煙草。
現代においては、吸う人は少なくなりながらも、未だに根強く愛されている嗜好品である。
その昔は、一日に何箱も消費していた物だが、ここ数年はとんと縁遠くなってしまった。
その理由としては、喫煙所が減り、喫煙者に厳しい世の中になったことや、健康志向の高まりなどがあげられるだろう。
今回、俺が翔太郎さんを通して受けた依頼は、そんな煙草に関係する物だった。
「この会社で次々と奇妙な死亡事件が多発しているのか?」
「そうみたい」
そう言いながら、既にヒサメが受け取っていた資料を見ながら言う。
「被害者は全員、肺が黒く染まっていて、それらは煙草による中毒症状だとか」
今回の仕事の依頼者は、この会社の社長。
まさにブラック企業を絵に描いたような人物であり、この現象のせいで利益が出ない事もあってか、早期解決を依頼してきた。
「だけど、それって、本当に何かの事件か?
ただ単に、その会社がブラック企業過ぎるのが問題じゃないのか?」
既にフィリップさんに調べて貰った限りでも、一人でこなすには無茶どころではないレベルで膨大過ぎる仕事量・サービス残業は当たり前・週休0日も日常茶飯事・有給の使用すら許されない・上司の身勝手極まりない独断で事前予告すらなしに給料カットもされるなど、ブラック企業という言葉では生温いレベルで待遇、労働環境共に劣悪。
そんな状況下において、社員たちの不満が爆発しても不思議は無いように思うのだけれど、どうにもこうにも不思議なことに、これらの事件はただの社員の怠慢が原因というわけでも無かったりする。
「それで言うと、犯人の候補はあまりにも多すぎるだろ。
だって、こんな企業に不満を持たない奴がいない方が可笑しいからな」
「それは、確かにそうかもしれないけどさ」
俺の言葉に対して、ヒサメは困ったような表情を浮かべる。
そうして、少しだけ考える素振りを見せた後、彼女は言葉を続けた。
「でも、どちらにしても、この事件を早く解決しないと、ブラック企業をどうにかする前に人が死んでしまうから」
「まぁ、そうだけどな」
その言葉と共に、俺達はすぐにこの企業に関する情報を調べ始める。そこで分かった事は、ある意味で非常にわかりやすいものだった。
まず、この企業のトップの男は、いわゆるサイコパスであり、自分が気に入らない相手はすぐにクビにする上に、部下に対しても当然のように酷使するタイプらしい。
また、会社側としては、この男が犯罪行為に手を出している可能性についても疑っているようで、警察に相談したこともあるようだが、証拠不十分で捜査を打ち切る結果に終わっている。
しかし、逆に言えば、それ程までにヤバい人物であるにもかかわらず、警察ですら捜査しない程の異常者であるにも関わらず、なぜ会社は存続しているのかと言えば、金を持っているからだ。
そもそも、この男の父親は、この企業の先代の社長であり、つまりは御曹司であったわけなのだが、彼もまたかなりのワンマン野郎だったらしく、自分の父親が死んだ後に跡を継いだ息子は自分の思うようにならない人物は全て切り捨てたそうだ。
そして、現在の社長の代になり、今度は自分に逆らう者を徹底的に排除し始め、現在に至るとのこと。
ちなみにだが、この男自身は全くと言っていいほど悪事を行っていないのである。むしろ、会社の人間の方が酷いことをしているとかいう話だった。
正直言って、ここまで聞く限りじゃあ、もう逮捕なりなんなりされてしかるべきレベルのクズっぷりだと思う。
「それが今回の依頼で明らかになれば、良いけど」
「お前か、この会社に不利益を齎す奴は」
「あぁ?」
聞こえた声。
それと共に振り向くと、そこには先程まで調べていた男がいた。
「何の事でしょうか?」
「既に貴様の事は知っている。
どうやら、俺の会社を潰す気だろうな」
「それが、世のため、人の為だったらな」
「ならば、貴様をここで殺す!」
『バーバリアン!』
同時に男が取り出したのは、メモリだった。
そのまま、男は自分の身体に、そのメモリを突き刺すと、姿が変わる。
筋骨隆々とした原始人を思わせ、左腕は野太い棍棒の様になっているドーパントだった。
「おいおいっマジかよっ」
まさか、目的のドーパントではなかったとはいえ、あの社長が既にメモリを持っていたとはな。
『あのバーバリアンはパワーにかなり優れている。
油断するな』
「分かっているよ」『ナスカ』
同時に、俺もまたナスカメモリを取りだし、そのままロストドライバーに装填する。
「変身!」
その音声と共に、俺は仮面ライダーへと変身する。
「ガアアァァァ!!」
同時にバーバリアン・ドーパントは俺に向かって、その左腕を振り下ろす。
その勢いは凄まじく、俺はすぐに避ける事を選択した。
「いぃ!?」
その選択肢はどうやら、正解だったようだ。
左腕の一撃は、地面を簡単に砕き割った。
ただでさえ、コンクリートの床なのにだ。
下手したらこれって下手すりゃ建物ごと崩壊する。
しかも、この様子だと、力だけでなくスピードもそこそこあるようで、腕を振り下ろして終わったかと思った瞬間には、またこちらに接近してきていた。
「っとぉ!」
接近してくると同時に繰り出される右拳。
それを紙一重で避けつつ、反撃を試みる。
とりあえず、相手の動きさえ見切れば、こっちにも攻撃を当てることは可能だからだ。
そんなわけで、俺の繰り出した拳は見事にドーパントの顔に当たるのだが──
「嘘だろ!?」
全く効いてない! それどころか、逆にダメージを負ったような感覚がある。
どういう理屈なのか分からないが、とにかく威力の高いパンチって感じだろうか?
(だったら、これでどうだ?)
このままではジリ貧だと思い、今度はこちらから攻撃を仕掛けることにする。
まずは手刀による突きだが、それはあっさりと防がれてしまう。
「けど、おかげで、こいつを倒す方法は分かったっ!
ヒサメ!」
「まったく、少し荒いんじゃないの」
「仕方ないだろ。
お前はまだ戦闘慣れしていないんだから」
実際に、俺達があの形態になるには、互いの連携が必要不可欠だ。
Wとなっている翔太郎さんとフィリップさんでも、完全に息のあった動きができるまでかなりの年月が必要だ。
そんな俺達がいきなり2人で1人で戦っても、勝てない。
だからこそ、始めの戦闘は俺が様子見し、必要だったらヒサメと変身する。
それが、基本的な流れになった。
同時にヒサメもまたリバース・ロストドライバーを腰に巻く。
「ズーちゃん、お願いね!」
『ズー』
同時にズーメモリがそのままメモリへと変形させ、そのままリバース・ロストドライバーに装填する。
それと共にリバース・ロストドライバーは俺のロストドライバーと合体し、Wドライバーへと変わる。
『ナスカズー!』
その音声と共に、俺はナスカズーへと変身する。
そして、俺はそのままズーメモリのスイッチを押す。
『ラビット!』
その音声が鳴り響くと同時に、俺の周りにウサギを思わせるアーマーが現れる。
そのまま、俺はアーマーを身に纏うと共に、そのまま真っ直ぐとバーバリアン・ドーパントに向かって行く。
バーバリアン・ドーパントはそのまま腕を振り下ろす。
だが、その攻撃を簡単に避ける事ができる。
「よっと!」
ラビットの能力により、ビルを軽々と飛び越える程の脚力で避け、ウサギ並の聴力でその攻撃を先読みするように避ける事ができる。
それによって、バーバリアン・ドーパントのボディに攻撃を与えていく。
しかし、その攻撃は、まるで金属でも殴っているかのように弾かれる。
それでも、何とか隙を見つけて蹴りも放つ。
何度も、同じ箇所を殴りつけていると、少しずつではあるがダメージが入っているのか、バーバリアンのボディの一部が歪む。
恐らくは、これが弱点なのだろう。
そのまま、蹴り続けても、痛みはまるで何も感じていない様子だった。
「これで決めるぜ!」
『ライノス!』
俺はそのままラビットのアーマーをパージさせると共にライノスのアーマーを身に纏う。
かなりの頑強さと剛力を誇り、頭部の一角が特徴的なアーマーを身に纏う。
「「さぁ、お前のメモリ、頂くぜ!!」」
『ライノス! MAXIMUMDRIVE!』
同時に、その頭部の一角を構えながら、真っ直ぐと高速に、バーバリアン・ドーパントに突っ込む。
それはラビットによる連撃によって、歪んだ箇所に向かって。
そのまま、俺の一撃によって、バーバリアンの体が吹き飛ばされた。
それと同時に、爆発を引き起こし、爆炎が上がる。
そして、吹き飛んだ先にいたのは、バーバリアン・ドーパントはメモリブレイクする。
「ふぅ、さて、とりあえず、こいつを警察にって」
そう俺達が言っていると、バーバリアン・ドーパントに変身していた男の身体に煙りが吸い込まれていた。
「影っ」
「まさかっもぅ本命が来たのかよっ」