一日体験警察官をやって翌日のことだ。
「…………シン君、頼みがある」
「何なりと、もしかして正式採用か?」
「ある意味ではその通りだ」
個室でゆっくりしていたら渋い顔をしてやってきた。
どうやら俺でないと解決できない問題が発生したようだ。
前の女性警官との手合わせみたいに単純に武力だけでなく、昨日みたいな人の欲を感知して犯罪が行われていないか知ることもできる。*1
これは変身アイテムを無くしてからでも何故か使える力だ。他にもいろいろあるが、今使う機会が増えるのはこれだろう。
何せ、窃盗は『強欲』な奴がするものだ。欲の深いものほど感知しやすい。
「今回起こった事件は立てこもり。犯人は人質を取ってアパートの一室に立てこもった。要求は君を呼び出してほしい、だそうだ」
「俺を?」
「昨日の警察官の格好がいいそうだ。もう既に刺激しきってしまったため出動要請が出た」
「…………それって他の奴らも俺の制服姿を見たいからじゃないのか?」
「否定はしきれない。もしそうだったら折檻だ」
俺の予想が正しければ折檻される人数は多少なりともいることになって署長の胃袋を痛めるだろう。
俺もその要因になっていることは自覚している。
「とりあえず着替えないとな。このまま働かずに食う飯は美味いと言いたいが、じっとしてられなくてな」
「君も相当な問題児だな」
「俺の警察官姿は眼福じゃないか?」
「違うと言えば嘘になるが、私の性癖ではない」
「マジかよ。通りでがっつきが他よりも少ないわけだ」
所長の性癖ってなんだろうか。見た目通りSMのSっ気はあるからそういう趣味なんだろうか?その場合は向けられるのはたいてい女性だし、まさか…………
「私はノーマルだ」
「サラッと心読みました?」
「お前が失礼なことを考えているからだ!」
怒られてしまった。さっさと着替えて現場に行ってお茶を濁しに行くとしよう。
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『いい加減人質を解放しなさーい!貴女は包囲されています』
「いいから男の警察官を呼びなさい!じゃないとこいつを刺すわよ!」
メガホンを持った女性警官が建物の窓から刃物を突き付けられた人質と共に姿を見せる犯人に呼びかける。
それが逆効果になっているのか、犯人は余計にムキになって投降しなくなるという悪循環を見せつけ現場の空気は悪くなる一方だった。
そんな中、一台の車が野次馬たちの後ろで止まる。
ファンファンとサイレンを鳴らしていたため応援が来たのかと野次馬たちは振り向き、驚いた。
「ここが現場か。さて、一仕事しますか」
先日、一日体験警察官を務めたはずのワスミ・シンが立っていた。
「「「「キャーッ!シンきゅんだー!」」」」
本当に現場に現れたワスミ・シンに黄色い声が上がり、犯人もそちらの方を向いて同じく黄色い声を上げた。
「静かに!大声は相手を興奮させる、静かにして刺激をを与えない様に…………」
シーっという指を一本立てて静かにするジェスチャーで全員静かになった。
「選手交代だ。借りるぞ」
そう言ってパッと女性警官からメガホンを取り上げる。そしてつかつかと前へと出てメガホンを構える。
『犯人に告ぐ「キィ―――ンッ!」ーうるさっ!声調節しないと…………お望みどおりに来てやったぞ!人質を解放しなさい!』
「「……………………」」
『聞いているのか?それとも要求を叶えたら話を聞くのは噓だったのかー』
「「……………………」」
『何か言ったらどうだ「キィ―――ンッ!」ーだからうるさっ!?』
「「あ、興奮させない様に声出すの忘れてた」」
『人質もろともしばいてやろうか!?』
それは挑発か、それともただ馬鹿なのか。言ってはいけない言葉を吐いちゃってるが、それは誰も気にしていなかった。
『ええい、とりあえず人質を解放しなさい!代わりに俺が行くから!』
ざわっ、と空気が揺らぐ。
その発言、それはつまり実質『
「そ、それはこっちにきていろいろしてくれるってわけだな!?」
『…………ん?』
「私のところに来て手錠で逮捕していろんなプレイしてくれるんだな!?」
「それだったら私も捕まえてほしいな…………」
『おい人質?』
「捕まえたと思いきや反撃されて甘く堕とされるシチュとかいいんだな!?」
『よぉーし!お前らそこで待ってろ!捕まえに行くからなぁ!」
ガゴ「キィ―――ンッ!」ンッ
メガホンを投げ捨てて行ってしまった。
「だ、誰かあの子をとめろおおおおお!」
「「「「「う、うおおおおおおお!」」」」」」
かくして非公式ながら最初の事件は全員(野次馬の一部を含む)の突撃で幕を閉じる。
なお、当の本人は犯人を右フックで一撃ノックアウトしたため特に無傷である。ついでに人質にも拳骨を落とした。
暴力警官として、普通は非難を浴びるところではあるが思い出してほしい。この世界は元の世界と常識が異なることを。
男女比が変動してるのはともかく、女性が男性を捕まえ、同族の女性と争うために筋力が男性よりも発達していたりするので、男性の暴力は女性にとって本来じゃれあいでしかない程度なのだ。
それらを一撃で沈めかねない和澄シンの登場は明らか異質だったのだ。
本来、女性が男性を手籠めにするが、シン相手だとぶっ倒されて逆に『わからせ(暴力)』られちゃうのである。そういった敬意をこめられての暴力警官であったりする。普通は不名誉だよシン君?
後に、どうして女性を一撃で沈められるのですかと聞かれた時、彼はこう答えた。
「
どう聞こえたか、それは聞いた人次第である。
次回!この事件で手柄立てちゃった!これで正式採用だな、え?なんか犯罪が軒並み増えてきてる?出動だ!
「第七 、治安の悪い街」
『だって出会えるもん!』
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