Pokémon LEGENDS 三聖獣異聞録 神都秘邃百獣夜行   作:野傘

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完結後のおまけ
本編で書けなかった設定語りのコーナー


ポケモン図鑑補録:シントのすがた

シントの三災獣

 

 ヒスイ地方を襲った未曾有の災厄──『百獣夜行』。そこで初めて姿が確認されたライコウ、スイクン、エンテイのリージョンフォームと目されるポケモンたち。

 古代シントに彼らのものと思しき伝承が残されていたため、リージョンフォームの法則に則り“シントのすがた”と呼称されるに至る。

 共通して原種と比べ物にならない程の凶暴性と攻撃性を有し、近づく者全てを餌か敵と認識して襲い掛かる。

 また有する能力も原種と比較して大規模かつ破壊的。一たび戦闘を起こせば地形すらも一変させることさえある。

 その原種とは似ても似つかぬ気質から、聖獣ならぬ災厄の獣──三災獣とあだ名された。

 

 彼らの正体はホウオウの屍を喰らってことで呪われ、その姿を変質させられた異形のポケモンたち。

 大本となる存在が同一ゆえにその姿は三聖獣と酷似するが、その実原種と縁もゆかりもない……一種のリージョンフェイクとも言える存在である。

 ホウオウの呪いに魂を縛られ、尽きぬ狂気と飢餓を植え付けられた彼らは「滅びの先触れ」、「災厄の先兵」として各地で『百獣夜行』を引き起こしていた。

 


 

『純白の冷皇』

ライコウ(シントのすがた) 風災(ふうさい)ポケモン タイプ:こおり 特性:ちくでん

種族値: H85 A70 B70 C130 D80 S145

図鑑説明:

『雪雲を背負いし白き雷獣。その姿、ジョウトに伝わりし"ライコウ"に酷似すれど、気質大いに異なり』

 

 ヒスイを襲いし三災獣が一。雷皇(ライコウ)ならぬ冷皇(レイコウ)

 白と水色の毛皮を持つライコウに酷似したポケモン。全身から強力な冷気を発し、目の前のあらゆるものを凍てつかせる。また全身から白い雷を迸らせ、稲妻の如き素早さで地を駆けるその姿から、白き雷獣ともあだ名される。

 背中に負う灰色のタテガミは雷雲に似た構造。内部で微細な氷をぶつけ合わせることで電気を作り出し蓄えている。

 この蓄えた電気と自身の冷気を混ぜることで“氷雷(ひらい)”と呼ばれる「まひ」の性質を帯びた冷凍光線を作り出し、武器とする。

 また、電気の使用は攻撃に限定されず。自身の筋肉を刺激することで高速移動を可能としたり、神経に流すことで思考を介さない身体動作を可能とするなど、実に多様な用途がある。

 蓄えた電気の量が最大まで達するとタテガミが白く輝く。この状態のライコウは“電力フルチャージ形態”といい、この時のみ「風災」の名を冠する大業を使用することが出来る。

 

専用技:

【ゆきおろし】 こおり とくしゅ 威力100 命中100 50%の確率で相手を“まひ”状態にする

 ※由来は新潟県などで大雪の前兆とされる「雪颪(ゆきおろし)」の雷から。

 

【ふうさい・ゆきおろし】 こおり とくしゅ 威力130 命中100 敵全体に当たる

 ※基本的にはイベント専用の演出技

 


 

『深緑の泥君』

スイクン(シントのすがた) 水災(すいさい)ポケモン タイプ:じめん 特性:ちょすい

種族値:H100 A60 B130 C90 D145 S55

図鑑説明:

『姿、酷似する故"スイクン"と呼称す。然れど伝承と相反せし深緑の姿、澱みし沼池が如くなり』

 

 ヒスイを襲いし三災獣が一。水君(スイクン)ならぬ泥君(デイクン)

 深緑の毛皮と紫水晶の角を持つスイクンに酷似したポケモン。「北風の化身」と称され、汚れた水を浄化する力を持つ原種とは反対に、毒の血によって大地を泥濘に変える力を持つ「瘴気の化身」。

 藍色のタテガミには微細な穴が開いており、毛細管現象の要領で多量の水を吸い上げ蓄えることが出来る。この蓄えた水分に自身の毒性の体液を混ぜて強力な溶解液を作成。これを周囲に振りまくことで土壌を融解させ一帯を広大な泥の海へと変えてしまう。

 溶解液によって作り出された泥は高い粘性を持ち、手足など嵌ると抜け出すのは困難。こうして動けなくなった獲物を屠るのがスイクンの狩りの方法である。

 なおスイクン自身は足裏から分泌する特殊な油分のおかげで、泥上であっても全く機動力を欠くことなく行動できる。

 また、タテガミの藍色は蓄えた水分が多いほどより濃く染まる。これが最大まで濃くなった状態を“水量フルチャージ形態”といい、この時のみスイクンは「水災」の名を冠する大業を使用することが可能となる。

 

専用技:

【やまつなみ】 じめん とくしゅ 威力100 命中100 50%の確率で相手を“どく”状態にする

※由来は土石流の古名「山津波(やまつなみ)」から。

 

【すいさい・やまつなみ】 じめん とくしゅ 威力130 命中100 敵全体に当たる

 ※基本的にはイベント専用の演出技

 


 

『漆黒の岩帝』

エンテイ(シントのすがた)”黒曜の射干(こくようのしゃかん)” 火災(かさい)ポケモン タイプ:いわ 特性:もらいび

種族値: H100 A120 B145 C75 D55 S85

図鑑説明:

『双角戴きし黒き獣。姿異なれど似通う特徴を有す故、"エンテイ"のリージョンフォームと推察す』

 

 ヒスイを襲いし三災獣が一。炎帝(エンテイ)ならぬ岩帝(ガンテイ)

 艶めくの漆黒の毛皮と黄土色の長いタテガミ、鬼面を思わせる白い顔には鬼のような双角を備えた、エンテイに酷似したポケモン。巌に覆われた肉体と有毒の可燃ガスを操る能力を持つ、原種とは異なる意味での「火山の化身」。

 体を覆う毛皮、爪、牙には黒曜石の成分を含み、こすり合わせるないし打ち付けることで火花を発生させることができる。

 また獲物を喰らった際の副産物として体内で可燃ガスを生成。戦闘時にはこの生成・貯蔵したガスを放出、上記の火花によって着火させることで強力な爆発を引き起こす。この爆発は相手を直接攻撃するだけでなく、爆発の際に生じた爆風・衝撃波を利用した高速移動にも利用される。

 特筆すべき点としては、体内に有する通称「炉心(ろしん)」と呼ばれる熱生産器官の存在が挙げられる。この器官はシントエンテイが持つ“ほのお”エネルギーの源となる器官であり、彼がホウオウの骨を喰らった際、その内部に残されていた生細胞が呪いと共に変質したもの。エンテイが生命の危機に瀕した際「炉心」の稼働は最大となり、莫大な熱エネルギーを身体に供給することで、その姿を変貌(フォルムチェンジ)させるという。

 

専用技:

【おにおしだし】 いわ ぶつり 威力100 命中100 50%の確率で相手を“やけど”状態にする

 ※由来は群馬県にある天明の浅間山噴火の溶岩流が固まった景勝地「鬼押出し」から。

 

【かしょうざんまい】 ほのお とくしゅ 威力150 命中100 自身のHPを半分にする 戦闘中一度だけ使用可能 使用後シントエンテイを“叢原の羅刹”にフォルムチェンジさせる

 ※由来は仏教において不動明王が至るとされる瞑想の境地「火生三昧」から。

 


 

ホウオウより受け継ぎし火はエンテイに無双の力を与えた

──しかしそれは同時に、罪を犯した彼の身を焼く咎責の焔でもあった

 

エンテイ(シントのすがた)”叢原の羅刹(そうげんのらせつ)” タイプ:いわ・ほのお 特性:ごうかのかご ※「こうげき」が1.5倍になる代わりに毎ターン最大HPの1/8ダメージを受ける

種族値: H100 A145 B70 C55 D70 S140

図鑑説明:

『命脅かす大敵と見えし時、姿変わると伝え有り。身に蒼炎を纏いて一帯を地獄と為す』

 

 命の危機に瀕したシントエンテイが「炉心」の力を最大解放した姿。タテガミ、四肢、鬼面に蒼い炎を纏い、高熱と爆風によって周囲を燎原に変貌させる様から”叢原の羅刹(そうげんのらせつ)”と名付けられた。

 フォルムチェンジと同時に身体に蓄えた可燃ガスを一斉放出・着火。爆風とともに蒼い炎のフィールド──火獄を作り出す。

 火獄内は高温かつ有毒ガスの充満する極めて危険な環境。耐性を持たないポケモン(どくタイプ・ほのおタイプ以外のポケモン)の体力を瞬く間に削り、ニンゲンならばものの数十秒で昏倒、数分で死に至らしめるほどである。

 また火獄は外部と高温の炎の壁によって遮断されており、上記特性も併せて捕らわれれば脱出することは困難を極める。

 そうして捕らえた外敵を火獄ごと火災の大業で呑み込み鏖殺する──これこそがエンテイの必殺の陣である。

 なお、蒼炎の正体は身体(特にタテガミ)に蓄積された硫黄成分と噴き出す高温の可燃ガスの炎色反応によるものである。

 

 ”叢原の羅刹(そうげんのらせつ)”に変化したエンテイは通常時と比べ身体能力が大幅に上昇する一方、排熱の影響で防御能力が低下する。

 またこの形態は「炉心」から供給される過剰な熱エネルギーによってエンテイ自身もダメージを負ってしまう諸刃の剣。そのため形態変化後のエンテイは大業で以て一撃で敵にトドメを指すことを基本とするようになる。

 

専用技:

【かさい・おにおしだし】 いわ ぶつり 威力130 命中100 敵全体に当たる 50%の確率で相手を“やけど”状態にし、30%の確率で相手を怯ませる

 ※FC後に「おにおしだし」が変化。

 ※由来は「おにおしだし」+火災と火砕流から。

 

 

 


 

 

 

 

日輪、蝕に沈み

災厄、天を覆う

 

黒靄、地を這いて

劫火、國を呑まん

 

主亡き神座は鳳の卓

 

いざ顕れん壊劫の翼

 

──「カミナギ神話:失楽の伝説」より

 

 

『舞い降りる伝説』

ホウオウ ”壊劫(えこう)(つばさ)” タイプ:ゴースト・ひこう 特性:プレッシャー/さいせいりょく

種族値:H106 A90 B110 C154 D130 S90

備考:通常のホウオウに「いろあせたはね」を使うとフォルムチェンジ

図鑑説明:『シントの地より舞い降りし蝕日。伝説に語られしホウオウの異なる姿。カミナギ神話に記されしさまよえる災厄の鳳と目す』

 

 ヒスイを襲いし災厄──『百獣夜行』の元凶。肉体を喪失し、ゴーストと化したホウオウの成れの果て。遍く命を呪い喰らう、最低最悪の祟り神である。

 死蝋の如き純白の身体、幽冥の黒に染まった鶏冠と尾羽、血のような真紅の瞳を持つ。

 かつてシントと呼ばれた地にて、大地に恵みを齎す生命の神として崇められていた存在。生と死の輪廻の過程で星の内奥から膨大エネルギーを齎すことで、シントの豊かな自然を支えていた。

 だが、ホウオウはある時三匹のポケモン──後の三災獣たち──が犯した罪により、肉体を喪失してしまう。還るべき場所を失い魂だけの存在となったホウオウは苦痛のあまり発狂。失った肉体を再生させる(取り戻す)べく周囲のあらゆる生命を無差別に吸収するようになってしまう。

 全てを滅ぼす災厄と化したホウオウ。加えシントの地にあったアルセウスの神域を滅亡させたことでギラティナとの同一視──習合が発生し、この世の裏側(やぶれたせかい)へのアクセス権を獲得してしまう*1

 かくてシンオウの冥神(ギラティナ)の権能を得たホウオウはやぶれたせかいに潜みながら平行世界を観測、時空の裂け目を作り出し数多の地方を喰らい続けた。

 無数の生命を喰らい、肥大化し続けたホウオウはポケモンという枠すらも逸脱。祟神『壊劫の翼』として──文字通りの神格として世界に顕現するようになる。

 その本質は黒い霊気(オーラ)そのもの。渦巻く霊気(オーラ)は全て『壊劫の翼』の一部であり、『壊劫の翼』とは即ち黒い霊気(オーラ)の総体を指す。

 本編で見せた姿は儀式によって押し込められた仮初のもの。そのため身体へのダメージなど意味をなさず、例え総身を砕かれようと黒い霊気(オーラ)が尽きない限り永遠に再生し続ける。そして『壊劫の翼』が保有する生命エネルギーの総量はほぼ無限大に等しい。一生命体の持てる時間でこれを削りきることは不可能であろう。

 故に、これを鎮める方法はただ一つ。かつての在り方を還し、正しき姿に戻すことのみ。

 

 だが、上記の性質すらも『壊劫の翼』にとっては副次的なもの。その真の権能は別にある。  

 ──『壊劫の翼』が持つ真なる権能、それは神話の書き換え。

 『壊劫の翼』は自身を唯一の神とする世界観によって降臨した地の世界観を塗り替えることが出来る。そして神話が書き換えられ地方元来の神話を失うと、その地方における伝説のポケモンは大幅に弱体化*2、神話との結びつきが強ければ姿を顕すことが出来なくなってしまう。

 さらに、『壊劫の翼』が敷く世界観はかの神による滅亡が確定しているため、いかな抵抗をしようとも最終的には滅び去る運命を決定づけられる。

 分かりやすく例えるならば……出現した作品タイトルを強制的に「LEGENDSホウオウ」とするようなもの。そして「LEGENDSホウオウ」のシナリオはバッドエンドが確定しており、どんなルートをプレイしたとしても最終的に滅亡というエンディングにたどり着いてしまうという理屈である。

 故に『壊劫の翼』を正面からの戦闘で打ち倒すことは不可能。どれほど強い力を持つ存在も『壊劫の翼』の世界観に囚われる限り、勝負の土俵に立つことさえできない。そも世界観における強弱の尺度を世界観ごと自身の都合のいいように書き換えることが『壊劫の翼』の力である以上、強さという概念で図ること自体が無意味である。

 だからこそ対『壊劫の翼』に必要なのは「力」ではなく「(ことわり)」。自らの土俵おいて無敵である『壊劫の翼』に勝利するためには、『壊劫の翼』をその世界観から引きずり出すことが絶対条件である。

 そして形而上の存在と化した『壊劫の翼』は物理的な縛りが緩い一方、人々の認識や祈りといった概念的なものの影響を強く受ける性質がある。本編ではその性質を利用し、『鎮魂の舞い』によって神として祀ることで『壊劫の翼』をヒスイの神と定義、ヒスイの世界観に引きずり出すことで勝負の土俵を整えたという訳である。

 その後の勝負の行方は本編の通り。かくして三災獣と英雄の活躍によって『壊劫の翼』は鎮まり、かつての生命の神としての在り方を取り戻した。

 

 ──なお、これは余談であるが。

 

 自らの行いの詫びとして破壊されたヒスイの自然を再生したホウオウ。この時ヒスイに注がれたエネルギーにはホウオウの属性が含まれており、そのためにヒスイの地はヒスイ固有の性質の他にシント(ジョウト)の性質も帯びるようになった。その結果、『百獣夜行』事件以降ヒスイ地方の各地に従来では見られなかったポケモンたちが出現するようになり──やがて遥か未来における”シンオウ地方”の生態系を形作ることとなるのである。

 

 

専用技:【オオマガツヒ】 ゴースト とくしゅ 威力100 命中100 与えたダメージの50%回復

 

解説:

 『壊劫の翼』が世界を喰らう際に振るう終末の劫火。本来であれば”時空の裂け目”から標的となる地方の全域に照射、その地に存在する生体エネルギーを根こそぎ黒い霊気(オーラ)に変換し、『壊劫の翼』へと還元する。

 なおこの際に地方を支える地脈も涸らしてしまうため、その地は『壊劫の翼』の過ぎ去った後も数千年の間、草木も生えない不毛の荒野と化す。

*1
これはホウオウが元より生命を蘇らせる神に等しい力を持っていたこと。不死という時空間の縛りに囚われ難い存在であったこと。そして霊体という形而上的な観念に影響されやすい存在となったことがなどが要因である。

*2
例えるならばランクマッチで発揮できる程度の力

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