君がそれを愛と呼んでも 二次創作   作:セパさん

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・原作に登場しない人間視点のお話となっております。アンチ・ヘイトのつもりで書いていませんが、そんなの無理という方はバックしてください。


ある日の出勤風景

「坂下!イソジンとボディーソープの整理終わったら、えあるちゃんとみおちゃんのお迎えお願い出来る?」

 

「解りました!もうすぐ終わるので、連絡結果を確認してから出発します。」

 

 ここはデリバリーヘルスSKY-HI、デリヘルとは所謂(いわゆる)出張型の性サービスで、店舗内ではなく客が指定したホテルや自宅に女性を派遣させるサービスのことをいう。裏方である男性スタッフの仕事は多岐にわたり、掃除・洗濯、棚卸やサービス用品の発注、ドライバーの手配や自身がドライバーとなり従業員(女の子)の歓送迎、更には女の子のメンタルケアまで仕事の内だ。

 

「とりあえずメッセージで出勤確認しないと……。えあるちゃんは今回出勤出来るかなぁ。」

 

 デリヘルで働く女の子は結構アルバイト以下の感覚で居ることも多い。大抵は時間に対してルーズであり、事前に出勤確認をしても未読のままスルーされることもしばしば。悪質な店ならばペナルティを科すことこともあるらしいが当店では優しく注意するに留めている。

 

 もちろん仕事意識をしっかりと持ってスタッフにもお客様にも丁寧な嬢はいる。そういう子は()てして指名も多く、人気も高い。えあるちゃんはそのタイプで、当店でも人気の嬢なのだが、異様なほど【生理休暇】が多い。ひどい時だと3か月の半分が【生理休暇】だったこともあるほどだ。

 

 もちろんそんなふざけた話を真に受けるほど店もバカではないが、【夜の店】で働く女の子というのは何かしらの闇を抱えている。えあるちゃんの場合はそれが如実だ。

 

「お、流石返信早い。……今日出勤は出来るみたいだな。201号室か、あの男居なきゃいいけれど。」

 

 【201号室】はSKY-HIの従業員にとって結構悪名高い。曰く送迎へ行ったら部屋から男性の怒声が響き渡っていた、曰くドアを開けた瞬間顔面にガラス製の灰皿が飛んできた、曰く反グレ集団な面々が集まっていて明らかにタバコではない何かの煙が充満していた……etcetc。

 

 兎に角、えあるちゃん自身はとてもいい子なのだが、その彼氏と思わしき人物が曲者なのだ。えあるちゃんもこっちに気をつかってか、歓送迎のサービスを断りわざわざ電車と地下鉄で出勤してくることも多い。しかし店としては出勤日に客と遭遇しトラブルになられるとより厄介なので、出来る限り送迎のサービスを受けてもらっている。

 

 現在は玄関前や近場に待機してもらうことでトラブルは減ったが、逆を言えばえあるちゃんが玄関前に立っていないということはトラブルが発生している真っただ中という訳で……。

 

「はぁ、今日は何事も無いといいけれど。」

 

 しかし悪い予感ほど当たるのがこの世の常。あれからえあるちゃんへメッセージを送っても既読の文字は付かない。間違いなくトラブルが待っているのかと思うと気が重くなる。そんなことを考えながらえあるちゃんの住むアパートに車が到着した。

 

 今なおメッセージは既読にならない。〝あの部屋に行かなければならないのか……〟わたしがそんな暗澹たる気持ちに押しつぶされそうになっていると、201号室のドアが勢い良く開き、顔を真っ赤にしたえあるちゃんが階段から落ちそうな勢いで走ってきた。

 

「お、遅れました!すみません!」

 

「あ、いえ、全然大丈夫ですよ。」

 

 えあるちゃんは未だ頭から湯気が出ているかのように顔を赤らめて小刻みに痙攣じみた浅呼吸を繰り返している。

 

「えあるさん、彼氏さんと何かあったんですか?」

 

 あまり直接プライベートな話にツッコむのはよろしくないが、ここまで様子がおかしいと仕事に支障が出る。なのでどうしても問わずにはいられなかった。

 

「いえ!本当に何も、全然何も何もなかったです!」

 

「ならよかったです。それとえあるさん、店についたらなんですが……」

 

 こちとら性サービス業の従業員、この症状に限ってだけは皮膚科の医者よりも多く見てきた自信がある。えあるちゃんの皮膚には【吸引性皮下出血】の症状が多数散見され、このままお客様のもとに送るわけにはいかない。

 

「キスマーク消すクリーム塗ってから仕事しましょうか?」

 

「へあ?はわわわわわわわわわ!」

 

 再び頭から湯気を出し顔を真っ赤にしながら全身を探る様子はひどく庇護欲をくすぐる光景だ。

 

 ……従業員としていけないことだが、えあるちゃんの彼氏が結構本気で羨ましくなった。

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