メスガキ合法ロリ甘え上手サキュバス(年上)と感情重めダウナー系怠惰ヴァンパイア(年下)の気ままな旅 作:羽付きのリンクス
快晴。
恵みの象徴たる太陽は燦々と照りつけ、空には雲ひとつなく逆さまの大海原を称えていた。
その眼下、緑に囲まれた街道を歩く二つの人影有り。……もとい、内一つはふわふわと浮いているのだが。
「ねー、ヒルデお姉ちゃん。街ってまだ着かないの?」
「……その質問何回目?もうすぐ着くから黙って歩いて」
「ざんね~ん♡ミィ飛んでるから歩いてませ~ん♪」
「…………」
「ねぇヒルデお姉ちゃ~ん!無言で置いてくのやめてよぉ!」
浮いている方の人物は、黒髪をサイドに結った幼い体型の少女。彼女の服装はフリルが付いた桃色のキャミソールに、もはやビキニではと見紛うほどタイトなホットパンツ。ハイレグ型のショーツの紐も見えてしまっている、あまりに際どすぎるファッションだ。
そしてそれ以上に目を引くのが背中に生えた蝙蝠のような羽と、腰の辺りから伸びる細くしなやかな尻尾。
この少女の名は『ミーティア』。一目で分かる通り人間ではない。彼女はいわゆる淫魔……サキュバスである。
「ヒルデお姉ちゃーん、さっきから同じ景色ばっかりでつまんないよぅ……」
ミーティアは逆さまに浮きながら愚痴を溢す。ずるりとキャミソールがずり落ちるが、ミーティア本人の高度な調整技術によって肝心な部分は見えていない。ちなみに付けてない。
「……うるさい、文句あるなら独りで行けばいいでしょ。」
そして、不機嫌そうにミーティアの前を歩く少女。
日傘を差し、そこから覗く瞳は鮮血のような赤。前髪を深く垂らし、セミロングのまっすぐな銀髪を揺らしながらスタスタと先へ進んでいく。
彼女の装いもまた、特徴的であった。
どう考えても旅向きではないゴシック調の黒いドレス。腕には肩口まで覆う白い手袋、足元にも黒のソックスとブーツを履いており、ミーティアと対称的に肌の露出が全く無い格好はまさに貴族令嬢。月光の如き銀糸を彩る蝙蝠と三日月の髪飾りが、年相応の飾り気を醸し出していた。
彼女の名は『ヒルデガルト』。口から覗く鋭い牙が、彼女がヴァンパイアであることを物語っていた。
ヒルデガルトは背後に浮かぶミーティアを一睨みすると再び前を向いて歩き出した。
「むぅ……じゃあいいもん!勝手に行くからっ!!」
ミーティアは頬を膨らませると、ビューンと勢いよく飛んでいった。
「全く……。ホント自由奔放なんだからあの子は……」
はぁっとため息をつくと、ヒルデガルトもまた歩みを進めた。彼女もその気になれば飛ぶことはできる。できるのだが、あえて地面を歩いている。
理由は単純。大っ嫌いな太陽に、少しでも自分から近付くような真似をしたくないからである。
(全く忌々しい。早く夜にならないかな……あたしら夜行性だし)
だというのになぜ、こうして昼間に歩いているのか。その理由もまた単純、夜になると街の門が閉じてしまうからである。だからこうして陽のある内に到着するべく、わざわざ昼の間に移動しているのだった。
ヒルデガルトはもう一度大きな溜め息をつくと、少しだけ歩調を早め……。
「うぇ~ん!ヒルデお姉ちゃ~ん!!道分かんなーい!!」
「何してんの……」
戻ってきたミーティアは泣きながらヒルデガルトの元まで飛んでくると、そのまま抱きついた。
「だって地図お姉ちゃんが持ってるんだもん……ぐすっ……」
「はぁ……。分かったわよ、まったく」
ヒルデガルトは、面倒くさそうに呟きながらもミーティアの頭を撫でてやる。その姿はさながら本当の姉のよう。
「えへへぇ、ヒルデお姉ちゃん大好き♪」
「はいはい。調子いいんだから」
そんなやり取りを挟みつつ歩みを進める。二人は、自由気ままな旅人だった。
◆
たどり着いたそこは、活気溢れる街だった。
所狭しと並ぶ露店の数々。呼び込みの声が飛び交い、人々が行き交う大通りには馬車が走る。街の入口には衛兵が立ち並び、そこだけは少しばかり物々しい雰囲気を放っていた。
「うわぁ、賑やかだね!」
「……ちょっと騒がしいけどね」
二人が街に入ろうとしたところで、門番の衛士に止められた。
「そこのお二人さん……夜魔族かな、この街は初めてかい?」
「はい。私たちは旅をしているのですが、今日この国に着いたばかりでして」
ヒルデガルトが丁寧に答える。ミーティアはさすがに地面に降りて大人しくしていた。
「なるほど。では身分証をお持ちかな?それがないと中に入ることが出来ませんので」
「ああ、それでしたら……はい、どうぞ」
ヒルデガルトは懐から小さなカードを取り出すと、それを衛兵に手渡した。簡易的な身分証のような物で、名前や出身地、自身の種族名が顔写真付きで載っている。
受け取ったそれを見た衛兵が、少しだけ驚いたような顔をした。
「おや、ヴァンパイアとはね。日傘してるとはいえ、こんな昼間に出て平気なのかい?」
ヴァンパイアは夜魔族でも特に、日光が苦手な種族。「世界一陽の光に弱い生き物」とすら呼ばれているのだ。衛兵の心配ももっともだった。
「ええまあ、無茶は効く身体なので。夜は夜で危ないですし」
努めて平気だ、という声色で答える。幸い日傘とほぼ露出のない服装のお陰で、先程から滝のように流れ出ている汗については気づかれていないだろう。彼女は存外に意地っ張りだった。
「はは、違いない。じゃあそっちのお嬢さんのも確認していいかい?」
「はーい♡……じゃあ見ててね~?」
衛兵が促すとミーティアはニヤリと笑って、自分の胸元に手を差し込む。そしてそこからゆっくりとカードを取り出した。
言葉だけなら妖艶に男を誘惑する、まさにサキュバスの鑑と言える仕草。しかし悲しいかなミーティアの見た目は幼女のそれ。紳士諸君を誑かすには凸も凹も圧倒的に不足していた。
「おいおい、どこに隠してるんだよ……ってサキュバスか。道理で色っぽいわけだ」
「えへへ~お兄さんありがとー♡」
ちなみにその成りでどこに隠しているんだという話だが、ミーティアの着ているキャミソールの内側には彼女お手製の内ポケットが縫い付けられている。当人の涙ぐましい努力の結晶である。
「……」
そのやり取りを、ヒルデガルトは冷ややかな眼で眺めていた。
「どうしたのヒルデお姉ちゃん?怖い顔しちゃって~」
「別に。なんでもない」
(この子、誰彼構わず色目使って……)
ヒルデガルトは内心穏やかではなかった。サキュバスという種族柄、仕方ないのかもしれない。だが、それでも気に入らないものは気に入らないのだ。
そういう意味では、ヒルデガルトは未だ少女であった。
「はいこれ、確認しましたよ。ようこそ『アカトー』へ!」
そんなヒルデガルトの心を知ってかしらずか、衛兵はカードを返しながら快活に笑った。今日の天気と同じ、爽やかな笑顔であった。
ヒルデガルト:実は吸血鬼の中でもかなり実力派の家のご令嬢。なので完全防護すれば日中でも動けるくらいの力はある。それはそれとして太陽は憎い。
ミーティア:日光は苦手な方だが、本人のフィジカルとハイテンションで普段通り振る舞っている。実は地図なんて無くても上空から街は確認してたが、ヒルデガルトと離れたくないので戻ってきた。