「さて、と........」
赤髪海賊団との別れを終え、島にある大きめの町に着いた俺は一度大きく深呼吸する。目の前には当然ながら見知らぬ光景と、名前どころか顔も知らない人々の往来。既にぼっち特有の帰りたいオーラが出ているが、そんな泣き言を言っている暇は無い。ここから俺の異世界での一人旅が始まるのだから。
(とりあえず最初は宿探しから。ついでに歩きながら教わった知識を整理しよう)
船でシャンクスさん達から聞いた話では、この世界は“
俺の居る“東の海”は別名“最弱の海”と呼ばれている。理由は目立って高い賞金首がほとんど居ないから。まあ、俺にとっては賞金がかかってようがあるまいが、海賊は脅威でしかないのだが。
(とにかく慎重に動かないとな........争いごとダメ、絶対)
安全かつ平和な生活を送るうえでまず大切なのは、しっかりとした寝床を確保すること。俺がそこら辺で野宿なんかしてみろ。悪い輩に何されるか分かったもんじゃない。
幸いお金はシャンクスさんにもらった小袋がある。さっき中を覗いてみたらざっと数百万ベリー(この世界の通貨。これもシャンクスさんに教えてもらった)くらい入っていたので、しばらくは金に困ることはなさそうだ。些か多すぎて卒倒しそうになったが。
それから数十分街を練り歩き、大体の街の造りを頭に入れながら手頃な宿を発見。早めにチェックインした俺は、荷物を置いて少しだけ休憩してから、情報を得るために再び街へと繰り出すことにした。
(情報集めとは言っても異世界に帰る方法なんてそうそう見つかるわけないし。ダメでもともと、過度な期待はしない方がいいな)
海で何年も冒険しているシャンクスさんですらまったく知らなかったんだ。小さな街一つで手に入れば苦労は無い。正直何日、何ヶ月........いや何年かかるかも分からない。
それでも自分で選んだ道だ。簡単に諦められないし、そんなんじゃ送り出してくれた赤髪海賊団の皆にも顔向けできない。ゆっくりでもいいから何としても探し出してみせる。
そんなことを考えていると、ぐぅとお腹の鳴る音。そういえば昼飯がまだだったかと思い出し、我ながら締まらない腹の虫だと苦笑する。
「すみません、リンゴ三つ」
とりあえず腹ごしらえということで、近くにあった果物屋でリンゴを三つほど購入。噛まずに注文できたのはもはや奇跡である。フーシャ村で色んな人と話した賜物かもしれん。
(さてさて、何事もなくいけばいいがなあ..........)
そんな大きな不安を抱えながら、買ったリンゴを一つずつ食べる。そのせいだろうか。買ったリンゴの中に、おどろおどろしい模様の描かれた果実が入っていたのに気づかなかったのは。