「着いたよ!あれが私の故郷!」
ひょんなことからナミの故郷へと共に航海することになったのだが、正直言って彼女の航海士としての才能は素晴らしかった。だっていきなり“風が変わった。雨が降る”って言い出したかと思ったら、その数分後には本当に雨が降ってくるんだぞ?俺なんか風が変わったことすら分かってないってのに。ここまでくると天候を読んでるんじゃなくて操ってるんじゃないか、なんて思えてくる。
そんな彼女のおかげで航海中は安全で快適。ついでに暇な時には航行術の基礎などを叩き込んでもらった。既に小学生くらいの子に頭が上がらない俺であった。
彼女と出会った島を出航して数日、目前に見えた一つの島を指差して声を上げるナミ。どうやらあの島が彼女の故郷であり今回の目的地らしい。ゆっくりと島の海岸に船をつけ、久方ぶりの陸地の感触を踏みしめる。
「........それじゃあ私はアーロンパークの方に戻らないとだから」
アーロンパークーーーーーきっとそれが彼女を蝕む魚人海賊団の根城なのだろう。沈み込む彼女の顔に胸が痛むが、なんの力もない俺にはできることはない。
「.........ねえ。私達、また何処かで会えるかな........?」
縋るような少女の問いかけに言葉を詰まらせる。ここで『会える』というのは簡単だ。しかし、その言葉には当然責任が伴う。身勝手な約束をして、それが叶わなかった時の彼女の落胆はどれほどのものか。
「........じゃあ、私行くね」
悲しげに微笑んだナミに、俺の首は重く縦には振れなかった。
***
「ここか.........」
ナミと別れた海岸からしばらく歩いた俺は一つの集落に辿り着く。おそらくここがナミの故郷、ココヤシ村で間違いない。やけに閑散とした村は人がいるのかすら定かではない。
おそらく魚人を恐れてこうなっているのだろうが、ここまで人っ子一人居ないとどうすればいいか分からない。片っ端から家を訪ねれば良いのだろうか。残念ながらぼっちにそんな甲斐性はない。
村の中を徘徊すること十数分。このまま歩いてるとゾンビが村をさまよう怪しい構図ができあがってしまうな、なんて考えながら進んでいるといつの間にか村の外れまで来てしまった。
「こんなとこにも民家が?」
村の外れにポツンと建つ一軒家。決して大きくはないものの何とも立派な家だ。何より目を引くのは庭いっぱいに広がるみかん畑。綺麗に整備されているのを見る限り人の手が加えられてるのは間違いない。ということは、この家にも誰か住んでいるということなのだろうか。
「ベルメールさんのみかん畑に触るな!!」
美味しそうに育ったみかんについ距離が近くなる俺の耳に聞こえる声。その方向に目を向ければ、こちらを睨む一人の少女。この家の住人だろうか。険悪な形相で睨みつけてくる少女に慌てて弁解しようとする。
「不審者め!みかん畑から出ていけ!」
しかし、残念ながら俺の弁解は間に合わず物干し竿くらいの長さの棒で思いっきり頭を殴られる。薄れゆく意識の中で視認したのは、仁王立ちでこちらを見下ろす少女の鋭い目つきだった。