それが、井坂の目的」
「け、ケツ…あ、アル?」
「古代アステカ文明で、蛇の神と崇められた、史上最大の飛行生物」
ホワイトボードには、そのケツァルコアトルスの絵や細かい情報が忠実に描かれている。
「島本凪は、そのメモリの過剰適合者だ。翔太郎、インビジブルメモリの事件を憶えてるだろ?
井坂は過剰適合者である、リリィ白金の身体にメモリを埋め、そのパワーを最大限に増幅しようとした。最後にはメモリを奪い、自分が使用するために」
その事件も、今でも覚えている。
「凪ちゃんも、リリィと同じだってのか?」
「でも、今回違うのは、井坂はまだ彼女にガイアメモリを挿してはいない。その理由は…」
同時に俺達が思い出したのは、あの戦いで井坂が放った一言。
『君の心が恐怖の感情に呑まれれば呑まれるほど、コネクタはより早く成長する』
「コネクタが完成するのを待ってる、ってことか」
「となると、奴らはコネクタ完成の為に、これからも彼女に付き纏って恐怖や絶望を徹底的に……植え付ける気でいるのか」
「それって、凪さんのお父さんみたいに」
「たった、それだけでっ」
メモリの為に、人を殺すだけではなく、親を目の前で殺して、それを恐怖させる事が目的なんて。
「これが、人間のする事なのかっ」
俺のその一言と共に照井さんは鉄柱を殴った。
そして、無言でガレージと事務所からでていく。
「何所いくの?竜君!」
亜樹子は心配になって、照井を追い掛けた。
「だったら、俺達がやるべき事は」
「凪さんの護衛だ」
「あぁ、凪さんの安全の為にも。
そして、もしも、井坂の計画通りになったら」
恐ろしい出来事が待ち受けている。
俺達は凪さんの護衛の為に、彼女が今、いる所に向かった。
ふと、翔太郎さんは近くにいた鳥を見ると、そのまま凪さんに尋ねた。
「猩々朱鷺のヘンリー君。ホントは、マングローブの林のなかなんかで大きな群れをつくる鳥」
凪は分かり易く説明した。
「へ~、やっぱ詳しいんだな」
「お父さん飼育員だったの。だから私も、自然と鳥が好きになった」
「そっか」
翔太郎は短く返事すると、凪のいるコーナーの入口に歩く。
見れば、この周辺には僅かだが、爺さんが残した森に生えていた木々が確かに見えた。
「もしかして、この木々って、近くの」
俺は気になり、聞いてみる。
「えぇ、あの山は本当だったら日本でも生えないような植物がありまして。
お父さんはあそこの土地の所有している人と昔から仲が良く。
その縁で、こうして別けて貰えたんです」
「そうですか」
それは自然に嬉しくなった。
今でも、こうして爺さんの自然が受け継がれている。
だからこそ、凪さんを守らないといけない。
守れなかったあの人の分まで」
「ねえ、あの人、どうして私を守ろうとしたの?」
それと共に、凪さんが思い出したのは、おそらくは照井さんの事だろう。
「彼もまた井坂深紅郎ウェザー・ドーパントによって、家族を殺された」
ヒサメがそういうと、凪さんは「え?」と疑問の声を出す。
「だから、同じ境遇にある貴様を見捨てることができんのだろう」
「そんな、勝手に重ねられても困るよ。もしそれで死んじゃったら」
「奴は死なない。守るべき者がいる限り、男はどこまでも強くなれる」
「それもまた、あの人が遺した言葉か?」
「まあな」
凪は照井から受け取ったアクセサリーを手に持つ。
『お守りだ。とても良く効くぞ』
照井のことを思い出し、凪はアクセサリーを握りしめる。
その時、園内の鳥達が一斉に騒ぎ始めた。
「これは」
「まさかっ」
同時に俺達が見つめた先に立っていたのは井坂だった。
「おはよう。昨日はよく眠れましたか?」
「ふざけんな!」
「こんな所で、何をするつもりだ」
「そうですね。その娘がどんな異形となるかを」
井坂はケツァコアトルスメモリに似た、基盤剥き出しのメモリをとりだす。
「複製した、御試し品ですがね」
【QUETZALCOATLUS】
ガイアウィスパーが鳴ると同時に投げられた複製コピーメモリは近くにいたオウムの身体に挿され、その姿形を大きく変貌させる。
「拙いな」
「逃げろ!」
そういっても時既に遅し。
オウムはケツァコアトルス・ドーパントとしての巨体を誇っていた。
ケツァコアトルス・ドーパントは空へ飛翔すると、一旦低空飛行して凪の身体を足の爪でガッチリ掴みながら飛行する。
「イヤ! 降ろして!!」
「しまった!」
同時に俺はすぐにこの状況を打開する為に動き出す。
「翔太郎さん、ヒサメの事、お願いします!」
「あぁ、行ってこい」
『ナスカ』『ズー』
「「変身!」」
同時に俺達はナスカズーへと変身する。
『バット』
同時に俺はバットの力を宿すと共に、背中に翼を生やし、そのまま真っ直ぐとケツァコアトルス・ドーパントに向かって、飛ぶ。
ケツァコアトルス・ドーパントはすぐにこちらの存在を確認すると同時に、俺に向かって、次々とその翼をこちらに向けて放っていく。
それに対して、俺は片手に装備しているバットソードでその攻撃を切り払いながら、そのままケツァコアトルス・ドーパントに捕らえられている凪さんに近づく。
『ベア』
「はあぁぁぁぁ!!」
同時にバットアーマーをパージさせ、ベアアーマーを装着する。
そのまま、両腕に熊の頭部を模したガントレットでケツァコアトルス・ドーパントを思いっきり殴る。
「きゃああぁぁぁ!!」
それによって、ケツァコアトルス・ドーパントは凪さんから手を離す。
俺達はそのまま彼女を抱えながら、地面へと降りる。
「大丈夫ですか?」
「はいっ」
「すぐに終わらせますから!」
同時に俺はこちらに向かってくるケツァコアトルス・ドーパントに目を向ける。
『ジラフ! MAXIMUMDRIVE!』
それと共に、俺達はジラフアーマーを身に纏う。
キリンの長い首をモチーフにしたパイルバンカーのような武装『ジラフパイル』に電撃を身に纏い、その狙いをケツァコアトルス・ドーパントに向ける。
「今、解放してやるからな!」
俺はそのままその電撃の槍をケツァコアトルス・ドーパントを貫く。
それによって、ドーパントとなっていたオウムを受け止める。
『影、そのオウムは』
「あぁ、無事のようだ。
けど、すぐに動物病院に連れて行かないと」
ドーパントがメモリブレイクされれば、そのほとんどが病院に行かなければならない程の重傷になる。
それが、メモリを使った犯罪者ならばともかく、このオウムは井坂の完全な被害者だ。
「凪さんもっ」
そう俺が言おうとした時、衝撃が襲い掛かる。
それは、井坂の奴だった。
「井坂っ」
「さすがに仮面ライダーの相手をしている場合じゃないのでね。
それでは、また」
その言葉と共に、井坂の姿を消した。
「翔太郎さん」
「悪いっ、ヒサメちゃんが狙われて、守った隙に」
「いいえ、元々っ俺の責任です」
『今はそれよりも島本凪の救出を最優先しよう』
それと共に、俺達はそのままヒサメの元へと向かう。
「ヒサメ、大丈夫か?」
「うん、なんとっ」
そうしていると、ヒサメは目を見開いて驚く。
「どうしたんだ?」
「ないの」
「何がだ?」
「ウェザーメモリがっないの」
「っ」
その言葉に、俺達は驚きを隠せなかった。
「まさか、あの時の衝撃でっ」
「自衛用に持たせていたのが、裏目に出たか。
幸い、あれはベルトがなければ使えない」
「だけど、井坂はあのウェザーメモリをどうするつもりだ」
「先生、これは」
「彼らが持っていた私と同じメモリですよ。
まさか、このような物まであるとはね」
「それをどうするつもりなんですか?」
「私も長年メモリに携わっていたからね。
少し、このメモリに興味がありましてね」
「興味?」
「えぇ、このメモリは仮面ライダー達がドライバー使用を前提に作られています。
その為、毒素は極限まで無くしています。
それは、つまり、私がとある筋で手に入れた物の実験には丁度良いのでね」
その言葉と共に、井坂の近くには外見は全体的に丸みを帯びたドライバーだった。