「うわぁ、凄い」
そう言いながら、ヒサメは目の前にある光景を見つめながら、口に出す。
眼前には、海岸線と共に、その両端に巨大なZENONホテルとシーサイド遊園地、その他の様々な施設が多く見られる。
「ここが、影の実家なの?」
「まぁ、そうなるな」
俺はそう言いながら、大きく変わってしまった景色に対して、空しさを感じていた。
ここにいる多くの人は確かに思い出に残る光景が広がり、素晴らしいと思うかもしれない。
けど、それを作り出す為に、爺ちゃんが残し続けた自然を破壊し、作り上げられたそれを、俺はただの金儲けの為の道具にしか見えなかった。
「影?」
「とりあえず、フィリップさんと合流しよう。
いや、今は翔太郎さんと言った方が良いな」
そう言いながら、俺はそのままフィリップさん達と合流する為に彼らがいるだろう場所に向かった。
しばらく歩き続けると見えたのは、フィリップさんと話している人物を見つめる。
「あの人は?」
その人物に対して、疑問に思ったように首を傾げるヒサメを余所に、俺はそのままフィリップさんと話している人物に近づく。
「相変わらず、背と同じぐらいに人を馬鹿にする事が趣味なんですかねぇ、お兄様」
「……貴様は」
そう、俺の存在に気づいた兄である禅空寺俊英は苛つきを隠せない様子で、俺を見ていた。
「まったく、未成年であるお前にも、土地の権利を与えるとはな。
爺さんも面倒な事をしてくれる」
「あんたらのような奴だと、爺さんも心配だったんだろうな。
翔太郎さん、亜樹子さん。
とりあえず、施設の案内は俺がしますので、こちらに」
「……あぁ、よろしく頼むよ」
そう、あいつとの会話を少しでも早く終わらせたい気持ちと共にすぐに2人を連れて、その場から去って行った。
そして
「なんっっやねん、あのチビイケエン! 感じ悪っ!!」
「でしょ!
やっぱり亜希子所長は分かってくれますかぁ!」
あいつから離れると共に、亜樹子所長の叫びに思わず賛同してしまう。
「……影、君は家族の事をあまり話したくなかったのは」
「えぇ、そうです。
あの兄を始めとして、香澄姉さんとあずささん以外は、金儲けの事しか考えないようなどうしようもない奴です」
同時に思い浮かべるのは、親父を始めとした奴らが行った爺さんが残した自然を壊してのビジネス。
それが嫌で、俺はこの家から飛び出してしまった。
「ならば、君はこの事件で、Zのメモリを探し出して、どうするつもりだい?」
それは、俺がZのガイアメモリを見つけ出して、どうするのか。
その確認を行うように、聞く。
「……正直に言って、翔太郎さん達と出会う前だったら、多少の罪悪感があっても、この地のリゾート地をぶっ壊すつもりでした」
「そんなの、可能なの」
「犯罪者が作った遊園地なんて、誰も嫌でしょ。
けど」
同時に俺は翔太郎さん達と共に事件を追い、多くの人達との関わりを思い出す。
「俺がそれをやったら、結局はあいつらと同じ事。
そんな事、爺さんが望む訳ない」
「それじゃ」
「あぁ、Zのメモリを見つけ出して、闇を暴く。
それで、誰もが、本当に綺麗な思い出を作れる場所にする」
そう言いながら、俺は今はある光景を見つめる。
既に自然の多くは確かに無くなっている。
けど、確かに自然は残っており、それは俺と香澄姉さんが守った大切な存在が残っているという事だ。
だから──ー
「その為にも、絶対にZのメモリを手に入れないとな」
その言葉と共に、目の前には既に屋敷が見えた。
「それじゃ、案内しますね」
そう言うと、屋敷の中へと向かっていった。
そこは先程までいた別荘よりも遥かに大きい部屋が広がっていた。
そこには高級そうな家具が置かれており、まるでここだけ別世界のようだった。
未だに変わらない光景を見ながら、俺はそのまま屋敷を案内していく。
代わり映えしない光景に、ゆっくりと見つめながら、ふと何か聞こえた。
何かが屋敷にぶつかった音だ。
同時に、屋敷の壁を破壊した正体が見える。
「えっくっ車ぁ!!」
それは黒塗りのベンツ。
空を飛ぶ事など、常識では考えられない。
ならば、それを行ったのは。
「ドーパントっ!」
同時に俺はベンツを投げたと思われるドーパントを探る。
すると、そこには怪しい影が見えた。
俺はすぐに飛び出し、その影の元へと向かった。
「待てっ!!」
黒い影はこちらの存在に気づいたのか、すぐに逃げ出した。
俺はすぐに追いかけながら、その腰にロストドライバーを巻く。
「待てっお前が爺さんなのかっ!」
そう俺は問いかけるように黒い影に叫ぶ。
やがて、人影が見えない場所まで来ると、振り返る。
「質問に答えよう。我が名は禅空寺義蔵。
大自然からの使者だ」
「本当に、爺さんなのかっ」
俺は思わず、問いかける。
「その通りだ。
影よ、貴様には警告する。
これ以上、我の邪魔をするな」
「邪魔って、なんだよ!
こんな事をして、他の人を巻き込んだらどうするんだ!」
「それも警告を無視した結果だ。
お前は、我が使命を理解できるはずだ」
「っあぁ、理解できるよ。
あんたのやっている事も間違いじゃないかもしれない。
けど!」
俺は同時にナスカメモリを取り出す。
「あんたに、これ以上人殺しをさせない!」
『ナスカ』
「変身!」
俺はそれと共に仮面ライダーへと変身すると共に、手に持ったナスカブレードの刀身を爺さんに向ける。
「仮面ライダーだとっ」
それに爺さんは少なくとも驚きを隠せなかった。
だが、そんな動揺を見逃さず、俺は瞬時に近づく。
ナスカブレードを真っ直ぐと爺さんに向けて、切り裂く。
だが、爺さんの腕から巨大な爪が生える。
「なっ」
驚きを隠せない中で、俺達はそのまま火花を散らす。
そのままナスカブレードと爪による攻防を繰り広げる。
力の差は歴然だった。
こちらは刃渡り10数センチ程度の剣に対して、相手はその倍近い長さを持つ腕を持っているのだ。
この差を覆す事は出来ない。
俺はすぐに後ろに下がるが、それに対して、爺さんはその腕を変化させる。
弾力性に富んだ触手へと変え、それを鞭のように振るってくる。
どうにか避けようとするが、その攻撃速度が速く対応しきれない。
仕方なく防ごうとするも、こちらの攻撃速度よりも早く、次々と体を打たれていく。
そして、一度大きく飛ばされると地面を転がった。
痛みで悶えている間も無く、再び振られるその攻撃をかろうじて避ける事が出来た。
しかし、起き上がろうとする前に、今度は両手が変化を始める。
まるでムカデのような無数の足に変化すると、それで地面を掴みながら移動を開始する。
その姿はまさしく百足のようだ。
しかも、それが高速で動く為、接近する事さえ難しいだろう。
「影よ」
「なんだよ」
「もしも、貴様が我を止めたければ、この地の闇を暴け。
そして、その時には、このZOOをお前に渡そう」
「ZOOっ!」
まさか、爺さんが変身しているのが、俺が探し続けたZのメモリ。
だけど
「なんで、そんな事を」
そんな疑問の声を余所に、爺さんはそのまま消えていった。
「闇を暴け。
結局は、そこに辿り着くのか」
そう言いながら、俺はゆっくりと爺さんが消えた先を見つめる。