはどうしようもありませんとも。千早が本気になったらオレなんかひとたまりもないよね? 仕方ないよね? チクショウ!!

 半泣きになりながら、手に持っていた松明もどきを地面に置いて、乾いた落ち葉をもっさもっさとかぶせているオレちゃんなのであった。千早、都子ちゃんの入浴が終わったらここまで連れてきてよね。オレ真っ暗だからさっきの温泉がどこかもわからないからね? えっグルニャン? そうですか、さっきのガルガルは何だったんでしょうか……ケチ。

 

 そして、都子ちゃんが入浴を終え、ヤケになってファイヤーダンスを踊っていたオレの所へとやってきた。白い目で見られた。都子ちゃんの冷たいマナザシも嫌いじゃないけどちょっとツライ。

 

「じゃあオレも入ってくる……千早、案内して。あと都子ちゃん、いつでも覗きに来ていいからね」

 

「行かない」

 

「」

 

 即答とか、都子ちゃんやっぱりオレに冷たい、ひどい、つらい、とてもかなしい。

 

 

 とぼとぼと温泉まで歩く。千早が気を使って慰めてくれた。オレが温泉に入ると同時に千早もゆっくりと中に入ってくる。そっか、千早もいっぱい歩いたもんね、お疲れさん。でも濡れるのは嫌じゃないのかな、気持ちよさそう……つか気持ちいい。歩き通しで疲れた筋肉と神経張り詰めてピリピリしてた心が同時に癒されていくようだ。

 どろどろーっと溶けていくような感覚が心地よくていつまでもgdgdしていると、不意に声をかけられた。

 

「あのう……」

 

 えっ!! オレのほかに人がいる!? それが女の声だったら都子ちゃんキタ――とか思うのだけれど、どうひっくり返っても野太い男の声である。チクショウ、せめて都子ちゃんじゃなくても美人さんなら……と思ったことは、彼女にはナイショだ。

 

「え、ええっと……どちらさまですか?」

 

「わたくし……カミナリと申すものですが……実は、助けていただきたいのです」

 

 なんか一方的に話され始めたー!! むしろこちらの方が助けていただきたいのですがそれは。

 

「実は先日からどうも身体の調子が悪く、ほとほと困っていたのです。他の者は、七転八倒の痛みに耐えておりました」

 

 言いながらもカミナリさんは合間合間にアイタタタと腹を押さえている。よくよく話を聞いてみると、単に悪いモノでも食べただけの様子。っていうか腹下してるのに温泉に入らないでください!!

 

「痛いのって、腹ですよね?」

 

 慌てて温泉からカミナリさんを上がらせて、ついでにオレも服を着ながら話の続きを聞く。消えないように温泉から少し離した地面に置いてる松明もどきの光だけだからボタンかけ間違えそう。

 

「おお、何故わかるのですか! もしやあなたは噂に聞く名医様なのでは!」

 

 いや、腹押さえてるし、腹下してるっぽいし。

 

「あなた様でしたらこの痛みを何とかできるやも知れませぬ! お願いします!」

 

 いやオレ医者じゃないし……そもそもこんな森の中じゃ薬も……。

 そのとき松明の光のスミにチラッと見えたとある雑草。これはゲンノショウコと言ってだな、服用するとたちまち下痢が治るそうじゃ……って、田舎のばあちゃんが言ってた。ホントかどうかは知らん。ただ、ゲンノショウコのタネって触るとホウセンカみたいにパチンパチンはじけて面白いヤツだったんで良く遊んでたから、一目でそれだと分かった。ばあちゃんの畑のあぜ道にいっぱい咲いてたんだよな。でもどうやって服用するんだろ。そのまま食ってイイノカナ。いや違う、たしかばあちゃんはお茶にして飲んでた。と言うことは……

 

「この草を干して煎じてお茶みたいにして飲んだらきっと良くなりますよ、試してみてください」

 

 ブチブチとゲンノショウコをちぎってカミナリさんに渡す。

 

「おお! ありがとうございます!! わたくしのこのような見た目では皆逃げてしまい、誰も助けてくれなかったのです!!」

 

 言われて、ん? となったオレは、松明を拾ってカミナリさんの方に向けてみた。

 ……カミナリさんのもじゃもじゃ頭には二本の角があり、着ている物はトラ柄のパンツ。えっもしかして、カミナリさんって雷様!? だからゴロゴロ言ってたのか、昨日の大雨の時!! 雷様が腹を下す音だったんだね!

 

「親切なお医者様、本当にありがとうございます。お礼と言っては何ですが、この肌をきれいに整えてくれるわたくしの温泉、あなた様に差し上げましょう」

 

 そういうと雷様はボワンと音を立てて、一枚のカードになる。そのカードを拾ってみてみると、温泉の絵とともにこう書かれていた。

 

『5、美肌温泉 A-15  肌に関する悩みを全て解消してくれる温泉。1日30分の入浴で赤ちゃんのようなすべすべの肌になる』

 

 ん、どこかで聞いたような……? 裏返すと、カード裏の絵柄の中、模様のように見せかけてこう描かれていた。

 

 

『GREED ISLAND』

 

 

「……千早、とりあえずこれ持って都子ちゃんとこにもどろっか」

 

 千早がグルニャンと鳴いた。

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