マイクロウェーブオーブン・ドーパントはドーパントの中でも強い部類に入るドーパントである。
マイクロウェーブオーブン、即ち電子レンジ同様にマイクロ波加熱を行う事により一切熱源の存在しない場所で人間が爆発させるという事が可能。
通常マイクロ波は視認できない都合上使用する本人をして精密な使い方はできておらず、本人のみならず手にしていたペットボトルなんかが内部から爆発するという事態となっている。
そして、オーブン、つまりは機械の身体を持ち、熱を自在に操る事ができる為に、近接戦闘でも強い。
遠近共に攻撃手段を持ち、高い防御力を持つマイクロウェーブオーブン・ドーパントは並みの存在では勝てない。
だからこそ
「はぁ」
「きゃぁ!」
そんなマイクロウェーブオーブン・ドーパントを圧倒するWはまさに怪物だった。
しかし、それこそ当然の事だ。
この程度の敵ならば今までも散々戦ってきたのだ。
Wの戦闘経験は既に一般人レベルを超えている。
故に今更苦戦などしない。
今、Wが変身している姿はファングジョーカーと呼ばれるWの9番目のフォームである。
他のフォームを凌ぐ高い格闘能力を持ち、闘争心を剥き出しにした野獣のような戦い方をする。
その野獣のような感覚により、マイクロウェーブオーブン・ドーパントの放つ見えない攻撃を的確に避けると共に一気に間合いを詰め、鋭い蹴りを放つ。
蹴りを受けたマイクロウェーブオーブン・ドーパントは後ろに吹っ飛び倒れる。
しかし、その隙を狙いWは再び駆け寄ると再び蹴撃を食らわせる。
マイクロウェーブオーブンの体が地面に倒れ込んだ所に更に追撃を仕掛ける。
起き上がるよりも先に拳を突き立てようと試みるが、マイクロウェーブオーブンが腕を振るう事で避けられてしまう。
だが、それでも構わず連続で攻撃を仕掛ける。
しかし、流石にそう何度も同じ様に上手く行く筈もなく、今度は腕で防御されてしまう。
だが、それは想定内だ。
ガードされた所で即座に反撃してくる事は予測済みであり、逆にカウンターを狙っていたのだ。
マイクロウェーブオーブンの腕を弾き、そのまま殴りかかる。
「まさか、ここまでとはな」
そう言いながら、影はその戦いを様子見しながら言う。
事前に、フィリップから言われた事態に備え、彼は変身した状態のままで見守っていた。
だが、ファングジョーカーによる圧倒的な戦いに自身の援護が必要なのかと思える程であった。
それ程までに圧倒的だ。
何より、フィリップは言っていた。
自分や影のように、戦い方を知っている訳ではない、だから、自分のやり方を見せる、と。
確かに、この場における最適解はこの戦い方であろう。
相手が接近戦を挑んでくるタイプである以上、こちらも接近戦に持ち込むしかない。
「こうなったら」
マイクロウェーブオーブン・ドーパントはその言葉と共に自らの体内に存在するメモリを排出させる。
マイクロウェーブオーブン、その力はマイクロ波を利用した熱の操作。体内のエネルギーを燃やした炎を纏い、Wに向かっていく。
それに対してWは身構える事無く、マイクロウェーブオーブンドーパントを見据える。
マイクロウェーブオーブンドーパントの全身には無数の炎が浮かび上がっている。
「どうせ、このまま終わるならば、全て巻き添えにしてやるわ」
「まさか、自爆っ!」
マイクロウェーブオーブン・ドーパントが何を行おうとしたのか、それを瞬時に理解したフィリップだったが、遅かった。
既にマイクロウェーブオーブンドーパントは全身の熱を一気に上げていく。
その姿はまさに爆弾のようであり、マイクロウェーブオーブンドーパントを中心にして周囲に爆発が起きようとしていた。
「悪いけど、それも既に予測済みだよ」
そう、フィリップは笑みを浮かべていた。
『ファング!マキシマムドライブ!』
同時にWはその腰にあるファングメモリの尻尾部分のレバーを3回押す。
それと共に、Wのマキシマムセイバーを形成させる。
「君を爆散する前に瞬時に倒す」
「無駄だよ、この距離ではっ」
『トライアングル!マキシマムドライブ!』
その音声が鳴り響くと共に、マイクロウェーブオーブンドーパントの目の前に三角形の紋章が現れる。
それはWの前にも現れていた。
「さてっと、行くぜ!!」
それは待機していたナスカも同じだった。
2人はそのまま目の前にある三角形の紋章に向かって、飛び込む。
「「「トライアングルファングストライザー!!」」」
3人の言葉が鳴り響き、三角形の紋章に驚きを隠せなかったマイクロウェーブオーブンドーパントは、すぐに爆発させようとした。
だが、それよりも早く、紋章から瞬間移動したWとナスカのダブルマキマムドライブが、マイクロウェーブオーブンドーパントを蹴り飛ばす。
「そんなっ私の恋がああぁぁ」
それと共にマイクロウェーブオーブンドーパントの叫び声だけが、空しく響いた。
今回の事件はいわゆる自作自演という部分が大きかった。
配信者である彼女の目的。
それは自身をストーカーとして操っていた男性と結ばれる事だった。
二つに分ける事ができるマイクロウェーブメモリは接続しているオーブンのメモリの持ち主を操る事ができる恐ろしいメモリだった。
だからこそ、彼女はオーブンのメモリを差した彼を操り、自分と相思相愛にさせようと企んでいた。
だが、それが怪盗に阻まれるとは、思いもしなかっただろう。
この事件をきっかけに彼女の活動は残念ながら終わってしまった。
今後、彼女には多くの不幸が訪れるだろうが、しかし、まだ彼女は若い。
罪を償って、今度こそ本当の意味で笑顔にする配信をして欲しい。
「なんというか、翔太郎さんって、タイプライターで書くんですね」
「まぁな、これこそ、ハードボイルドだからな。
というよりも、影、お前はその」
「まぁ、パソコンが結構便利ですからね」
「私よりも詳しくて、本当に頼もしいよ。
ねぇ、怪盗を止めたら、こっちで本格的に仕事をしない?」
「卒業後、進路がなかったら、お願いします」