ハアァァァー・・・・・・と、紫煙を深々と上に向けて吐き出す。
「・・・・・・お前との冒険か」
「おう! 海賊王の冒険だぞ、絶対ワクワクな冒険記が書けるって‼」
「どーいう自信だよ」
根拠なんてまるで無い言葉に俺は鼻で笑い、プッと煙草を吐き棄てる。
「だが、ま・・・・・・良いぜ」
火が灯ったままの煙草を足で踏みつぶし、砂浜に埋もれさせる。
仕方がない風に嘆息しつつ暇つぶしに興じるとしよう。
「そこまで言うなら付き合ってやるよ、お前の冒険に」
「ホントか!?」
「ああ」
ただしと、ルフィの手を取りつつ宣言する。
「俺が冒険記を書くんだ。ちんけな海賊団の冒険なんざ御免だぜ? 書くんなら最強の海賊団の冒険記だ‼ もしテメェが船長として不甲斐無いことしやがったら、即刻俺と代わってもらうぜ!?」
「ししししっ‼ おう! いいぞ‼ んなことしねーけど‼‼」
この運命の出会いの日が、俺達の海賊人生の幕開けだった。
◆◆◆
島の木材を使っての船の修理、そして食料と水の補充をルフィに手伝わせる。
大量に船に運び込もうとした時は慌てて止めたが、思っていたより早くこの島から脱出できそうだ。
「そんじゃあ、行くか」
「おーっし!」
船に積み切れなかった食料で宴会をやり、夜が明けた翌日に、俺達は島を発つ。
船は穏やかな波の上を滑るように走った。
島は遠ざかっていき、小さくなっていく。
「結局、お宝は見つかんなかったなぁー」
「ま、噂は噂だったんだろ」
最初からあの島には宝など無かったのだ。
だが、代わりのお宝は沢山あった。
あの島で朽ち果てた海賊たちが所持していたお宝である。
それを全て積んだ。
そういう意味では、あそこには確かに宝があったと言えよう。
言って俺は胸ポケットを漁り、煙草を一本取り出そうと、
「あ、切れてら」
したが、既に空だった。
コリャ、さっさと町かどっかで買い足しとかねぇとなーと考えている内に、どうやら沖に入ったようで波が高くなってきた。
船を追い返そうと海流がうねりを上げて襲い掛かり、船が揺れる。
普通の船なら波の影響で押し返されるのだろうが、俺は構わず進み続ける。
そして再び波が襲って来る。
さっきよりも強い波だ。
いよいよこの島の海域から脱出する手前まで来たのだ。
「このまま突っ切るぞー!」
「いや、このまま行くと転覆するな」
「んじゃ、どーすんだ?」
俺は背負っている大剣を抜剣し、宙へ放り投げる。
すると漆黒の大剣は見る見るうちに色と形を変えていき、その姿を顕わにする。
その姿は、御伽噺等で視る架空の存在。
赤色の体色をした、一匹の竜が宙を舞う。
「ええぇぇー!? 剣がドラゴンになったぞ!?」
「ドラゴンの実を食った剣だ」
「剣が悪魔の実を食ったのか!?」
「不思議だろ」
「不思議だっ‼」
翼を生やした足と腕がある竜。
そんなドラゴンに姿を変えた剣は、両足で船を掴んで空を飛び、船首が浮き上がったその刹那、船は海の蟻地獄を跳び越え宙を舞っていた。
一緒に舞い上がった波飛沫が、陽の光を浴びて輝いた。
コレが、俺達の冒険の始まり。
ルフィは胸を張り、堂々と前を見据えながら、無邪気に笑い、拳を天に突き上げる。
そして、遥かな高みへと決意の言葉を口にした。
「海賊王に、おれはなる!」
空は快晴。
目指すは『
いずれ全世界を騒がす『麦わら海賊団』。
まだ2人だけの、とても海賊団とは呼べない『麦わら海賊団』の伝説は、此処から始まるのだ。