その日、俺達は照井さんのお土産である饅頭の味を堪能していた。
夏限定という事で、物珍しさもあったが、その風味を堪能していた。
いや、どちらかと言うとヒサメが凄い量の饅頭を食べているのだが、それを気にしている場合じゃないか。
だが、そんな俺達の静かなおやつを打ち破るように、入って来たのは2人の女性だった。
入って来た1人はそのままこの事務所の人だと思ったのか、照井さんに近づくと。
「お願いです! みゆを! みゆを助けて下さい!」
「いや、この事務所の責任者は俺ですけど」
そう翔太郎さんが前に出てくるが、そんな翔太郎さんを突き飛ばし、代わりに亜樹子所長が前に出る。
「みゆさんというのは」
「私の娘なんですけど。
私のただ一つの宝物なんですけど
そう、心配そうにしていると、彼女の後ろにいるご老人が泣いている。
それに気づいた翔太郎さんはそのままご老人に近づいた。
「おぉっとお婆ちゃん。
お孫さんが心配なんですね」
そう言ったが。
「私、お婆ちゃんじゃないもんっ!」
そう、翔太郎さんを突き飛ばしたご老人はそのまま依頼人に抱きついた。
「ママ、帰ろうよ」
そう、ご老人はまるで子供が親に甘えるように抱き締める。
それに対して、彼女は拒否する事なく抱き締めた。
「ママ?」
そうフィリップさんも、その言葉に驚きを隠せなかった。
「娘のみゆです」
そう、そのご老人こそ、助けて欲しいと言っていた娘のみゆちゃんなのか。
それには、事務所にいる全員が驚きの声しか出せなかった。
「みゆは今年で10歳です。
それが、たった一晩でお婆ちゃんに」
それは、俺達は驚きを隠せなかった。
これまで、多くのメモリの事件に関わってきたが、まさかここまで人間の身体を変える事ができるメモリがあるなんて。
『そんな、まさか。
これ程の能力があるメモリなど』
すると、霧彦は何か驚いた様子で見つめていた。
その様子を見た翔太郎さん達も情報があると睨み、俺とフィリップさんはそのまま離れた。
この場にいる依頼人親子の対応を任せ、すぐに他に人が来ない場所へと来る。
「何か、心当たりがあるのか、霧彦」
『心当たりと言ったら良いのか分からないが、人体をここまで影響を持つメモリは私は知らない。
だが』
「だが?」
『ここまで影響のあるメモリと似たメモリは知っている』
「それは一体」
『テラー。
ミュージアムのボスである園咲琉兵衛が持つメモリだ』
「ミュージアムのボスと同じメモリっ」
それには、俺もフィリップさんも驚きを隠せなかった。
「という事は、まさか組織に関係して」
『それはない。
メモリのデータを得る為とはいえ、そこまで強力なメモリを商品にするのは考えられない。
ましてやミュージアムに所属していたとして、なぜわざわざ子供を狙うような奴に』
そう、霧彦は未だに泣いているゆのちゃんに心配そうに見る。
「とにかく、この現象が起こせるメモリに関係しているのは間違いない」
それと共に、丁度、話が終わった翔太郎さんがこちらに来る。
「フィリップ、何か分かったか?」
「僅かな情報だけだ。
霧彦も、商品としての心当たりはないそうだ」
「どういう事だ。
組織が関わっていない可能性があるという事なのか?
とにかく、探りを入れないといけない。
影、一緒に来れるか」
そう翔太郎さんは俺に尋ねてくる。
「勿論です」
同時に俺もまた頷き、そして事務所を出た。
俺達が向かった先は、馴染みのある情報屋であるウォッチマンの所だ。
「たぶん、それは老けさせ屋だね」
「老けさせ屋?」
それに俺と翔太郎さんは首を傾げる。
「巷の噂じゃ、老けさせ屋って言う占い師に恨んでいる相手の名前を言うと、翌日には老けさせるらしいよ」
その言葉と共に見せた画面には、若いホストを思わせる格好をしたご老人だった。
おそらくは、老けさせ屋によって、老けさせられた被害者だろ。
「それで、その老けさせ屋はどこに行けば会えるんだ」
「それは、分からない」
「分からないのか」
そう、俺達が肩を落とす。
「だけど、見分ける方法はある」
「おぉ」
ウォッチマンの一言に俺達はそのまま頷く。
「老人は海をなんて言う? らまる」
ウォッチマンはそのまま合い言葉を高々に言う。
「「らまる?」」
それに対して、俺と翔太郎さんは首を傾げながら言う。
「とりあえず、これで探すしかないな。
影、ここからは別々で探していくぞ。
風都の占い師を片っ端から探していくぞ」
それと共に翔太郎さんはバイクに乗り込む。
「分かりました」
俺はそれに答えて、その場を離れた。
それからしばらく経った後、俺は一つの占い店を見つけた。
看板には「占い館・フォーチュン」と書かれている。
「ここかな」
そう思いつつ、中に入るとそこはいかにも占いをしている部屋といった感じの場所であった。
しかし、そこには誰もおらず、机の上に水晶玉が置かれていた。
「あれ、間違えたか?」
そう思っていると背後にある扉が開く音が聞こえてきた。
「あら、いらっしゃいましたわね」
「あなたは……」
そこに現れたのは白髪の女性であり、どこかのお嬢様のような雰囲気を持つ女性だった。
「申し遅れました。私の名前は桐原麗子と言います」
「えっと、どうしてここに来たんですか?」
その問い掛けに対して彼女は微笑みを浮かべる。
とりあえず、あの合い言葉で聞いてみようか。
「あの老人は海をなんて言う?」
そう、俺はゆっくりと問いかける。
「はて、なんでしょうか、それは」
そう、俺の言葉に対して、彼女は不思議そうな表情をする。
「いえ、なんでもありません。
それよりも占ってほしい事があるのですけどいいですか?」
俺はすぐに誤魔化すと彼女に質問する。
「構いませんよ。
ただ、少しだけ待っていてください」
そう言って、彼女は奥の部屋へと入っていく。
外れだと思い、俺は次の占い屋へと行こうと思った時だった。
『リベンジ』
「っ!」
鳴り響いたガイアメモリ特有の音が聞こえると同時に、俺は後ろに倒れるようにその腰にロストドライバーを巻き、ナスカメモリを取り出す。
「変身っ!」
その音声と共に、俺は仮面ライダーナスカへと変身し、その手にナスカブレードを手に後ろへと下がる。
同時に俺が先程までいた机は潰れており、身体にはシンプルな装甲を身に纏ったドーパントがいた。
「まさか、ドーパントとは」
「ここまですぐに気づくとは。
さすがにここまで長い間、組織と渡り合った仮面ライダーだけありますね」
その口調から、先程の桐原さんで間違いないだろう。
「まさか、組織からの刺客か」
「そのナスカメモリはゴールドメモリですからね。
奪取が、我々の仕事ですから」
なるほど、これまで依頼とは関係ない組織からの刺客はナスカメモリを狙って来た訳か。
だとしたら、余計に渡す訳にはいかない。
俺はナスカブレードをゆっくりと構えながら、目の前にいるドーパントの特徴を探るように、そのメモリの能力も分からない。
だからこそ、俺はそのまま真っ直ぐとナスカブレードを真っ直ぐと斬りかかる。
その攻撃に対して、腕で僅かに軌道をずらし、避けたドーパントは拳を放つ。
それを受け止めると、力比べになる前に蹴りを放ち距離を取る。
「ぐっ」
俺はそれと共にダメージを感じる。
それは先程のドーパントから防御した拳による物だけではなく、僅かに腕に斬れたような痛み。
そして、腹部にある痛み。
それらは先程まで俺が放った攻撃と同じ箇所だ。
「おいおい、まさか」
「えぇ、その通りです。
私がが受けたダメージを攻撃してきた者にも与える事ができます」
「それって、つまり」
俺が与えたダメージをそのまま俺に返ってくる。
攻撃をすればする程、こちらがダメージを受けてしまい、もしも必殺技で倒す事ができなければ、こっちの負けとなる。
厄介な能力を持っている。
だが、それでもやる事に変わりはない。
「行くぞ」
「どうぞ、来てください」
そうして、再び攻撃を仕掛ける為に走り出す。
それに対してドーパントもまた同じように向かってくる。
互いの攻撃が届く範囲に入ると。
「よっと」
「なに?」
俺はその攻撃から避けるように、奥の部屋に行く。
同時にそのまま俺は占い館から逃げる。
さすがにこのまま戦えれば、危険だ。
ならば、情報を揃えてから対応する。
そんな事を考えていると、ドーパントは追いかけてくる様子はなく、ただ立ち尽くしていた。
「ふぅー」
とりあえず、逃げ切った事で一息つく。
しかし、これからどうするか。
そう考えていると、亜樹子所長から電話が来た。
「はい、もしもし」
「あっ影君!
大変だよ!
翔太郎君が、お爺ちゃんになっちゃった!!」
電話の先にいるだろう亜樹子所長の慌てた声と共に、聞いた内容。
それは驚きを隠せない内容であった。