わしが浦風(自称)じゃ!……いや(自称)ってなんじゃ。   作:かきなぐり

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特殊能力はロマンじゃな!

「見えたぞ。あれが我らの呉鎮守府だ」

 

「うえぇぁ、ようやっと着いたぁ……」

 

 長い航海の果て、ついに呉鎮守府にたどり着いたようじゃな……。いかん、今までろくに休めず緊張しっぱなしじゃったせいか、ひとたび安心したら疲労が一気に……。

 

「こりゃいけんのう……ここ最近の疲労が一気に押し寄せてきよる……」

 

「浦風、鎮守府はすぐそこだからもうちょっと頑張って!」

 

 如月が励ましてくれとるが、残念なことに疲労度赤状態のわしにはまったく効果なしじゃ……

 

「もう1年ぐらい走っとる気がするんじゃけど」

 

「んなわけねぇクマ」

 

 疲労度マシマシで体感約1年以上の航行を終え、埠頭から陸地に上がると、アニメで見たようなこれぞ鎮守府じゃと言わんばかりの施設が目の前に広がっとった。

 

「ここが呉鎮守府……懐かしいようなそうでもないような、妙な感覚じゃ」

 

 わしは元々広島出身じゃし、少なからず帰ってきたーゆう感覚が沸いてくる。

 はぁ、一時はどうなる事か思うたが、無事鎮守府まで来れて万々歳じゃ。

 

「よし、では私は司令官へ報告してくる。球磨は浦風を連れて工廠へ行ってくれ」

 

「了解クマ。ほら浦風、こっちクマ」

 

「了解じゃ」

 

 球磨に連れられてしばらく歩くと、赤レンガで出来た建物が目に入った。おそらくあれが工廠じゃろうな。鉄扉を開けるとそこには数人の艦娘がおって、なにやら改修作業等をしている様子じゃった。

 

「明石ー、邪魔するクマー」

 

「邪魔するなら帰って下さーい」

 

 おぉ、明石! 工廠と言やぁやっぱり明石じゃね! 明石は大きい机に設計図を広げて目線を設計図に向けたまま返事したようじゃった。

 

「ドロップ艦を拾ってきたクマ。艤装の整備と健康チェック頼むクマ」

 

「はいはーい。ちょっと待ってくださいねーっと。夕張ぃ? 新人さんの艤装預かってー!」

 

「はーい!」

 

 明石が軽く机をまとめとる間に夕張が小走りでこっちに近づいてきよった。うんうん、やっぱ工廠と言やぁこのコンビじゃね。

 

「わしは浦風、駆逐艦じゃ。よろしくね!」

 

「うん、よろしく。私は兵装実験軽巡の夕張。じゃ、早速だけどあなたの艤装預からせてもらうね!」

 

 夕張は近場にあった台を引っ張って艤装を載せると、再び奥へと消えていった。わしとしてはもうちょい話してみたかった気もするが、まぁ今後話せる機会はまだあるよの。

 

 と、そう考えてるうちに夕張と入れ替わるようにして明石がわしの前に現れた。現役時代には泊地修理にずいぶん世話になったもんじゃ。

 

「私は工作艦明石。ドロップ艦だって言ってたけど、損傷はほぼないみたいね」

 

 明石がわしを軽く観察する。マジで損傷がほぼなかったのは奇跡じゃな。

 我ながらよく回避できたもんじゃ。完全回避ボーナスで15ポイントゲットじゃ。

 

「浦風は球磨の偵察機が見つけた時から敵の攻撃をずっとギリギリで回避してたクマ。将来有望クマ」

 

「ありゃあ運が良かっただけじゃ。ま、運も実力のうちじゃけど」

 

「へぇ? 確かに将来有望かもね、この口振りは」

 

 将来有望ねぇ……本当にそうじゃったらええんじゃがな。転生特典で改修値が普通より伸びとったりせんじゃろうか。え、ない? いやそんなんまだわからんじゃろうが。わしは希望を捨てんぞ。

 

「うん、目立った損傷はないみたいだけど、やっぱりドロップ艦だし一応メディカルチェックしようか。ちょっとこっち来て」

 

 明石についていくと、いかにも測定台といった感じの機材が目についた。雰囲気はメカメカしい体重計といった趣じゃな。

 

「じゃ、浦風にはこれに乗ってもらって、球磨はスキャンお願い」

 

 明石はタブレット的な端末を操作し、その間球磨はなにやら棒状の装置でわしの頭からつま先までをびーっとスキャンしていった。

 ようわからんが、だいぶSF味が強い測定器じゃな。これで体調とかレベルとかわかるんじゃろうか。

 

「ふむふむ、身体に異常なし、健康そのもの。ステータスは……ん?」

 

「どうしたクマ、なんかおかしいとこあったクマ?」

 

 ちょいちょい、艦娘にとっての実質医者みたいな存在の明石が『ん?』って怖すぎじゃろおい。一体わしの体に何があったというんじゃ。やっぱ転生特典か。

 

「ねぇ、ちょっと聞きたいんだけど。浦風は深海棲艦と交戦する前になんかやってた?」

 

 なんかとはまたアバウトじゃのう。なんか、なんかねぇ……。まぁ一応やっとらんこともないが。

 

「無人島から出る前にしばらく航行の練習とか、なんとなく狙って砲撃してみるとかはやっとったけど」

 

「無人島? 浦風は無人島に居たクマ?」

 

 おっと、これはぁ? 球磨と明石の反応を見るに、どうやらわしの経験は普通ではないようじゃね。いやまぁ無人島スタートは艦これ二次創作の定番じゃが、普通のドロップ艦は海から出てきてそのまんま保護のイメージあるしのう。そう考えたら確かにおかしいわ。

 

「わしは無人島で目が覚めたんよ。じゃけぇしばらくはその無人島にこもっとったんじゃが、いつまでもその状態じゃあどうにもならん思うてね。一念発起して海に出たんじゃ」

 

 二人とも納得したようなしてないような微妙な表情なんじゃが。わし、またなんかやっちゃいました? 

 

「いや、浦風のステータスを見たらすでに練度が9になってて、ドロップ艦なのになんでかなーと」

 

「浦風の話を聞くに無人島時代が関係してるって感じクマ?」

 

「まぁ、そういうことになるかなぁ……」

 

 その後、明石は3分ほど端末を操作して「うん、もう降りていいよ」と端末を置いた。なーんかいまいち納得できてなさそうな感じじゃったが本当に大丈夫じゃろうか。

 やっぱあれじゃな、転生艦娘ゆえの中の人補正でなにやら特殊な能力が! ……ない? そんなー。

 

「健康面は問題なし。練度もあるに越したことはないしいいでしょう。じゃ、メディカルチェック終わり!」

 

「よし、じゃあ次は提督に挨拶に行くクマ」

 

「えー、わしはそろそろ一休みしたい感じなんじゃが」

 

「挨拶終わったら入渠するクマ。それまでの辛抱クマ」

 

 入渠いうことは要するに風呂か。確かに、この世界に来てからまともに風呂浸かってないしのう。

 正直このまま布団ダイブしたい感じなんじゃが、挨拶に行かんいう手もなし。もうひと頑張りして風呂に行くとしようかのう。




 明石は二人を見送ると、さきほど入手した浦風のデータを改めてチェックしていた。

(深海棲艦との交戦、そしてそれ以前の自主的な訓練を加味しても練度が9なのは余りにも早い……それと現状のステータス、練度9にしては高すぎる。他の鎮守府に在籍する浦風のデータと比べても明らかに一回り以上も上回っている。彼女はいったい……)
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