「わはー、きょーはごちそうだー」
「それは人食いってわけじゃなさそうだなロリっ子」
現在、幼女の背中から生えてる(?)金属製のアームの一本に捕まり建物の側面を這っているところ下手したら自分も危ないため抵抗できない和澄シンだ。
どうしてこうなった、とは言い難い。そもそも俺が突撃したのが悪い。
しかし困った。変身アイテムなしじゃ手が出にくい相手が居るとは思いもしなかった。
だが実際、どうにかできないわけじゃない。ただ人目に付くのと俺とこいつの命を考えたら少々危ないと言わざるを得ない。
そしてこの幼女、もしかしたらの可能性だが話が通じるかもしれない。
最悪の場合は俺の操や命を囮にかけて何か聞き出せるかもしれない。
「おーい!うお振り回すな!なんでこんなことしたんだー!?」
まずは話し合いに応じるか。そこでお互いの運命が分かる。
「むー?どうしてそんなことをー?」
「気になったからだ!あと、そのアームかっこいいな」
「お?わがはい、あーむちゃんのすごいとこにきづいたのかー」
ガシャンガシャンと壁を壊しながら進む金属音が響いているが、思ったよりもはっきり聞き取れる。
「ああそうだな、重いのによく自由自在に動かして、まさに科学の最高峰って感じだ」
「ふふーん!あーむちゃんすごいでしょ!」
「ああ、すごいすごい」
思ったよりも乗せやすいなこの幼女。いや、幼女だからこそ純粋という訳か。
「自己紹介だ、君の名わっ!?アブな、壁にぶつかるところだったぞ!」
「わがはいはあーむちゃんです。てんさいかがくしゃ41さいでかれしぼしゅうちゅうです」
「41…………え?」
待て、あの見た目で41歳?4歳の間違いじゃなくて?
いや、ありえないだろ!この世界は科学力はある程度発達していても若返りみたいなことはできないはずだ。
もしや、怪人?そう考えたが怪人という訳でもない。
ただ、俺の欲望レーダーにはびんびんに引っかかっている。
『色欲』と『暴食』が。
この事象41歳は色々と怪しい。あの幼女の見た目で本当にそうなのかと目の前まで顔を近づけられても純粋な目をして…………ってうおっ!?
「おい、誰に断りを入れてキスしようとしてるんだ!」
「だってわがはい、かれしぼしゅうちゅう。めのまえにかれしこうほ、ヤることはただひとつ」
「お前さぁ!自分の見た目考えろよ!下手したら俺が犯罪者になる!」
「なんで?けっこんは4さいからできるんだよ?」
「それは婚約って話じゃなかったか!?」
何言ってるんだと言いたいが、この世界ではそれが法律である。目の前の幼女が本当に41歳ならほとんど関係ないが。
そもそも俺が考えてる間にアームを動かして顔を近づけて本当にキスしようもんなら跡が怖いんだよ。修羅場は見るだけでいいんだよ!*1
「じゃあこんやくからはじめる。むちゅー」
「やめろつってんだろ!」
無理矢理口づけをしようとするのを両手で顔を押し出して防ぐ。
まてよ、この距離なら殴り倒せるんじゃないか?地面に足がついていないから腰が入らないとはいえこのまま人間をノックアウトさせることくらいは容易だ。
後のことなんか知らん!何歳でも犯罪者が悪い!
「キスするなら俺の拳にキスしな!」
ゴッ!という鈍い音が響く。骨を砕かない様に、されど必ず気絶はさせるほどの勢いで殴ったはずの拳から血が出た。
硬い―――硬すぎる――――!
「いたいのです。『かいぞう』してなかったらねちゃいそうです」
「それで痛覚はあるのか。どこまでハイスペックなんだお前は」
見誤った。そりゃあ普通に立っていられるわけだ。背中の金属アーム3本をその小さな体で支えるなんて人間のやれることじゃない。
そりゃあそうだ、目の前にいるのは『
普通の銃弾で対応できるかすら怪しくなってきた。もう手加減していいってレベルを超えてやがる。
…………今はビルの壁伝い、高さは数十メートルはある。下にはパトカーが小さく見えるが、ここから俺の様子は見づらいだろう。
眼を閉じて大きく息を吸い、そして口をすぼめて大きく吐く、その時の顔がどう見えたのか分からないが、幼女もキス顔で迫ってくる。
何故目を閉じていても分かるのかって?
それはすぐに目を開けたから。そして、幼女もキスしようとした顔で固まってしまった。
何故なら俺の目は『白と黒』が反転した、俗にいう魔族の目と言われるものになっていたからだ。
「うおおおおおおお!」
メリメリと体に巻き付いている金属アームを腕力だけで外しにかかる。
アームも抵抗しているが、徐々に拘束は解けていき、俺が手を離したらいつ落下してもおかしくない状況になった。
「あわ、あわわわわ。どうなって、その
「どうなるかはお前次第だ、俺はまだ誰かと結ばれるなんて考えてないんでね!」
これが変身アイテムを失った俺の切り札の一つ、『能力解放』というシンプルイズベストなものだ*2。
無論、変身アイテムなしでこれを使ったら後日筋肉痛に悩まされることになるのだが、今はそれを気にしている場合じゃない!
「一緒に落ちようぜ!」
ガゴッ!と先ほどよりも鈍く、そして重い音が響き渡る。俺の手も痛むが、それはさして重要じゃない。
「あ…………そのからだ、きにな…る………ますます…………いでんしほし…………い」
人類を超越した一撃で気絶、もしくはシステムダウンしたのか幼女は流石に力を失ったようで、アームのコントロールも失い俺とともに落下していく。
このままだと無事では済まないため、悪いが幼女と金属アームをクッションにさせてもらう。
そして落下し―――落下して――――落ちていき――――
ガッッシャァン!
下に留まっていたパトカーの上へ落ちた。
ったく、全身が痛い。思ったよりもダメージはでかいなこりゃ。
『能力解放』をもう解いたとはいえ、副作用も心配だしなぁ…………
そんなことを考えながら、俺の意識は眠るようになくなっていった。
そして目覚めた時には病院のベッドにいて2日もの間、眠り続けていたことを知ることになる。
次回!なんと幼女との戦いが放送されていた!?凄い力を持つ男として紹介されちゃってる!?それを見た他の人々は…………?
「第十 、その男の影響」
『ますます欲しくなってくるじゃないかぁ…………』
ブックマークとお気に入り、特に感想をいただくとモチベが上がるのでよろしくおねがいします。