勇者「この中に一人裏切り者がいる」???「ンンンンンンンそれは一体誰の事でございますかな?」   作:偽馬鹿

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おやおや一話くらい増えたな???


カルデアと勇者と新しい魔王

「え……?」

 

勇者は耳を疑った。

帰る?

どこに?

ここじゃなくて?

 

勇者は不安げな顔で男を見る。

男は無言。

そして真面目な顔だ。

いつものような不審な笑顔ではない。

 

「ええ、では……そのように」

「あ……」

 

そんな。

いなくなってしまう。

せっかく一緒だったのに。

そんなの……嫌だ。

 

ぎゅっと、勇者は男の腕の締め上げる。

もはや骨はバキバキ、肉のちぎれそうな音すらしている。

 

「……勇者殿」

「……」

 

男は優しく勇者に語り掛ける。

そんな最後の別れみたいな顔。

やめてほしい。

おねがいやめて。

勇者は頭の中でそう懇願した。

 

しかし、男はそんな勇者の拘束をさっと払い除けて歩き始めた。

自分にはもう止められないのだと、勇者はその場に崩れ落ちた。

 

 

 

「いいですか。絶対についてきてはいけませぬぞ」

 

 

 

男は振り返ることすらなく、その台詞を最後にいなくなってしまった。

 

 

 

「……」

 

その場にどれだけ座り込んでいただろうか。

勇者は何も考えることもできないまま、ただただ座り込んでいた。

 

一緒にいたのだ。

ずっとずっと、一緒に。

父よりも、母よりも。

それこそ肉親だと嘯く誰よりもだ。

 

それが。

こんなあっさりいなくなるだなんて。

 

「どうしよう……」

 

勇者の目から涙が溢れる。

もう会えないのか。

もうあんな風に笑えないのか。

それが、とても悲しかった。

 

 

 

「え? 会いに行けばいいじゃないですか」

「え?」

「え?」

 

 

 

しかし聖女様はけろりとしていた。

きっと自分とは環境が違うからそんな顔ができるんだと勇者は思っていたが、どうやらそうではないようだ。

 

「え、だってついてくるなって……」

「嫌よ嫌よも好きの内と、どこかの本で習いました!」

「だってどうやって会いに行けばいいのか……」

「私なら痕跡をたどるくらい余裕ですけど」

「……」

「……?」

 

無言。

いや、勇者は絶句していた。

そういえばそうだ。

あの瞬間、聖女様は口を挟まなかったが、別に絶望したり失望したりした顔はしていなかった。

つまりまだ、会うことができるのだ。

勇者の顔は明るくなった。

 

「まあ会いに行けると言っても、一人だけですね。私は残りますので、どうぞご自由に」

「こんな敵の真っただ中で、何をするの?」

「折角なので、やりたいことを」

 

聖女様はにっこりと笑って、勇者を送り出すのだった。

 

 

 

 

「おかえり」

「ンンンンン只今戻りましてございます」

 

同じ頃。

男はカルデアのマスターの元へと帰還していた。

魔王からはリバーブローを決められたが、まあ些細な事。

別に死ぬわけでもなしと放っておくのだった。

 

「……? その腕は?」

 

しかし、見れば男の片腕はぐちゃぐちゃで。

治療もせずに放置されていた。

 

「いえ、ただの感傷でございますれば。ンンンンン誰もお呼びなされるな。拙僧暫くはこのままで」

「おいおい! 婦長呼ぼうぜ!」

「おやめくだされおやめくだされ」

 

といった感じでじゃれ合っていると、唐突に警告音。

何やら面倒事が起こったようである。

みんなはすぐに集合するのであった。

 

 

 

「大変だよ。カルデアの召喚システムが乗っ取られた」

 

ガチで大変な事件だった。

もはや異星の神と戦っている余裕すらなくなるほどの。

 

「ンンンンンン嫌な予感と大変危ない気配が近寄ってきています。ええ、あの人物の」

「……?」

 

マスターは首を傾げる。

しかしそれどころではない。

このままでは大変なのだ。

なんとかしなければ。

 

 

 

すると、唐突に召喚陣が動き始める。

乗っ取られたそれから何かが現れる。

そんな事態に、全員に緊張が走る。

 

そして、発光。

召喚が成功した証だった。

 

 

 

「……」

「……」

 

 

 

現れたのは。

先程まで男と一緒にいた勇者であった。

 

勇者は無言。

男も無言。

しかし、なんとなく面白そうな気配を感じたみんなはそそくさと距離をとる。

 

そして勇者が駆け出した。

両手を広げてまるで抱き着こうとしているようだった。

それに対して男も両手を広げて迎える姿勢である。

 

「ンンンンンそれほどのまでに拙僧に会いたかったとは些か意外ですぞ」

「だっしゃおらぁ!」

「げふぅ!?」

 

しかし、勇者は男の胸ではなく足に抱き着き、そのまま男を地面に叩きつけたのだった。

勇者の筋力と瞬発力で放たれるタックルになすすべなく、男は頭を強打するのだった。

 

 

 

「ええと……」

「なんだやっぱりついてきたじゃん。だから普通に腕を治しとけばよかったんだよマンボちゃん」

 

魔王はぶっ倒れている男をバシバシと叩く。

治していない腕の方を。

えげつないな。

 

「と、とにかく! 温かい飲み物でもどう?」

 

その惨状を見たマスターは仕切り直すかのように声を上げて、勇者を招き入れるのだった。

 

 

 

「この度はうちの道満がお世話になりました」

 

話を聞いたマスターは頭を下げた。

いや本当に、お世話になりました。

マスターは謝罪の体勢である。

 

「いや、別に、そんな」

 

勇者の方が委縮気味である。

それはそうだ。

ただ追いかけてきただけなのだ。

それなのにこの待遇、勇者的には驚きであった。

 

 

 

「ところで拙僧驚きました。勇者殿が召喚システムを乗っ取ってまでここまで来られるとは」

「……?」

 

そういえば。

みんなは先程受けた報告を思い出す。

そう、召喚システムを乗っ取られた後で、勇者はここに来たのだ。

つまり、勇者こそがその犯人だということなのではないだろうか。

 

しかし、勇者には心当たりはない。

頭を左右に振り、男を指さす。

いえいえますたぁこの度は拙僧ではありませぬ。

ボロクソに殴られてから男はそう反論した。

 

「だって、聖女様がここに繋げてくれたんだもん。よくわからない」

 

そして、勇者の口から聖女様の話が出た瞬間、またもや警告音が響くのだった。

 

 

 

「はい、私が新しい魔王です☆」

 

 

 

聖女様、御乱心。

 

なんと聖女様、あの状況下で魔王になりやがったようである。

あの女どこか嫌な気配を刺せていたと思ったら。

男が頭を抱えている中、勇者が声をかける。

 

「どうしてこんなことしたの?」

「? これは勇者様の為なのです」

「どういうこと?」

「後で分かります」

 

 

そう言うと、ブツンと通信が切れる。

またまた集合したみんなに、可愛らしい少女からの報告が上がった。

 

「今回はあの道満君がいた世界にカルデア式召喚システムが乗っ取られた大変な事件だ。早々に事態を解決しなければならない」

「ンンンンンンそうですなぁ流石に拙僧もここまでやるとは思ってなかったのでそうですね皆様方武器を下ろしていただけれると嬉しいですぞ」

 

既に満身創痍の男。

そんな男に満足げな勇者。

 

「……話を戻すけど。今回もレイシフトできるメンバーが限られているんだ」

「れいしふと?」

「その世界に飛べる人員の事さ。その人員は……」

 

可愛らしい少女が指をさしていく。

マスター、男、そして勇者。

この3人であった。

 

「この3人なら、レイシフトが可能だ。勇者君、手伝ってくれるかい?」

 

勇者は考え込み、気付き、ぱぁ、と顔を明るくした。

そしてこくこくと頭を上下に振るのだった。

 

そうだ、また男と旅ができるかもしれない。

また一緒に、である。

そんな機会を逃すわけにはいかなかった。

 

「ンンンンン直接その場に飛び込むわけにはいかないので?」

「異様な力場が組まれていてね、それは難しい。君がどうにかできるなら試す価値はあるけどね」

「拙僧もこれは無理ですねぇ。あの女、やはり全力を出していなかった様子」

 

というわけで、長い旅になりそうだ。

マスターがそう締めくくると、勇者は嬉しそうにマスターの手を握った。

 

 

 

「よろしくお願いします!」

「はい、こちらこそよろしく!」

 

 

 

「ンンンンンン拙僧、嫌な予感がプンプンいたしますぞ?」

 

 

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