わしが浦風(自称)じゃ!……いや(自称)ってなんじゃ。 作:かきなぐり
見えた! 救援じゃ! 救援が来たんじゃ! やっぱダメ元でも言うてみるもんじゃね!
まさに九死に一生じゃ!
『待たせたな! この磯風が来たからにはもう安心だ。全艦、突撃用意!』
体感で一ヶ月ぐらい待った気がするのう。
そんなわけないんじゃけど。
磯風の率いる遠征艦隊は敵艦隊の横合いから姿を現し、砲雷撃戦を開始したようじゃ。ここから見る限り、編成は駆逐艦四隻に軽巡一隻のスタンダードな遠征艦隊のようじゃな。
そういえばこっちの場所とかなんも言うとらんかったけど、軽巡がおるということは偵察機で居場所を補足してくれたんじゃろう。
しかし、軽巡がおるのになんで駆逐艦が旗艦なんじゃろうか。磯風の自己主張の結果かね?
まぁなんでもええか。これで多分助かるじゃろうし、せっかくなら虎の子の酸素魚雷も使ってみるかね!
「よっしゃ、大盤振る舞いじゃ! 全弾もってけぇ!」
艦これACの情景を思い出し、アタリを付けて太ももの発射管から魚雷を撃ち出す。ま、当たったら儲けもんといったとこじゃがのう!
その間、当の深海棲艦はわしに注目しとったもんじゃけぇ、磯風らの砲雷撃は奇襲になって駆逐艦三隻を轟沈、軽巡一隻を大破に出来たようじゃ。
そこに先ほどわしが放った魚雷が運よく命中し、重巡を小破に、無傷だった軽巡を中波に追い込むことができた。
はん! ざまぁみさらせ!
「それで言い訳つくじゃろ! 帰っちまえ!」
流石に被害甚大と見たのか、形勢不利と悟ったのかは定かじゃないが深海棲艦はこちらに砲撃しつつ撤退していった。
……やったッ! 勝ったッ! 仕留めてはないけども!
「──っかー! マジで死ぬかと思うた! というかあのまんまじゃ確実に死んどったな!」
額の汗を手の甲で拭って思いっきり深呼吸する。
わしは今、生きとる!
まさに救援さまさまじゃ! 深海棲艦に襲われたときは幸先悪いと思うとったが、こうしてみると案外悪くなかったかもしれんね。
深呼吸しつつ生を実感していると、救援に来てくれた艦隊がこっちに近づいてきた。
わしの命を繋いでくれた艦隊じゃ、まず礼を言わんといけんね!
「磯風! それに他の皆もありがとさん! 皆のおかげで死なずにすんだわ!」
こっちからも近づいて勢いのまま礼を言うた。
こういうのは勢いが大事じゃ。あれやこれや考えとったら結局なんにも言えんけぇな!
「なに、礼には及ばない。同胞が助けを求めていれば、駆け付けるのは当然のことだ」
おお、なんとも頼もしい発言。流石駆逐王と呼ばれるだけあるのう。
「ところで、浦風は元々一人クマ? 他に助けが必要な艦はいないクマ?」
ふむ、雰囲気的に球磨さんがこの艦隊の副リーダーっぽい感じじゃね。
軽巡じゃしそれも当然か。
「いや、わしは元々一人じゃけぇ、心配せんでも他にはおらんよ」
なにしろ無人島で目ぇ覚ましてからこっちわしは一人っきりじゃったんでな! その辺の心配は一切いらん!
「っつーことは、浦風は『ドロップ艦』かい? よく沈まなかったねぇ」
谷風の口からドロップ艦の言葉が出てきた。その概念があるいうことは、やっぱわしはドロップ艦なんじゃろうな。
まぁ、どっかの鎮守府所属じゃったのが何らかの理由で無人島に流れ着いて、そこにわしの魂が憑依したーみたいなことも考えられるけど。
だとしても現時点じゃなんもわからんけぇどうしようもないが。
「実際すごいと思います。自然発生艦、いわゆる『ドロップ艦』は深海棲艦と遭遇すると生存率が著しく下がりますから。戦艦や空母、重巡などであれば練度がなくとも火力や航空戦力で切り抜けられますが、軽巡や駆逐艦などの場合は対抗できる火力に乏しいですからなおさらです」
なるほど。浜風が言うにはドロップ艦の正式名称は自然発生艦と言うらしい。
そのまんまじゃな。変に凝った名称よりかは全然ええけど。
「ま、わしの場合は運が良かっただけじゃ。あんたらの救援がなけりゃわしも海の藻屑じゃったろうね」
実際、救援なしであのままじゃったらにっちもさっちもいかんし、よほどのことがなけりゃ轟沈コースまっしぐらじゃ。
「それなら自分の運の良さを誇るといいよ! 運も実力の内にゃしぃ」
「そうねぇ、この海で生き残るのに運はとっても大切よ? ええ、本当に」
……なんか睦月と比べて如月の言葉は重く感じるのう。やっぱアレかね、敵機接近の音が風で聞こえなかったりとかしたんじゃろうか。
ま、確かに運も実力の内じゃな、特に艦これにおいては。具体的に言うと今のわしの最高値は49とかじゃった気がする。
あんまり頼りすぎるんも良うないと思うがね。
「周辺に敵影はないクマ。帰るなら今の内クマ」
「よし、陣形を組み直すぞ。全艦単縦陣をとれ。浦風は最後尾へ、我が鎮守府まで先導する」
偵察機を回収した球磨さんの報告を合図に旗艦である磯風が命令を出すと、わしと会話するために崩れた陣形が瞬く間に組み直され、磯風を先頭にして走り始めた。
おっと、置いてかれんようちゃんとついていかねば。
磯風らの提督さんは一体どういう人なんかねぇ? 少なくもブラックな提督じゃあなさそうじゃけど。
あと設備も気になるのう、やっぱ入渠施設はお風呂なんじゃろうか。
まぁ、なんにせよこれからが楽しみじゃ!