勇者「この中に一人裏切り者がいる」???「ンンンンンンンそれは一体誰の事でございますかな?」   作:偽馬鹿

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続編。
さくっと終わる予定です。


勇者と聖女と時々リンボ

「……」

「ンンンンンン」

「うるさい」

「おっと、失礼をば」

 

こほん、と男が咳をする。

その様子に、勇者はため息をつくのだった。

 

 

 

時刻は夕刻、場所は森。

このような場所にいる理由は、人探しであった。

 

「最近この近くに綺麗な女性の姿があるのだ」

「その傍らには、大きな猫と機械の魔物がいるのだ」

「きっとその女性も魔物に違いない」

「退治しておくれ」

 

聞いた話を要約した結果がこれ。

依頼という名の小遣い稼ぎの一環として、この話を受けたのだが……。

 

「ンンンンンンン迷いましたねぇ」

「うるさい」

「遭難ですよ」

「うるさい!」

 

バシリと一発。

それをひらりとかわしてンンンンンと笑う男。

控えめに言って勇者は苛立っていた。

 

そもそもこの依頼、最初に興味を持ったのは男が先であった。

 

「これは稀有な才能を持った存在なのやもしれませぬ。ささ、勇者殿。勧誘の時間ですぞ」

 

そう、最初からこいつは依頼を完遂する気などなかったりする。

ただ戦力として欲しているという始末。

これはきっと駄目な奴だ。

勇者は頭を抱えていた。

 

 

 

とはいえ、とはいえだ。

これ以上先に進むには戦力の向上は急務であった。

何か本気を出していない気のする男を叱咤すれば何とかなりそうな気もするが、それはかなり疲れる作業である。

なのでまずは仲間を増やすことが必要だと、勇者は考えたのである。

 

 

 

「まあその結果が迷子なのですが。ええ、失望などしませぬよ勇者殿。拙僧があそこで右と言ったのに左に向かったのが原因だとは欠片も思っておりませぬ」

「……」

 

こいつ、根に持ってやがる。

勇者はため息をつきながら先へ進む。

そろそろ日も暮れる。

最悪町へと帰還する必要が出てきた。

 

 

 

「わっぷ」

 

森をかき分け進んでいると、勇者は突然柔らかい何かに視界を覆われた。

初めての感触に戸惑っていると、上の方から声がする。

 

「あの……どちらさまですか?」

 

 

 

 

「ンンンンンン拙僧たちは勇者一行として旅しております。できれば貴殿にも旅に同行していただければと思っておりまして……ですよね、勇者殿?」

「まあ、はい」

 

ターゲット確認即勧誘。

勇者は流されている自覚がありつつも、どうにもやる気が出なかった。

でかい……いや、自分が小さいせいもあるだろうが、大きかった。

いや何がとは言えないが。

身長的には女性の平均だろうか。

 

勇者は自分のちんまくて貧相な身体を見て、ため息をついた。

そして自身の従者を名乗る男の身体つきを見て、若干の理不尽を感じた。

大きいのだ。

 

それはともかく。

勇者は何となく目の前の女性を観察していた。

傍らには巨大な猫。

そして機械の魔物。

どちらも男を警戒している様子だ。

わかる。

 

「ええと……」

「勿論! 無理強いするつもりは毛頭ありませぬ。拙僧たちは勇者一行。無辜の民を守る存在なれば」

 

怪しい。

自分が言うのもなんだが怪しい。

こんな怪しい男が一緒の勇者についてくる人間がいるのだろうか。

いやいない。

 

「あの、お断……」

「実はこちらには美容に効くというアモールの水がありまして」

「ちょっと考えさせてください」

 

断られる感じだったのに、急に好感度が上がった。

勇者は全然わからなかった。

今の会話の中にそれほど重要な何かがあったというのだろうか。

 

「しかし困りましたな。拙僧の手持ちのアモールの水はあと1瓶。拙僧、勇者殿の朝食にいつも使っておりますので、すぐになくなってしまうでしょう」

「わかりました一緒に行きましょう!」

「御意に」

 

何か勧誘に成功した。

アモールの水、すごい。

勇者はそう思った。

 

ちなみにだが、勇者は家事全般が全滅である。

一応狩りなどはこなせるが、調理掃除服飾、全て男に任せていたりする。

その状況で一人で旅をしようとしていたとは……。

男も呆れ気味であったとかなんとか。

 

 

 

「さて、それではここからお暇しましょう。裏切ったと知られたら、拙僧達は即座に指名手配されてしまいますからな」

 

 

 

 

そして、捕まった。

 

「ンンンンンン申し訳ありませぬ。拙僧、御身を裏切りました」

 

しかも男が裏切ってた。

知ってた。

いやいや一応助けてもらっている立場だ。

もしかしたら、くらいに思っていたとしておこう。

 

がちゃこんと地下牢に閉じ込められた女性と勇者。

両者ともに無言。

しかし女性は勇者をじっと睨んでいるかのようだった。

うん、わかる。

なんであんなのを連れて旅をしているんだろうね。

 

 

 

「なるほど、そんなことが……」

 

一応、男の弁護的なものをしたら、何やら意味深な顔をされた。

解せぬ。

ただ単純に貸し借りのある間柄というだけだというのに。

 

「まあ、人間の感情なんてその日その日に変わるから」

「え、何その台詞ちょっとわけわからないんだけど」

 

聞き捨てならない台詞であった。

感情……感情?

あの男に対して、自分が何か変な感情を抱いているというのだろうか。

 

勇者は自問自答した。

いやないない。

ありえない。

瞬殺だった。

 

 

 

「ンンンンンンンお待たせしました」

 

暫くすると、何故か男が鍵を持ってやってきた。

そしてそのまま鍵を開けると外に連れ出してくれたのだった。

 

「なんで?」

「拙僧、この街に違和感を感じておりました。そのため町長と取引をしました。色々ありましたて、結果として御身を裏切りましたが……無事、無罪放免を勝ち取りました」

「だからなんで?」

「おやめくだされおやめくだされ。剣で脇腹を刺すのはおやめくだされ」

 

つまるところ、この街は魔物によって支配されていたということだ。

それをこの男と猫と機械の魔物が見破り、撃退したのだという。

 

じゃあなんで最初にそれをしなかったのかと問いただす。

 

「その方が面白そうだったので」

 

殴った。

 

 

 

とにかく。

女性にかけられていた容疑も晴れ、無罪放免を勝ち取った勇者一行は、そのまま旅立つことになった。

勿論、慰謝料的なものを受け取ってだ。

お金は重要なのである。

 

「ところで」

「はい?」

 

男と別々の部屋に泊まった勇者は、女性に対して聞きたいことがあった。

どうして一緒に旅に出てくれる気になったのか、である。

 

「それはね……誰かを助けたいっていう気持ちに、共感したから……かな?」

 

なんだか優しい理由だった。

そんな簡単な理由でついてくる旅ではないはずなのに。

 

「あなただって、誰かを助けたいってだけで旅に出たんでしょ?」

 

そう言われると、何も言い返せなかった。

 

「アモールの水は」

「それは言わないで」

 

これは禁句だったらしい。

 

 

 

傍らに猫と機械の魔物を従えた女性を仲間に加えた勇者一行。

後々とある街で彼女が聖女と呼ばれていることを知るが、男は驚くことなく接してきた。

こいつ知ってたな。

勇者は男の脇腹を剣で刺した。

 

 

 

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