勇者「この中に一人裏切り者がいる」???「ンンンンンンンそれは一体誰の事でございますかな?」   作:偽馬鹿

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※最初からこういう感じを想定してました。


魔王とリンボと時々勇者

何とか辿り着いた魔王の城。

そこまでの道は長く険しいものだった。

 

男が裏切ったり。

山や谷があったり。

男が裏切ったり。

毒の沼の湿地帯があったり。

男が裏切ったり。

男が裏切ったり。

男が裏切ったり……。

いつもの事だったが、大変長く険しい物だった。

 

「ンンンンン拙僧この辺りまでは裏切ってはいなかった気もしますが、ええ。気のせいではないかと」

 

そういえばそうだっただろうか。

勇者は少し思い出す。

確かに、裏切ってはいなかったような気がしないでもない。

……いや、きっとどこかで裏切ってるんだ。

勇者は確信していた。

 

「裏切ってる」

「ンンンン信用がない」

「ええと、自業自得という言葉をご存じですか?」

「ンンンンン生憎と知らぬ言葉ですな」

 

いつものごとく脇腹に剣が刺さる男。

最早慣れた光景に、聖女様は苦笑するのだった。

 

 

 

「ンンンンンンンまさか本当に敵対したままここまでくるとは思いませなんだ」

 

今のは蘆屋道満の台詞である。

ややこしい。

とはいえ清廉な感じを醸し出しているのだ。

見た目では何となく違いは分かるのだった。

 

「ンンンンン拙僧、勇者殿の御心に寄り添う従順なしもべであるがゆえに。故に脇腹にはじゃの剣を刺しこまないで欲しいところでございます。ああおやめくだされおやめくだされ」

 

とりあえず刺される男。

 

しかし、今は戦場である。

戦わなければならないのだ。

蘆屋道満という、男よりも強いと、男本人が言った相手と。

 

「まあ安倍晴明よりは弱いのですが」

「貴様!」

 

ここで男が蘆屋道満の地雷をハンマーでぶち抜く。

自分の地雷でもあるのにこうも叩き込むとは厚顔無恥も甚だしい。

激昂した蘆屋道満をしり目に、勇者ははじゃの剣を抜き、構えて突貫。

聖女様は祈りを捧げ、みなの無事を祈りつつ色々と補助呪文を唱えるのだった。

キラーマシンと猫? 先程の台詞の途中から飛び掛かってましたが。

 

 

 

まあ結果として。

 

「馬鹿な……!?」

「悪いけど、勇者だから魔王は倒さないといけないんだ」

 

蘆屋道満は勇者に倒されたのだった。

 

 

 

「ンンンンンン見事! 見事! 流石勇者殿! 拙僧信じておりました!」

「……………ま、まあね」

 

純粋な賛美に若干照れる勇者。

そして、そんな様子に疑問を浮かべる聖女様。

 

「この間、あなたは蘆屋道満には勝てないと言っておられたようですが」

「ええまあ、はい。拙僧一人では敵わないと言いましたが」

「そんな相手に、こうも簡単に勝てるのでしょうか」

 

つまるところ、蘆屋道満があっさり倒されたことが不思議だったのだ。

裏切りに裏切った男と、蘆屋道満。

どちらも強く、そして男よりも強いという蘆屋道満。

何故そんな相手に勝てたのか。

 

「単純な話ですぞ」

 

男は脇腹に刺さるはじゃの剣をあしらいながらその問いに答える。

 

「拙僧に攻撃を当てられる勇者殿が本気を出したからでございます」

「それは……」

「ンンンンン流石に拙僧も生身のままはじゃの剣で刺されたら怪我をします。防御の術式をかけておりますれば」

 

その割にはざくざくと刺さる勇者の剣。

即座に修復されるとはいえ、痛いのには変わりないのでは……と思ったが、男だし別に問題はないかと思いなおす聖女様。

 

「そして、勇者殿の攻撃はそれを貫通するのでございます。それを知らぬ蘆屋道満は、気付かぬままあっさり退場した、というわけでございます」

「ふーん。教えてくれても良かったんじゃない?」

「教えたところでやることには変わりないので」

「……」

「ああ、おやめくだされおやめくだされ」

 

つまるところ、男は勇者の強さを信じていたから勝てた、ということなのだろう。

聖女様はそう思うことにした。

 

 

 

そして。

いよいよ魔王の間である。

 

荘厳な雰囲気。

邪悪な装飾。

そして血の匂い。

そんな凶悪な場所……を想定していたのだが。

 

「……?」

 

あったのは。

軽い雰囲気。

パリピな装飾

そしてインクと紙の匂い。

 

「……拙僧急用を思い出しました」

 

すると、先程までンンンンンンン言っていた男が急に焦り出す。

流石にここまで来て逃げてもらわれては困る。

勇者は腕をがっしりと掴んで引っ張る。

おやめくだされおやめくだされと言いながら引きずられる男。

 

 

 

そして。

いよいよ魔王と対峙するときが来た。

 

 

 

「あれ、負けちゃったか―あいつ。まあマンボちゃん予備軍じゃどうしようもなかったってことか……って、マンボちゃんじゃん」

 

 

 

そこにいたのは。

威厳のある邪悪な魔王ではなく。

パリピなゆるっゆるでアゲアゲななぎこさんだった。

 

 

「……」

「……」

「……ンンンンン」

「逃げちゃ駄目」

 

勇者PT、全員無言。

なおも逃げようとする男を勇者はがっちりとホールドしている。

 

「え、何? 知り合い? やっぱり裏切ってたの?」

「ンンンンン拙僧裏切って等おりませぬ故そろそろその腕を離していただけると」

「それじゃあなんで魔王のこと知ってるの?」

「ンンンンンン」

「話して」

 

ンンンンンと鳴いて誤魔化そうとする男を更に締め上げ、勇者は詰問する。

男はこれまで以上に抵抗するが、観念したのか話を始めるのだった。

 

「拙僧、実は勇者殿よりも先に仕えていた主がおりました」

「え、そんな馬鹿がいたの?」

「ンンンンンンブーメランが脳天に突き刺さっておりますぞ。それはともかく。そんな主に付き従っておりました拙僧、目の前の魔王に敗れたのでございます」

 

なんと。

男は一度魔王と戦っていたのだという。

そういうことならば問題ない。

勇者は腕を離そうとして―――――

 

 

 

「ははは、マンボちゃんが世界を滅ぼそうとしたのが原因じゃん。それに水着きて遊んでたのも知ってるぞい」

 

 

 

――――――更に締め上げた。

 

 

 

「ンンンンンン流石に拙僧も腕が痛い。耳はこれっぽっちも痛くはないのですが、はい」

「で? どうして知り合いなの?」

「ンンンンン拙僧実は最初の主を裏切り、あの魔王と同じ組織に属しておりました。裏切りましたが」

「それってもう病気なんだ……」

「それはともかく。拙僧とある事情で死にまして。分身を逃がしたところ、こちらに拙僧が流れ着いたという顛末でございます」

 

なるほど。

勇者は理解した。

とりあえず自分のところに来る前にいた組織の同僚が、目の前の魔王であったと。

死んだとかそういうところは聞き流していた。

 

「実はさっきのマンボちゃん予備軍はキャスターでさー。普通に裏切らないからいい感じだったんだけど」

 

そう言ってる魔王。

何やら男と仲が良さそうである。

なんとなくふつふつと湧き上がる謎の感情に、勇者は男を締め上げる力を強めるのだった。

 

「それでもちゃんマスがマンボちゃんも仲間だっていうから、その痕跡をたどってこんなところまで来たってわけなんだけど……勇者PTに転がり込んでるとか笑うしかないっしょ」

 

爆笑する魔王。

既に勇者の締め上げる腕からはバキバキという骨の折れる音が聞こえ始めているが、誰もツッコミを入れない。

聖女様もスルーである。

 

「というわけで……」

 

しかし、次の魔王の台詞で、勇者は凍り付くのだった。

 

 

 

「帰るよマンボちゃん。ちゃんマスが待ってるし」

 

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