新監督 久遠の指導の下、力をつける世宇子中。目指すは、冬のフットボールフロンティア。負担軽減できたのか、アフロディの動きもよくなる。それは、直近の練習試合の結果にも表れていた。全ての試合で二桁得点での圧勝。守備においても、得点を許すことのない硬さ。全てが盤石になりつつある。欠点があるとするならば……。
「一平、ナイスパス!」
「ナイスシュート、アキレス!」
「一平、俺にもパスくれよ!」
「マークが外れてたらな。」
山城の存在だ。世界大会を経ての成長が凄まじく、周りと大きな差が生まれていた。だが、山城は、実力を隠して周りに合わせていた。それに気づいているのは、久遠と山城そして、キャプテン アフロディである。だからこそ、アフロディは、悩んでいた。チームは、成長した。自分も窮屈さもなく自分のプレイスタイルを変えていない。だが、山城は、違う。チームのためと、自分のスタイルを殺して前線のパスの中継になっている。本来の山城ならアキレス、ヘラ、そして、自分のように前線でボールを貰い、自らドリブルで切り込み、得点する。だからこそ、アフロディは、思った。
「(彼は、こんな所で止まっていい選手じゃない。もっと上の世界でプレイするべきだ。)なら、僕が、僕たちが彼にしてあげることは、……。」
その日の放課後、練習が終わって片付けをしている山城にボールを歩むアフロディ。それには、山城もそうだが久遠や部員全員も気づく。
「どうした?アフロディ。回収し忘れたボールを見つけたのか?」
「違うよ。山城君、いや山城一平。僕と勝負しろ!」
「「「!?」」」
「勝負?それなら散々練習でやってるじゃねえか。」
「違う!君の退部を賭けてだ!」
「「「!?」」」
「ちょっとキャプテン!いきなりどうしたんですか?」
「そうだぞアフロディ。急に勝負を申し込むだけでなく、退部だなんて。」
突然のことに焦る部員たち。だが、アフロディは、本気であった。
「アフロディ。お前、自分が何言ってるのかわかってるのか?」
「わかってるよ!!けど、これは、彼のためなんだ。君たちも気づいているだろう。彼が僕たちに無理やり合わせていることに。」
「それは、……。」
「だからこそ、彼をここで立ち止まらせていいわけがない。」
「そんな……。」
「監督も何か言ってください。」
「それが、お前の決断なんだろ?アフロディ。」
「はい!」
「なら、許可する。」
「「「!?」」」
「監督!」
「良いんですか!大事なうちのエースを退部だなんて……。」
「遅かれ早かれわかっていたことだ。そうだな山城。」
「はい。」
「「「!?」」」
シューズの紐を結び直した山城は、立ち上がりアフロディと向き合う。
「確かにお前の気持ちもわかる。だが、それは、「俺に勝てたら」だろ。負けたらどうする?」
「負けたら……その時は、僕が辞める。」
「「「!?」」」
「そうか。お前の覚悟、確かに受け取った。で、勝負の内容は、どうすんだ?」
「一対一の三本先取だ。」
「わかった、それで行こう。」
こうして、怪物の進退を賭けた勝負が始まる。