勇者「この中に一人裏切り者がいる」???「ンンンンンンンそれは一体誰の事でございますかな?」   作:偽馬鹿

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勇者と英霊と時々マスター

旅は熾烈を極めた。

裏切る男。

駆ける勇者。

裏切る男。

窘めるマスター。

裏切る男。

裏切る男。

裏切る男。

いつものことであった。

 

そうして何とか焼き増しの旅をこなした勇者たちは、改めて魔王の城へと辿り着いた。

何だかんだあったものの、勇者の顔はいつも笑顔だった。

男の裏切りもいつものことであったが。

マスター的にはどうしてこんな男への好感度が高いんだろうこの勇者……? とか思っていた。

 

「ふふふ、来ましたね勇者様。はい、新魔王です」

「聖女様……どうして……?」

「言ったでしょう? 勇者様のためですよ」

 

玉座ではなくキラーマシンの上に座り、猫を撫でつつ勇者たちを出迎える聖女様。

楽しそうっすね。

 

「とりあえず最初の一言を……こほん。世界の半分をあなたたちに差し上げましょう。仲間になりませんか?」

「結構長いんだけど?」

「ンンンンンそれでは拙僧そちらにつきますれば」

「道満???」

 

裏切りのリンボ~マスターを添えて~

 

「嫌です」

「あら、どうしてです?」

「だってそうなってもこいつはついてこないもん」

 

勇者は男を指差して言う。

世界の半分よりも男の方が重い。

これは愛が深いですよ。

 

「愛されてますねぇ」

「ンンンンン拙僧そのような行いをした覚えは欠片もないのですが」

 

その間にもグサグサと脇腹に剣が刺さっていく男。

最早逃げられない。

 

 

 

「仕方がありません……分からず屋にはお仕置きです☆」

 

 

 

聖女様がキラーマシンに乗ったまま襲い掛かってきた!

 

 

 

「ンンンンン普通に圧殺されました」

「強い……」

 

勇者たち、敗北!

 

キラーマシンによる強烈な物理攻撃。

猫による波状攻撃。

そして聖女様によるバフ。

単純に強かったのである。

 

「……聞きたいことがあります」

「はい?」

 

ボロボロになったマスターが問う。

どうして召喚システムを乗っ取ったのか。

 

「勇者様のためなのです」

「だからどうして?」

「んー言ってはなんですが、勇者様って不器用でしょう?」

「うんまあ……」

 

勇者は気絶していてこの会話を聞けない。

故に無遠慮なまでにその理由を晒す聖女様。

マスターもそのことを認める。

だってこんなに男のことが大好き(not恋愛感情)なのにそれに気付いてないとか。

 

「それでまあ、今回の旅をさせることでそれを矯正しようかなって」

「……それだけ?」

「はい☆」

「……」

「……?」

 

そのために世界を巻き込んだのか。

頭痛を我慢するマスターと、全く欠片も理解できていなさそうな聖女様。

 

「あと、ついでに魔物たちを説得していい感じに共存出来たらなーとか思ってたのですが、それも難しそうで」

「……それで?」

「そっちの世界につよーい子たちを送り込んで、いい感じに説得してもらえたらなって☆」

「マシュー! ダ・ヴィンチちゃーん!」

 

無自覚迷惑発生装置だった聖女様。

そしてさっきからカルデアとの通信が途絶えているのもそれが原因か。

 

「道満は知ってたの?」

「ンンンン何をですかな?」

「この人が結構残念な人だって」

「ある程度は。まさかこれほどとは思ってませんでしたが」

 

男にとっても想定外の出来事。

勇者に至っては気付いてもいなかっただろう。

それだけ、聖女様の擬態(?)は完璧だった。

 

「というわけで、勇者殿には今の話を聞いていただきました」

「あ、まさかあの気絶している勇者様は偽物!?」

「ンンンンンンその通りでございます」

 

そんな感じで、男の後ろに立っていて聖女様からは見えなかった勇者。

その勇者がぷるぷると震えている。

顔は真っ赤だ。

 

「そ……」

「そ?」

「そんなんじゃないもん!」

 

勇者、叫ぶ。

そしていつも以上に男への当たりが強くなる。

具体的には全力パンチだ。

 

「でも勇者様、その人あっちの世界に帰っちゃいますよ?」

「そ、それもやだ!」

「じゃあ認めちゃいましょう。その人のことが大好きだって」

「うー! ううー!」

「なんだこれ」

 

マスター困惑。

まさかこんなことが原因だったとは。

 

 

 

『マスターさんマスターさん』

「?」

『今私はあなたの心に直接語り掛けています』

「!」

 

そして、そんな茶番を見ていると、唐突に頭の中に響く声。

つまるところ念話である。

それをしてまで話すということは、とても重要な話ということだ。

多分。

聖女様の言うことは微妙に信用できないのだった。

 

『あの方をちょっとお借り出来ないでしょうか? 具体的には100年ほど』

『ちょっと???』

 

やっぱり駄目だなこの聖女。

 

『でもでも、マスターさんにはたくさん仲間がいるでしょう? 一人ぐらい貸したって罰は当たりませんよ』

『それでも』

『……』

『それでも道満は、仲間だから』

 

頑ななマスター。

むむむな聖女様。

話は平行線であった。

 

 

 

「!」

 

そして。

唐突に何かを思いついた様子の聖女様。

 

「じゃあこうしましょう! 勇者様も仲間に加えてあげてください!」

「は?」

「ンン?」

「え?」

 

聖女様は考えました。

こちらに男を残すことはできない。

勇者様は男と別れたくない。

男は裏切る。

ならば勇者があちらに行けばいい。

つまりそういうこと。

 

「そうすれば万事解決ですね?」

「ええと……」

「解決じゃないということは、魔物たちは向こうでずっと居座ることになりますけど」

「万事解決です!」

 

最早脅しであった。

パン、と両手を合わせて笑顔になる聖女様。

そして、それだけでカルデアとの通信も回復するのだった。

 

『先輩! こちらは何とかなりました!』

「マシュ! こっちもなんとか……何とか? なりそうだよ」

 

一応の終着点を見つけた今回の騒動。

さて、マスターの最後の仕事が残っていた。

それは……。

 

 

 

「ンンンンンおやめくだされおやめくだされ。拙僧の肝臓にブローを叩き込むのはおやめくだされ」

「ううー! うー!」

 

 

 

……あのじゃれあっている2人を、どうにかしてカルデアに引っ張り込むかを考えることだ。

 

 

 

「というわけで、今日からお世話になります」

 

勇者、カルデアの所属になる。

 

 

 

聖女様がサムズアップをしながら勇者を送り出した後、召喚システムは正常に戻った。

随分と遠回りになったが、どうにか事件は解決したのだった。

 

 

 

というわけで、勇者と男と聖女様の旅はこれでおしまい。

勇者と男は地球を元に戻すために。

聖女様は異世界で魔物と人間が共存できる世界のために。

旅を続けることになったのだった。

 

 

 

余談ではあるが。

召喚システムには若干のバグが残ったのか。

聖女がいる世界から魔物が送られてくるようになったのであった。

 




というわけでおしまいでございます。
続きというかなんというか、これから先の話はちゃんとストーリーを思い出したらということでご容赦を。

ともあれ、勇者と男と聖女の話は終わりです。
みさなまお付き合いいただきありがとうございました。
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