『雪絵っ』
イエスタディ・ドーパントの正体が、霧彦の妹である雪絵。
その事を誰よりもショックを受けていたのは、他でもない霧彦だった。
「まさか、こうして兄さんの亡霊と出会う事になるなんてね」
『なぜ、ガイアメモリに手を出したんだ!
お前は、海外で研究を行っていたはず』
「さぁね。
けど、間抜けな兄さんに変わって、ミュージアムの幹部になる。
そう言ったら、どうなの」
『馬鹿な事を言うんじゃないっ』
「馬鹿な事?
自分の奥さんに殺された事が、馬鹿じゃないと言えるの」
そう言った雪絵さんは一瞬、どこか悲痛そうな表情をした。
だが、すぐにそれを隠すように霧彦を馬鹿にするように笑みを浮かぶ。
「私は兄さんとは違う。
この力で、ミュージアムの幹部に成り上がる」
その言葉を最後に、雪絵さんはそのまま姿を消した。
その後を追うとしたが、既にそこには彼女の姿はなかった。
やがて、俺達は鳴海探偵事務所に戻ると共に、そこにいた翔太郎さんと霧彦は同じように悲痛そうな表情で落ち込んでいた。
「まさか、霧彦の妹が敵として出てくるとはな。
ある意味、予想外の敵だったな」
「しかし、ここまで厄介な敵だとは。
これからどうすれば」
『雪絵がっ、間違った道に進んだのは、私のせいだ』
「霧彦」
そう言いながら、霧彦はまるで後悔をするように地面を大きく叩く。
『街の為に。
そう信じて行った結果、街を傷つけ、さらには妹をあそこまでにした。
全て、私がっ私がっ』
そこには、何時ものような霧彦の姿はなかった。
「・・・イエスタディの刻印。
あれに刻まれた彼らはなぜ狙われたんだ?」
「えっ、それって、どういう?」
「もしも、イエスタディ・ドーパントの能力の実験だけかもしれない。
だけど、もしも、何か繋がりがあれば」
「・・・そう言えば、奴らは全員、強引な地上げで有名な社長だ。
だが、それに何が関係が?」
『もしかして。
その地上げを行うとした場所は』
「確か、南地区の保育園だが」
『私と雪絵が通っていた想い出の場所だ』
「それって」
「あぁ」
その場にいた全員が、何か分かったようにすぐに走り出し、向かった。
そこには丁度、園長がおり、彼女から事情を聞く事ができた。
それは強引な地上げによって、立ち退きを迫られていたが、地上げ屋達が昏睡状態になった事で、その話は無くなったらしい。
「手段は決して許してはいけない。
けど、ただイエスタディ・ドーパントの能力の実験と言うには、偶然過ぎる」
「・・・翔太郎さん」
その話を終えた後、しばらく雪絵さんが来る事を考えた俺達はそのまま待つ事にした。
なのだが。
「あぁ、もぅ、ひっつくなぁ!!」
「ちょっと、影!
少しは遊んであげなさいよ」
なぜか俺達が子供達の世話をする事になった。
普段は、こういうのに慣れていない事もあって、俺の身体を遊び場にしてくる奴らが多い。
翔太郎さんはこういう子供の相手が上手い様子が見られ、ヒサメも結構上手くやっているのに、なんで俺だけ。
そう、考えていると、園長が誰か来て、嬉しそうな笑みを浮かべて近づいた。
その人物は、間違いなく、俺達が待っていた人物だった。
しばらく、雪絵さんと園長は話した後、何か思い出したように、そのまま園長先生は保育園の中に入った。
そのタイミングで、俺達はそのまま挨拶しながら、本題から入っていった。
「………イエスタデイで不動産屋を襲ったのは…、ここを護るためだったんだな」
「そうね」
雪絵は無愛想に返事する。
「雪絵さん。やっぱり、過去にこだわってるんだろ?」
「…勝手にそう思うといいわ」
そう、俺の言葉に雪絵はそういって帰ろうとする。
「待てよ」
二人が追おうとすると、
「雪絵ちゃん」
園長がでてきてなにかを渡そうとするも、雪絵は構わずいってしまう。
「これって……」
園長が手に持つ画用紙は、かつて幼い頃に描いた”雪絵と霧彦の絵”だった。
『雪絵は、やはり変わっていなかった。
だけど、なんで』
「まさかっ」
その時、俺は最悪な想像ができた。
それは、俺達の身近にあまりにも多すぎた。
「翔太郎さんっ、雪絵さんを止めるんだ!
あの人がやろうとしている事が分かった!」
「なに?」
「あの人はっ最初から幹部になるつもりはない!
始めから、霧彦のっ仇を取るつもりだったんだ!」
「復讐っくそっ!」
同時に翔太郎さんも理解すると共に走り出す。
だが、すぐに追いつく事ができなかった。
「どこにっ」
『この周辺は、雪絵もよく知っている。
ここは、私達にとっては庭の中でも特に知っている場所だっ』
「風都を知り尽くしているつもりだったけど、ぐっ」
「翔太郎さんっ急がないと」
「あぁ、幾ら何でも危険過ぎるっ」
その言葉と共に、俺達は彼女を助ける為に再び走り始める。