元ダークヒーローは世界初の男性警官となる   作:蓮太郎

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第五 、一日限定の体験警察

 

 この日、街は震撼した。

 

 融通が利かない、堅物、石頭な警察署から男性警官が出るという話を聞いてしまったのだ。

 

 本来、男は守るはずの存在である。それが警官という犯罪に直接関わる職に着くなど前代未聞のことであった。

 

 いや、実際に似たような事例はあったのだが男の心が折れたり滅茶苦茶に襲われたりと悪い結果ばかり残して歴史の闇に消えていたりする。

 

 それを差し引いても現代においてこの情報はあり得ないものとなり、SNSで拡散されて警察署の前に人だかりが集まる。

 

「本当かな?」「でもあの警察署だぞ?」「男装だったら暴動ものだよね」「可愛い子期待」

 

 色目ばかりとはいえ初めて見るものに興奮を隠せない女性たち。

 

 そして中から女性警官らが続々と出てきて場を開け始める。

 

 今か今かと待ちわびていた時、ソレ(・・)は現れた。

 

「えっ…………」

 

 ずんぐりとしたシルエット。それは異様に防護服を着せられ、顔をさらされない様にフルフェイスのヘルメットをを付け、まさしく正体不明といった出で立ち。

 

 全体的に防護服を着ているため人型なのは分かるが肌を一切露出させていないため不満の目が向けられる。

 

『おい、本当にこれ必要なのか?』

 

 もごもごとヘルメットの下から聞こえる声。ざわざわと声がしているため聞き取りづらいが、最前列にいた聴覚のいい女性なら気づいたはずだ。

 

 そこに間違いなく男が居るのだと。

 

「安全のためだ、我慢しろ」

 

『逆に襲われたら動けないつってんだろこれ!』

 

「肌をさらす方が危ないと考えろ」

 

『動きにくい方が危ないんだよ』

 

「全く、動けたらやりすぎるかもしれないだろう?」

 

『手加減ならできる。よほどじゃない限り失敗はしない』

 

「上手くいかなかったときのことを考えろ!」

 

 まるで説教をする言い方で、男の隣に立っている所長が言っていた。

 

 それほどの問題児であるのだろうか?という疑問が観衆の頭を一瞬よぎったが、もしかしたら男が街を練り歩くかもしれないという可能性の方が嬉しくて、頭の中をそれだけで埋め尽くされた。

 

『無理だ暑すぎる!これ脱ぐぞ!』

 

 そう言って分厚い防護服を着た男はヘルメットを外す。

 

 そうして現れたのは美男子だった。

 

 そしてその場の空間が揺れるほどの黄色い声が大きく上がる!

 

「はぁ、やっぱりこうなったか」

 

「なんか言ったか!?」

 

 周りの声が大きすぎて近くにいる声も聞こえなくなる程度に騒がしくなってしまった。

 

 こうなることを予想していたため所長は眉間をつまみ目を閉じる。

 

 それに対して面白いことになったと笑う男。これこそが和澄シンである。

 

「これも暑いから脱ぐぞ」

 

「それはお前を守るための服であって…………」

 

 静止の声を聞く前に男はスルスルと防護服を脱いでいく。

 

 その服の下はファンで風を送り込んでいたとはいえ暑いことには変わりなく、汗だくの警官の制服で肌も汗で煌めいていた。

 

 何と無防備な、と言いたいところだが裾から見える肌や首筋の汗など、彼女らにとって嘗め回したいほどの代物である。

 

 そんなサービス満載な姿を見せたら声がさらに大きくなるというもの。

 

「アイドルってこんな気持ちなのか。歌っても声が歓声で消されるってやつ」

 

「それどころじゃない…………ああ、どう収集つけたらいいんだ!」

 

 騒ぎが大きくなった時、シンの目が光る。

 

 突然、観衆の中へ飛び込んでいったのだ!

 

「えっ?」「きゃっ!?」「あ、汗の香りが…………」「香水にしたい」

 

 変な言葉が飛び交う中、スルスルと観衆の間を通り抜けてある一人の女性の腕を捕まえる。

 

「うわあっ!?なにないなに!?」

 

「どうも手癖が悪いようだな。その手に持ってるのは誰の財布だ?」

 

 捕まれた手には財布が握られていた。

 

 数秒ほど硬直し、今なぜ捕まえられたかを把握して口をパクパクさせて何か言いたそうにしている。

 

「証拠もあるんだ、持ち主には悪いが少し預からせてもらおうか」

 

 そのまま引っ張るようにスリの手を引き警察署へと戻ろうとする。

 

「どいたどいた!現行犯なんだから道を開けろってんだ!」

 

 よくとおる大声に思わず道を開けてしまう。その開けた観衆の道をシンはスリを引っ張りながら堂々と歩いていく。

 

「初仕事だ。気合い入れないとな」

 

 ぽん、と所長の前にスリを突き出しそういった。

 

 スリは男に手を掴まれていたことのうれしさと、大衆の前で見せしめのような扱いをされたことの恥辱で顔を耳まで真っ赤にして涙目になっていた。

 

 ここに立っていた警官はこう思った。こいつ、いろんな意味で終わったな、と。

 

「さーて、今日も犯罪の一つや二つを摘発しますか!」

 

 必要以上に頑張らなくていいから!警官らの心の声が一つになった。

 

 この日、シンは張り切って後二人のスリを摘発したのだが、そのたびに歓声や自分から捕まりに行こうとした変人が現れ、変人にはシンが諭していく。

 

「まだ真面目に生きられるんだからそんなことしちゃいけない。悪いことをしなければ俺は動くこともなくて平和なんだから」、と。

 

 これをどう受け取ったかは聞いたもの次第だろう。

 

 ただ忘れてはいけない、ここは元々治安が悪いということを。

 

 たった一日の体験警察官、ひとまずこれで終わりかと思いきやこれまた大変なことになる。

 

 そう、男性警官を連れ出せと立てこもり事件が発生するまであと一日…………

 

 警察署の苦難は始まったばかりである。

 




次回!立てこもり発生!要求は男性警官!?一体犯人の目的は?どうしてシンが呼び出されたのか!

「第六 、君たち性欲に忠実すぎない?」

『誰がオスガキじゃい!』

この世界の性癖概念壊れちゃうよ!?


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