翔太郎さんに言われ、調べた人物である山城さん。
彼は10年前、組織であるミュージアムに誘拐されていた。
そこで彼は立派な研究施設、潤沢な予算、それらが全て用意された環境に魅入られて、自らの意思で家族を捨てた。
そんな彼がもう1度、家族に会いたいという事で、俺達は依頼を受けた。
だが、俺はそんな事よりも、彼が話したフィリップさんの記憶を消したという話が大きかった。
これまで、記憶が無く、苦しんでいたフィリップさんにとっては、まさに自分自身を知る為の手掛かりだった。
その事で、フィリップさんは動揺を隠せず、一日を寝ずに過ごしていたらしい。
そして、今、フィリップさんの元に来た電話。
それは、園崎若菜から一緒に街から逃げて欲しいという願いだった。
フィリップさんにとって、これまで若菜さんはまさに憧れの人物だった。
同時に何度も会っている内に魅了されている様子もあった。
そんな彼女から、逃げて欲しいという悲痛な叫び。
それを、どうすれば良いのか、フィリップさんは悩んでいた。
「影君からも何か言えないの?」
「俺からは、なんとも。
けど、フィリップさん。
もしかしたらの話で良いですか」
「何かな?」
ふと、俺はとある疑問点を思い出す。
過去に、フィリップさんから聞いた何気ない彼らとの会話。
「フィリップさんと若菜さんって、出会った頃から、結構仲が良かったんですよね」
「あぁ、僕としては、若菜さんの力になりたい」
「けど、若菜姫は園崎家なんだよ」
「えぇ、けど、園崎家には確か、長男がいたはずなんでしたよね。
その弟と一緒にいた時は、なぜか気持ちが落ち着いたとか」
「・・・影、それってもしかして」
翔太郎さんは、ここまでの話の流れで直感なのか、理解したように見つめる。
「えっえっ、どういう事?
話の流れが分からない。
ヒサメちゃん、分かる!?」
「私も分からなくて」
そう、亜樹子所長も、ヒサメも困惑している。
正直に言えば、俺自身もこの話が憶測に過ぎない。
それでも、もしも当たっていれば。
『・・・長男。
確かに僕が婿入りした時に、昔弟がいたって、冴子から聞いた。
その弟の名前は、来人だと』
「っ!?」
同時にフィリップさんが転げ落ちるように驚いた。
「どうしたんだ」
「過去に、アームズの事件の時に僕の事をそう呼んだ女性がいた。
もしも、その言葉を信じるならば」
「フィリップは園崎家の長男」
それは、ある意味恐ろしい事実だった。
これまで戦ってきた組織の中心にいる存在。
その園崎の家系がいる事に。
何よりも動揺が隠せないのは、フィリップさん自身だった。
「それじゃ、若菜さんは、僕の姉さん」
「本当の家族なの。
だとしても、このまま」
亜樹子所長はそれまでの話を聴き、頭を混乱していた。
いや、むしろこの場にいる全員が同じだろう。
「・・・フィリップさんは、若菜さんに対して、どう思います」
「・・・彼女は本当は優しい人だと思う。
あの時、電話越しで助けを求めた声も嘘ではなかった。
だから、僕は」
それは、ある意味、翔太郎さんとフィリップさんの、仮面ライダーを終わりを意味している。
それを聞いて、俺は少し寂しい思いをする。
けど
「家族はいなくなったら、きっと後悔します。
誰よりも大切な家族ならば尚更」
「俺も、家族はもういない。
だから、フィリップ、お前が後悔しない事に、俺は何も言わない」
「影、翔太郎」
この別れは、俺はむしろ良いかもしれない。
力を求めての別れではない。
フィリップさんはフィリップさんの新しい戦いの為に、向かう。
「任せてください。
この鳴海探偵事務所の仮面ライダーは俺がいますから」
「影は調子に乗りすぎ。
だけど、フィリップさんに心配かけないように私達も頑張りますから」
「私は、正直今でもまだ反対だけど、フィリップ君が本当に望むならば」
そう、俺達はフィリップさんの背中を押すように進める。
「皆っ、ありがとう。
僕にはっ背中を押してくれる家族がいる。
だからこそ、僕は行くよ」
それが、フィリップさんの決意でもあった。