八幡、海賊船に乗る
さてさて、とりあえず状況を整理しよう。確か俺は学校からの帰り道でトラックにはねられて多分だけど死んだと思ってた。にもかかわらず運良く目が覚めて、そしたら海の上で海賊船に乗っていたと..........
うん、駄目だな。反復したらしたで余計に状況が理解できん。
「おい」
「ひゃいっ!?」
思考に耽ける俺を戻したのは、俺を覗き込んでいた麦わら帽子を被った男性。いきなり話しかけられたせいで持ち前のコミュ障を発揮して盛大に噛んでしまう。死にたい.........
「そんなにビビらなくてもいいだろう。別にとって食おうってわけじゃないんだから」
俺の反応に苦笑する麦わら帽子の人だが、目の前に居るのが海賊って知ったらこれが普通の反応だと思う。俺の中の海賊のイメージといえば、残虐非道傍若無人、お宝のためなら平気で盗みや人殺しだってする。そんなもんにビビらない方がおかしかろうに。
「な、なんで俺は海賊船なんかに........?」
正直話しかけるのさえ恐れ多くて思わずチビってしまいそうだが、事の経緯を知っているのが目の前の方々しか居ないからしかたがない。震える手を押さえながらおそるおそる尋ねる。
「なんだ、覚えてないのか?お前、さっきまで漂流していたんだぞ」
「ひょ、漂流?」
目の前の男性は、こう言っては失礼かもしれないがなんとも懇切丁寧に俺が何故ここに居るのかを話してくれた。なんでも俺はついさっきまで小舟で海を漂流していたそうで、そんな俺を引き上げてくれたのが、この海賊船だったらしい。
「それは、なんというか.........ありがとうございます?」
「なんで疑問形なんだよ。それに、礼なら俺の娘に言ってくれ。お前を一番に見つけたのはウタの奴だからな」
「娘?ウタ?」
すると、話す男性の後ろに並ぶ強面の方々の隙間から、ひょこっと小さな影が飛び出してくる。
「はじめまして!ウタだよ!」
「あ、どうも」
飛び出してきたのは小さな女の子。見たところ小学生くらいだろうか。赤と白で半分に分かれたような髪は、左目だけすっぽりと隠れるように白い方が伸びており、後ろ髪はリボンのように二つの輪っかを作っている。耳には何やらヘッドホンのようなものを付けており、見知らぬ怪しい男に元気よく挨拶を交わすところを見ると活発そうな印象を受ける。
「ねえねえ、あなた名前は?」
「ひ、比企谷八幡でしゅ」
いきなり名前を聞かれたせいで噛んでしまった。幼い女の子相手に緊張して噛むとか死んでしまえよ俺。
「あははっ!『でしゅ』だってー!おもしろーい!!」
「こら、揶揄うなウタ。それにしても珍しい名前だな。名前の感じからしてワノ国の出身か?」
「ワノ国?」
噛んだ挙句年下少女に馬鹿にされて内心死にたくなっていると、麦わら帽子の男性ーーーーー長いから麦わらさんでいいかーーーーーの口から聞き覚えのない国名を聞く。これでも世界史や地理は普通に学んできたが、そんな名前の国は聞いたことも無い。
「違うのか?だったら、ハチマンは何処の島から来たんだ?」
「何処って、日本ですけど」
「ニホン.........?聞いたことがないな」
おいおい、今の世の中日本を知らない大人とか居るのか?そもそも、今の時代にこんなベタベタな海賊が日本に居るのか?外国なら居るのかもしれないが、トラックに轢かれて海外旅行なんてそれこそ奇天烈な話だ。
(もしかして.........いやまさか、漫画やラノベじゃあるまいし........でも、それ以外の答えが見つからないのも事実だし.........)
「それで、ハチマンはなんであんなところで漂流してたの?」
俺を思考の海から引き上げたのはウタと名乗った少女の声。そんなことを聞かれても、そもそも俺自身が困惑しているので答えられるはずもない。
「なんでと言われても.........気づいたら海の上だったというか..........俺もなんでここに居るのかさっぱり........」
「何それ。変なのー」
年下の女の子に変人を見る目で見られながら引かれた件について。この子、結構俺に対して容赦ないよね。
「ハチマンはこれからどうするんだ?故郷が何処にあるのか分かるのか?」
「それは..........すみません。分かりません」
故郷が何処も何も、そもそもここが何処か分からないのだから当然帰り道なんて分かるはずもない。というか、今のところ分からないことしかない。
「それなら、俺達と一緒に来るか?」
「........はい?」
「俺達はちょうど、今拠点にしてる村に帰ってる途中だったんだ。ひとまずその村まで乗っていったらどうだ?」
仮にこのままこの船を降りたとして、海で遭難するのは目に見えている。それなら大人しくこの船に乗ったまま人の居る場所に連れていってもらった方が賢明だろう。問題は、乗ってる船が海賊船だってことなんだけど。
「........分かりました。よろしくお願いします」
「決まりだな。俺はシャンクス。この海賊団の船長だ。よろしくな」
こうして、俺の海賊船への滞在が決まったのだった。
先日、RED二回目を見に行きました。するとどうでしょう、創作意欲が進む進む。
正直今はこっちに熱が入ってるので、こっちメインで投稿していくことになるかもしれません。何卒ご容赦を。