フィリップは若菜姫を助けて、その魂を天へと昇った。
影は、ヒサメちゃんを助ける為に、その身を犠牲に旅だった。
お前達がいなくなってから、ようやく風都タワーも再建された。
だけど、俺はお前達に会わせる顔はない。
若菜姫は、あの事件をきっかけで、まさかあんな事になるとは思わなかった。
そして、ヒサメちゃんは、あれから未だに罪の意識を引きずっている。
彼女自身が悪い訳ではない。
しかし、その事を、彼女自身が許さなかった。
「本当、奇妙なもんだよな。
フィリップも、影も」
あの戦いの後、俺がヒサメちゃんを迎えに行った時、彼女は気絶した。
戦いに疲れたのか、それとも泣き疲れたのか。
分かった事は、彼女の周りにある血の量。
彼女自身の傷から出た物ではないと考えたら、それは確実に致命傷だという事は、俺でも簡単に分かった。
「家に、用か?」
そんな日常が続く中でも、未だに事件は続く。
「青山晶君、12歳。
姉の青山唯の行方を捜して欲しいのね」
「はい、あの」
そう、依頼人である晶は、すぐに俺の後ろにいるヒサメちゃんに目を向ける。
「彼女は?」
「あぁ、俺達の事務所の一人だ。
気にしないでくれ」
「そう、ですか」
そう言いながらも、晶が気になるのは、無理はない。
今のヒサメちゃんは、未だに心の傷が癒えていない。
その身体には、影が愛用していたフードを着ており、夏にも関わらず、深々と被っている。
そして、フードの隙間からはみ出ている髪は、既にボサボサで手入れもされていない。
それでも、ここまで回復するのに1年はかかった。
1年前、それこそ、彼女は自分から死のうとしていた。
それぐらいに精神的に壊れていた。
しかし、そんな彼女を支えたのは、影の形見であるナスカメモリだ。
「それじゃ、俺達は調査を行う。
ヒサメちゃんは、その組織で怪しい所がないか、探ってくれ」
「・・・分かりました」
そう、ふらふらとしながら、立ち上がり、事務所から出て行った。
その様子は、まるで幽霊を思わせる動きであった。
「大丈夫なんですか、彼女は?」
「心配するな。
あれでも、腕は確かなんだから」
元々、財団が兵士にする為に鍛えている為か、常人以上の身体能力を誇り、影と共に活動してきた事もあって、怪盗としての技術は未だに残っている。
だが、例え、そんな力があったとしても、彼女自身の心は未だに癒えない。
このままでは、駄目だと分かっている。
だけど。
「それでもな」
彼女の気持ちに、俺は自分のように分かってしまう。
本当に、もう一人の自分のような存在。
それがいなくなった事に。
「お前の力が欲しいよ、フィリップ」
それは、どこかの場所。
既に廃棄されたと思われる場所。
そこには一つのベット。
その上には死体があった。
死体は、今はもう動かなかった。
しかし、ゆっくりと、何かが注ぎ込まれていた。
そして、それを調整するように機械の目は観察していた。
既に1年。
同時に、死体の髪の一部は赤く染まる。