どうやら、視聴者参加型のオーディション番組に出演したらしいが、その対戦相手とされるジミー中田に負けたらしい。
それが、不正である可能性が高い為、その調査を行って欲しいと。
最初は、何かの冗談だと思っていた。
「影っしっかりとしてぇ!!」
この状況になるまでは。
これまで、幾度もの戦いを乗り越えたはずの俺だったが、その歌を聴いた瞬間、倒れてしまった。
ヒサメに引きづられる形で、その場から離れたが
「しっ死ぬ」
まさか、ここで怪盗として生き残る為に培ってきた聴力を、ここまで恨めしく思うとは。
『ぁっあっあぁ』
それはどうやら霧彦も同じなのか、幽霊であるはずなのに、死にかけていた。
やがて、歌から少し離れた所で、なんとか会話できるまで、回復する。
「おい、影、無事か」
「むりです」
「だよねぇ」
そう言いながら、俺達と共に脱出した翔太郎さんと亜樹子さんも言う。
「確かに、あの殺人ソングで合格したならば、番組の不正を疑うのは当たり前だな。
けど、ジミーがメモリを使用していないだろうな」
「それは、また、なんで?」
「ここまで目立っている霧彦に対して、あいつは何も言わなかったからな」
そうして、俺はふと見上げる。
そこには、空中にいるはずなのに、水死体のように気絶している霧彦さんの姿だった。
「あぁ、確かに、これを見ても、あの態度だったからね」
「えっっと、私には見えないけど、そんなにやばい状態なの?」
「「「やばい、本当にやばい」」」
俺達はそう言いながら、水死体状態の霧彦を見つめる。
その日、俺達はフーティックアイドルの会場に来ていた。
そこで行われている殺人ソングを聴きながら、俺達は必死に耐えていた。
「あぁ、もぅ、こんなの絶対に嫌なのに。
というよりも、なんでまじで、この歌を評価しているんだよ大貫さぁん」
そう涙目になりながら、俺は審査員の1人を思いっきりと見つめる。
「影、知っている人なの?」
「知っているも何も!
伝説のアニソンシンガーだぞ!!
あの人がいなければ、これまでのアニソンがないという程のレジェンドだぜ!!」
『影君は結構オタクだからね』
そう言いながら、俺の横に優雅に座っている霧彦がいた。
「あれ、霧彦さん。
さっきまでいなかったのに、どこに?」
『幽霊というのは、とても便利だ。
身体は簡単にすり抜ける事ができるから、彼が歌を歌った瞬間、すぐに下に移動した。
テレビの撮影もあって、防音は完璧だったからね』
「うわぁ」
「悪人が」
俺はそう言いながら、周りを見つめる。
「……」
そうしていると、ふと、怪しい影が見える。
「霧彦」
『あぁ、どうやらそのようだね』
同時に、盛り上がる会場の中で、ゆっくりと離れる。
「おい、まさかフィリップ」
「そうだよ、僕達は二人で一人の仮面シンガーだ!」
「なっ何を言っているんだ!
おい、影って!?」
そう俺に話しかけようとしたが、その時には既にいない。
「影は、どこに」
「怪しい影が見えたから、離れるって」
「影ぇ!!!」
翔太郎さんには悪いが、ここはすぐにでも向かわないと。
そう俺が向かって行くと、見覚えのある顔が。
「お前は」
「あんたは、アクセルの」
そこには、丁度、仮面ライダーアクセルこと照井竜がいた。
以前の戦い以来、会っていないが、翔太郎さん達のように、俺達は仲は良いとは言えない。
「電波塔の道化師を追って、ここまで来たが、お前もか?」
「翔太郎さんの手伝いですよ。
そういうあんたは、仕事で?」
「あぁ、そうだ。
だが、怪盗の手を借りるつもりはない」
「そうですか。
まぁ、どちらにしても、俺は怪しい奴を捕らえないといけないからね」
そう、必要最低限の情報だけを交換するように、歩く。
その態度は、ある意味、翔太郎さんが憧れるハードボイルドに近い人物像だけど、今は好きになれない。
「とりあえず、近道しますか?」
「あぁ、そうさせてもらう」
その言葉と共に、俺は周りに人影がいないのか確認すると共に、カメレオポインターでそのまま照明裏まで来る。
同時に、それが明らかにドーパントだというのが分かる。
「電波塔の道化師とかいう化け物は貴様か」
その言葉と共に、俺達は同時に出てくる。
「誰だ、君達は」
「質問をしているのは、俺だ」
『アクセル』
それと共に照井はそのままアクセルメモリを取り出す。
同時に俺もまたナスカメモリを取り出す。
『ナスカ』
「変……身!」
「変身」
同時に俺は仮面ライダーナスカに、照井は仮面ライダーアクセルへと変身する。
『あの姿、まさか、あのメモリか』
「何か知っているのか、霧彦?」
そう、俺が疑問に思うよりも先に、照井は既に動き出していた。
その手に持ったエンジンブレードで真っ直ぐとドーパントに向かって、走り出す。
ドーパントは照井に対して、すぐに背中を見せて逃げ出した。
人間を遙かに超える身体能力を持つドーパントだが、仮面ライダーへと変身した照井に対しては防戦一方の様子が見て、分かる。
その証拠というべきか、ドーパントの攻撃は全て空を切り続けているからだ。
それはまるで、照井の方が圧倒的優位にいるような光景であった。
しかし、それでも逃げ続けるドーパント。
「何があるんだ?」
『その通りだ!
あのドーパントのメモリは』
それに違和感を覚えていると、横から強烈な突進が襲い掛かる。
俺はすぐにナスカブレードを構えながら、その攻撃を耐える。
「悪いが、彼は私の大事な客だからね」
『ホーンかっ!』
それと共にメモリの正体をすぐに看破した霧彦からの情報を聞く。
「ホーン?
角の記憶か?」
『あぁ、頭と肩に牛のような鋭い角が生えた二足歩行の牛の姿をしており、動きは遅いが正面の直線移動限定で目で追えない程の高速移動能力を持ち、角が生えた肩によるショルダータックルが主な攻撃方法を持つ。
巨体が高速移動で突っ込んでくるので並大抵の手段では止められないが一度高速移動をすると壁に激突するまで自分でも止められない為、正面に居なければ簡単に躱せる弱点がある』
「それは、こうして戦ってみて、よく分かる!」
そう、目の前にいるホーン・ドーパントの攻撃は霧彦からの情報通りだ。
先程のドーパントと比べても、その身体能力はかなり高い。
なによりも、この狭いテレビ局で壁の向こうに人がいる状況で、攻撃を避ければ、その先にいる人を巻き込んでしまう。
だからこそ、簡単に攻撃を避ける事ができない。そんな状況での戦いは、非常にやり辛いものであった。
しかし、それでも戦いを続けていくうちに少しずつ相手の行動パターンが見えてくる。
そして
「霧彦、後ろの壁には」
『問題ない』
後ろの壁の先を幽霊だからこそ、見る事ができる。
「だったら」
『アストロノート』
それと共に、俺が発動した能力。
同時に迫ってきた突進攻撃だが、無重力となった事で、その勢いで壁は破壊する。
だが
「なっ足が、つかない!!」
ホーン・ドーパントは無重力になった事で、足に力を入れる事ができない様子。
それと共に、俺はナスカメモリをメモリスロットにセットする。
『アストロノートマキシマムドライブ!』
同時に俺の右腕にロケットを模したエネルギーを纏い、そのままホーン・ドーパントに一気に接近し渾身の一撃を向かう。
「突撃対決行こうぜ、ドーパント!!」
その言葉と共に放たれた拳がホーンの腹部に命中し、吹き飛ばす。
それと同時に変身を解除して床に降り立つと同時に、霧彦からの報告が入る。
『倒したようだね』
そう言われ、俺は変身を解くと、倒れているホーンを見る。
完全に意識を失っているようだ。
「さてっと、こいつから」
そうして、俺が近づこうとした時だった。
ホーンの使用者は、その場で爆散した。
「今のはっ」
『ミュージアムがよく行う手だね。
情報源を絶つ為にね』
「本当に厄介だな。
とにかく、照井の所へ行くか」
そう、渋々、俺は向かって行く。