フィリップさんが、若菜さんの所へと向かった同時刻。
照井さんから突然の連絡を受けた。
それは、今回の事件で最も大きな関係者である山城博士が、ミュージアムからの刺客に襲われたという報告だった。
俺達はすぐに、山城さんがその際に逃げ出したという情報を聞いた。
「ねぇ、影。
今、どこに向かっているの?」
「もしも、この混乱に乗じて、逃げるとしたら、あの人の目的は一つしかないだろ」
そう言いながら、俺は手元にある情報を元にとある場所に辿り着く。
そこは住宅街の一つである一軒家。
そこには確かに山城という名前があった。
それと共に、見えたのは、その家の前で隠れている山城博士の姿だった。
だが、その背後にいる存在に気づいていない様子だった。
俺はすぐに懐にあるカメレオポインターを取りだし、そいつに向けて、ワイヤーを放つ。
放たれたワイヤーによって、その動きを妨害する。
同時にそのままワイヤーを無理矢理引き寄せ、そのまま蹴り上げる。
それによって、家に入るタイミングの彼らには見えなかった。
「今のは」
「博士、さっさと逃げろ」
「君は」
「あんたがここにいると、家族にも被害が出る。
それは、分かっているだろ」
俺の一言に対して、山城博士は少し考えたが、同時に頷いた。
それとタイミングを合わせるように、照井さんが既にアクセルに変身している状態で、駆けつけた。
そこには別の刺客だと思われる人物と戦っている最中だった。
「影、山城は」
「ヒサメが避難させています。
あとは」
「市民がいない場所まで行くぞ」
『ナスカ』
俺は同時にナスカメモリを取りだし、ロストドライバーに装填する。
「変身!」
『ナスカ』
同時に俺は仮面ライダーナスカへと変身する。
それに合わせるように、照井さんもまたドライバーを持って、そのままバイクモードになると同時に、俺を背中に乗せる。
そして、俺の首元にあるマフラーを伸ばし、二人の刺客を拘束すると共に、走り出した。
走り出して、辿り着いた森の中に入ると共に、俺達はそのまま構える。
「邪魔」「ここで潰す」
『ホッパー』『スカラベ』
その音声と共に、目の前にいる二人はそのままホッパードーパントとスカラベドーパントへと変わる。
それに合わせて、俺も照井さんも同時に構える。
前回の戦いで、既にホッパードーパントの能力を知っていた。
しかし、そのスカラベドーパントとのコンビネーションは俺達の想像を遙かに超えていた。
「これはっ」
そう言いながら、俺と照井さんは背中合わせにしながら、睨み付ける。
スカラベ・ドーパントによって作り出された巨大な土の塊。
それが、俺達の周りを囲みながら、縦横無尽に走り抜ける。
少しでもタイミングを間違えれば、その土の塊に押し潰される。
だが、ホッパードーパントは、まるでその位置が分かるように、その土の塊を足場に、次々と俺達に攻撃を仕掛ける。
攻撃と防御において、これ程厄介な組み合わせに、苦戦を強いられている。
「何か、攻略は」
「ズーになれれば、なんとかできると思いますが」
そう俺が言うと共に、タイミング良く、ドライバーが現れる。
「それで、作戦は」
「正面突破ですね。
協力してくれますか?」
「何をするつもりか分からないが、良いだろ」
『ナスカズー』
同時に俺達はナスカズーへと変身する。
そして、そのままズーメモリからあるアーマーを選択する。
『ゴート』
鳴り響く音声と共に、黄土のアーマーのゴートアーマーを身に纏う。
「照井さん、俺の脚を掴んでください」
「んっ、そういう事か!」
同時に俺の言葉を察した照井さんはその姿を再びバイクモードへと変わる。
それに合わせて、俺は照井さんの肩に重ねるように脚を置く。
「何それ?」
ホッパードーパントの変身者は何やら、疑問に思っているようだが、それはすぐに分かるだろう。
照井さんは、そのままアクセルドライバーのパワースロットルを捻る。
それによって、一気に加速する。
本来ならば、ゴートアーマーだけでも強烈な衝撃波を与える事ができる。
それが、アクセルの加速が合わさる事によって、その破壊力は
「なっ、正面からっきゃぁ!!」
簡単に土の塊を砕く事ができる。
砕かれ、地面に落ちるホッパードーパントと、その後ろにいたスカラベ・ドーパント。
「影、ヒサメ、合わせろ!!」
「あぁ!」「分かりました!」
『ゴート!MAXIMUMDRIVE!』『アクセル!MAXIMUMDRIVE!』
合わさる二つの音声と共に、俺達は真っ直ぐと倒れている2体のドーパントに向かって突っ込む。
加速し、驚異的な破壊力を誇るその一撃は、容易く2体のドーパントを撃破した。
同時にメモリを破壊された事を確認すると共に、そのまま俺達はそのまま、二人を見る。
既にメモリブレイクされており、メモリはバラバラになっていた。
しかし、変身者だと思われる刺客はその場から跳び上がる。
「待てっ」
俺はすぐに向かおうとした。
だが、同時に現れた謎のドーパントによって、斬り裂かれ、消滅してしまった。
まるで、自分から消されるような動きで。
「口封じかっ」
照井さんはそのまま、構えようとしたが、既にそのドーパントは姿を消した。
一連のあまりの動きに俺達は何もする事ができなかった。
それを思い知るのは、それからすぐ後の出来事だった。
『結果的に言えば、フィリップさんは事務所に残っていた。
若菜さんと共に街を出て行くはずだったが、彼女は直前でミュージアムのボスだと思われる存在に攫われてしまった。
すぐに、フィリップさんも助けようと動いたが、取り囲むドーパント達によって、道を塞がれてしまう。
必死に助けようとし、フィリップさんに手を伸ばす若菜さん。
だが、その手は届く事はなかった。
そして、検索する彼の元に届いた若菜さんからの電話。
無事だと喜んだのも束の間。
それは、彼女が本格的にミュージアムで働く宣言だった。
彼女の身に何が起きたのか、それは俺達は分からなかった。
しかし、その時は確かに恐怖していた若菜さんをそこまで変えてしまった何かが
ミュージアムにはおそらくはあるだろう。
それは家族を捨てた山城さんも同じである。
彼は家族とは会う事はなかった。
いや、自分から会えないと思ったのだろう。
ミュージアムの刺客が、自分と関わったせいで犠牲になってしまう。
その恐怖で、彼はこの街から去る事にした。
彼と家族が再会するかどうか、それは俺達が決める事ではない。
ただ、今回の事件に鍵って言えば。
ドーパントを倒しても解決したとは言えず、誰もが不幸となったとしか言えない。
そんな事件であった事で、俺達の胸には深く刻み込まれた。』