衝撃の真実を知ったフィリップさん。
あれから、鳴海探偵事務所の雰囲気は、かなり悪かった。
言いたい事を溜め込む様子は、俺達にも伝わり、少し気まずい様子だった。
そんな時、俺達の元に訪れたのは、奇妙な依頼だった。
俺たちは依頼人・虹村あいの勤めるシネコンに行った。
映画館「CINEMA T-ジョイ風都」
そこが、俺達の今回の依頼された場所である。
その中で、あいさんそっくりな女の子が出てくる映画がかかる。
一度始まったら、終わるまで出られないらしいの。
だからこそ、俺達はその依頼の為に調査しようとするが。
「許可できません」
映画館のマネージャーはきっぱりと調査を拒否する。
「いいじゃないですか、調査ぐらい」
「他のお客様へのご迷惑ですから。お引取りください」
そう言い、映画館のマネージャーは一切通さない様子。
「だぁーうわっっ!?」
するとこちらでは、一人の青年が数多くのダンボール箱を落してしまった。
「あーもう先輩。パンフ運ぶ時は誰かに声かけてって言いましたよね」
「………」
「また黙り?信じらんない」
後輩にすらうだつが上がらない。
「川相君!」
「っ、虹村さん!」
そこへ来た依頼人・虹村が川相に近寄る。
「私も運んであげるから。さっ立って!」
「………」
その様子と共に、亜樹子所長は何やら興味を示した様子は、興味津々だった。
「君、あいさんの同僚?アワアワしちゃって、大丈夫?」
手でハート型をつくったりしておちょくる亜樹子。
川相はスケッチブックにマジックペンでこう書く。
――問題ない――
「ってどんだけ人見知りやねんあんた!?しかも字小っさ!」
「なるほど、分かるぜ。
他人とは目を合わせられないからな」
「影は、学校では陰キャだからね」
「ぐはぁ!」
それは俺にもダメージを受けた。
俺、結構依頼で色んな人と話したつもりだけどな。
それと共に、向こうの川相さんと目が合う。
なんだか、同じ波長を感じた気がした。
同時に無言のまま近づき、握手をした。
「これは、一体」
「陰キャ同士のシンパシー」
何を言っているのか分からないがとりあえずは何も言わない。
その後、川合さんはそのまま仕事へと戻っていった。
「頑張ってください。
さて、どうすか」
そう俺が悩んでいた。
「ねぇねぇ、影君ならば、こういう場合の潜入とか、簡単に行えるよねぇ」
「まぁ余裕ッス。
怪盗ならば、これぐらい楽勝ですから」
「影、そういう事で技術を使わない。
亜樹子所長も!」
「「はっはい」」
ヒサメからの注意を受け、俺と亜樹子所長は思わず返事してしまった。
だけど、本格的にどうすれば。
「おい、亜樹子、オイ!」
「ん?」
翔太朗が興奮気味に亜樹子を呼ぶ。
その理由は、
「見てぇ、風の左平次MOVIE…それも3Dだと!!亜樹子、これ見よう、コレ」
それは、丁度、翔太郎さんが嵌まっている時代劇の映画だ。
「こんな時に何を言っているんだ」
そう、亜樹子所長の天下のスリッパによる突っ込みが入る。
だけど、これは。
「良いかもしれない」
俺は思わず、笑みを浮かべる。
「どういう事?」
「あのマネージャーは映画を見れば、問題ないと言っていた。
だったら、映画を見れば良いんですよ!」
「けど、問題の劇場はどこに」
「左平次3D…!飛び出して来い、左平次・GO!!…ん、おい亜樹子。これどう見ても3Dじゃねーよな?」
「確かに、画面がセピアで一世代前レベルの映画だな」
上映されている映画はどう見ても時代劇とは程遠く、画面には黒マントを羽織った女性が映っている。
「これよ!これが謎の映画よ!」
「まさか、偶然、この映画に」
「ジェシカの彷徨と恍惚:傷だらけの乙女は何故西へ行ったのか:漂流編。……タイトル長ッ」
それに、翔太郎は思わず叫んでしまう。
「どこへ行く?ジェシカ」
「どこへ行く…?」
「彼方へ。私の道を……切り拓く」
カカシと天使に尋ねられ、答えるジェシカの姿。
「独り善がりなムードだ。駄作のオーラが出まくってるぜ。じゃあな」
「始まり方はあれだけど。
まだ、情報はないけど」
そう言いながら、俺はそのまま映画の内容を見ていく。
「もう7時間と19分だ。こりゃ拷問だぜ」
そうして、映画を見ていくと共に、翔太郎さんは呟く。
確かに7時間なんて、映画制作上かなり掟破りな気がする。
どんなに長くても3・4時間以内に纏めなければ、客が飽きるであろう。
「でも結構惹き込まれるところはあるよ」
「あぁ、制作者の拘りという感じだな。
よく、ディレクターズカット版みたいな感じ。
けど、なんというか寂しい感じもするな」
そう、俺は思わず呟いていく。
すると、ジェシカが崖の上で赤い弾を大きく光り輝かせる場面になり、一筋の光が真っ直ぐ伸びていく。
「お、遂にきたかクライマックス!」
――未完――
俺達はコケた。
「…こんなに長いのに未完かよ」
「アッタマ来た・・・!おい!責任者でてこい!」
『ッ!』
翔太朗の叫びに客席の陰に隠れていた異形がビクっとした。
「テメーか。このクズ映画を作ったのは」
「で、出たー!ドーパント!!」
特徴という特徴は白くて大きくて簡素な頭くらいしかないドーパントは立ち上がり、塞がっている出口の前にジャンプしたというか飛び降りた。
『あイッテテ!』
腰を打って情けない声を出していたが。
ドーパントは右腕と同化しているミキサーを壁に押し当てると、壁はどんどん形を変え、観葉植物となって逃げた。
「あれは、まさか」
そうしながら、俺達もすぐに飛び出した。
外に飛び出せば、既にドーパントの姿はない。
周りを見ても、その姿は確認できない。
すると、翔太郎さんから電話があった。
「翔太郎さん!」
「影、ドーパントの正体はジーンだ。
奴は遺伝子操作に長けた特殊能力を持ち、コイル状の右手で有機物の遺伝子を組み換え別の物体に変化させてしまう」
「なるほど、つまり、さっきの映画は」
それと共に俺は納得すると同時に、周りを見る。
その中では明らかに先程まで運動していたと思われるマネージャーがいた。
だが、俺の視線の先にはもう1人のマネージャーがいた。
という事は。
「変装するならば、もう少し、バレない方が良いぜ」
俺はそう、偽物のマネージャーに話しかけた。
それに驚いたマネージャー、いや、ジーン・ドーパントはすぐに飛び出していった。
同時にジーンは逃げ惑う人々をよそに、ポップコーンの入った器になにかを入れて遺伝子操作を行い、大量のマキビシを地面に投げた。
「うわっと、結構面倒だな!」
そうしながら、俺達が辿り着いたのは屋上だった。
だが、その戦いははっきり言えば、すぐに終わった。
屋上にて、翔太郎さんはジーン・ドーパントを圧倒する。
ジーンは他のドーパントにはない稀有な能力を有するが、代わりに白兵戦能力はマスカレイド・ドーパント並でしかなかった。
そうして、翔太郎さんはジーンドーパントを尻を引っぱたくと、メモリが自動的に排出された。
ジーン・ドーパントの正体、川相さんはジーンメモリを回収しようとするも、亜樹子所長によって取り上げられた。
「君だったのね犯人は。没収!!」
「か、返せ・・・!」
「そんな、川相くんが・・・怪物?」
ジーン・ドーパントの正体を目の当たりにした虹村さんもショックを隠せない。
「上映館のナンバーをすり替えて、使われていない試写室に誘いこみ、出口を塞いで自分の自主制作映画を見せていたんだな」
「ある意味、才能かもしれない」
「それじゃあ、映画のあいさんは・・・」
『そう。彼が自分を組み替えて演じてたのさ』
「えぇー!?それじゃあの映画・・・監督も撮影も主演女優も・・・全部君一人ってこと?」
「どういうこと川相くん?」
聞かれた川相も、小さな声で間をもたせられるかどうかすらも怪しい台詞を吐くので精一杯だ。
「引っ込み思案にも程があるよ!!そんなの、あいさん本人に頼めばよかったじゃん!」
「まあ取りあえず、後は照井の仕事だ」
『そうだね。メモリに心を奪われた人間には、もうなにを言っても無駄だ』
Wは川相を立たせた。
というよりも、フィリップさんは、どこか寂しそうだった。
だからこそ、かもしれない。
「待って、私に考えがあるの。だから警察につれていくのは待って!」
亜樹子所長が提案したのは。