ヴァンパイアの事件から数日が経った。
鳴海探偵事務所には何時もの賑やかさを取り戻しつつあったが、最近、フィリップさんの様子が可笑しい。
ナイトメア・ドーパントとの戦いの際に、何かが起きたらしい。
翔太郎さん達も、フィリップさんの身に何が起きたのか、知らない様子だった。
それでも、事務所の皆はフィリップさんが話してくれるまで待つつもりでいた。
それは、俺も同じく変わらなかった。
だが、そんな時、ある人物が訪れた。
鳴海探偵事務所に入ってきた依頼人。
黒いスーツを身に纏い、思いっきりヤクザを思わせるその人物に、亜樹子所長は思わず「強面おじちゃん!」と驚きを隠せなかった。
そのまま翔太郎さんの背中に隠れ、そのまま押し出した。
「なんだ、地上げに来た業者か?
とっと、帰りなぁ!!」
押された事に、少し驚いた様子だった翔太郎さんだったが、すぐに強気な態度で、そのままその人に言うが
「あっ痛ぁ!」
無言で、その人はデコピンで翔太郎さんを黙らせた。
「鳴海荘吉の旦那はいるか?
俺は尾藤勇、旦那に世話になった。
務所から出たら、会いに来るように言われたんだが」
「それって」
それは既に無くなった荘吉さんの知人という事になるだろう。
「……おやっさんは……」
「父は……父は、死にました」
壮吉の死んだビギンズナイトのこともあり、話すことを躊躇う翔太郎に代わって、亜樹子所長が話す。
「亡くなったのか? 鳴海の旦那が」
「不慮の事故で」
それを聞くと、尾藤は椅子に座りこんでしまう。
「い、今は娘の私と、この弟子の翔太郎君が探偵やってます! なにか父に依頼でも?」
「いや……調べモノをしてくれていると面会の時にいっていた。それが俺への出所祝いだと……」
尾藤の話を聞き、亜樹子所長は戸棚からファイルを引っ張り出してみるも、尾藤に関わる捜査記録は明記されていなかった。
「そうか、悪かったな」
そう言い、尾藤は事務所からでていこうとするも、翔太郎は壮吉の弟子として役に立ちたいと申し出る。
だけど……。
「半人前に用はねぇよ」
「ガ──ーン……会ったばっかりなのにー!」
デコピンされてショックな翔太郎さん。
「翔太郎さん!
尾藤さん、行ってしまいますよ!」
「あっあぁ、そうだなっ!
待ってくれ!!」
そうしている間にも、翔太郎さんは、そのまま出て行った。
「ふぅ、それじゃ、俺も」
「影は休む!
この前のレベル3の怪我はまだ完全に治っていないでしょ」
「うぅ」
そう、ヒサメに言われて、俺は思わず黙ってしまう。
「少しでも休んでいないと、駄目だからね。
それじゃ、私が代わりに手伝いに行くから」
そう、ヒサメはそのまま出て行ってしまった。
「まったく」
そう、未だに痛む身体を休むように再び座る。
すると、フィリップさんがこちらに近づく。
「君に、話がある」
「??」
フィリップさんからの話がある?
それは一体、なんだろうか。
「あとで、ガレージで頼めるかい。
その、皆がいる前では」
「えっえぇ」
これまでにない雰囲気に、俺は疑問に思う。
だが、そんな疑問に思いながらも、他のメンバー達と共に話を行っていく。
そうしている間にも、事件は大きく動いていく。
尾藤さんは、元々弟分であるマルの罪を被り、出頭したらしい。
そして、今、現在起きている「野獣人間」の犯人がマルであった。
マルと戦っていた翔太郎さん達だったが、向こうの状況はどうやらいつものような戦いが行えてないらしい。
一体、どういう事なんだ?
そんな疑問に思いながらも、変身が解除したのか、フィリップさんが立ち上がる。
「感じる。やはり、新しい力が宿っている」
「新しい力?
それって、一体どういう事なんですか?」
俺はそう、フィリップさんに問いかける。
だが、そうしていると共にライブモードのデンデンセンサーが何者かの侵入を察知した。
すると、リボルギャリーの発進口で幾層にも造られたハッチが開いた。
「シュラウド!」
はいってきた人物に驚く。
それは、俺も知っている人物だった。
「どうしてここが?」
「貴方より、ずっと以前からここを知っているもの」
フィリップの質問にシュラウドとは冷静に答える。
「来人、貴方はもうすぐ進化する、エクストリームメモリを使って。でも、そこに到達できる真のパートナーは……左翔太郎ではない」
「翔太郎ではもう……僕のパワーについてこれない……?」
シュラウドに翔太郎と別れるようにと言われた訳を理解したフィリップは、半ば絶望感をあじあわされた。
「ちょっと、待てよ!
シュラウド、さっきから、何を言っているんだ?」
未だに状況を飲み込めない俺は思わず、割って入ってしまう。
それと共にシュラウドもまた、俺を見る。
「あなたも、ナスカの力は少しずつ覚醒しているようね」
「それは、一体」
「常人ならば到達する事ができないレベル3。
それを使える以上、その先にも到達できる」
「どういう事だよ」
「テラーと戦うのが、エクストリームならば、あなたはその障害を全て振り払う獣となる。
それを進める為に必要なのが、ナスカなのだから」
「だからっ、どういう」
そう、聞き終える前に、シュラウドは、その姿を消した。
結局、彼女が何を言いたかったのか、分からなかった。
それでも、今のフィリップさんの様子から、何かが起きるのだけは確実だ。