普通なんてこんなもんだ   作:黒金剛

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到着、フーシャ村

「野郎共!見えてきたぞ!」

 

 

赤髪海賊団の船に乗って共に航海をして半月ほど経ったある日。いつも通り甲板の掃除に勤しんでいた俺の耳に、見張り台で見張りをしていた船員のそんな声が聞こえる。船の外を見れば、そこにあったのは随分とその姿を眼に映すことのなかった『陸地』という存在を拝むことができる。

 

 

「あれが赤髪海賊団が拠点にしてるっていう.........」

 

「そっ!フーシャ村っていうの!」

 

 

俺の独り言にいつの間にか居たウタが答える。というか、モップに座るのはやめてくんない?掃除できないんだけど。

 

 

何はともあれようやく着いた目的地。村の人達はもう慣れっこなのか、海賊が来たというのに普通に日常を謳歌している。おかげで拍子抜けしてしまうくらいあっさりと船をつける。拠点にしてるくらいなのだから当たり前だろうが、海賊が来てここまで落ち着いているのは俺からしたら正直変な感じだ。

 

 

「シャンクスー!ウター!」

 

「あっ、ルフィ!」

 

 

船員達が続々と島に上陸していく中、俺も上陸する準備をしていると何やら聞こえてくる元気な声。その声に反応してとっとこ船を降りていくウタ。何かと思い船の外を見ると、ウタが見知らぬ男の子と仲良さそうに話している。男の子の歳は多分ウタより少し下だろうか。

 

 

 

「出迎えありがとな、ルフィ」

 

「シャンクス!今回はどんな冒険したんだ!?聞かせてくれよ〜」

 

「しょうがないなあ。それなら私が話してあげる!」

 

「えぇ〜、ウタは自慢話ばっかりだからなあ」

 

 

どうやらあの男の子は赤髪海賊団と仲が良いらしい。おそらく、というか確実にこの村の子供だろう。海賊相手にああも怖気ずに話しかけられるのは凄いな。俺ならビビって漏らすまである。

 

 

「ん?お前誰だ?出発した時は居なかったよな?」

 

 

そんな光景を見ながら上陸した俺に、今度はその男の子の意識が向く。知り合いの船に見知らぬ男が乗っていたら不思議に思うのは当たり前か。

 

 

「俺は「この人はハチマン!海で漂流していたのを私が見つけて助けたの!」........です」

 

 

俺の自己紹介のはずなのに何故かウタが先に答えてしまうのは何故なのか。同調を求めるように笑顔でこっちを見ないで欲しい。そんな顔されたら怒れないでしょうが。

 

 

「ハチマンって言うのか!おれは“モンキー・D・ルフィ”!よろしく!」

 

 

返すように自己紹介してくれる少年、もといルフィ。自分で言うのも何だが、よくもまあ初対面の怪しい男に警戒心も持たずに話しかけられるものだ。まあ、見た感じ元気で良い子みたいだ。

 

 

「それにしてもお前、目が変な感じだな!」

 

 

前言撤回、失礼な奴だなこの野郎。初対面で人が気にしてること指摘して、大口開けて笑うのは如何なものかと。

 

 

「ちょっとルフィ!ハチマンに失礼でしょ!」

 

「だってよ〜、なんかゾンビみたいじゃねえか?」

 

「ルフィ!!」

 

 

悲報、小学生ぐらいの子供にゾンビ扱いされた件について。泣いていいよね?

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「ーーーー気がついたら海で漂流していて、故郷の場所も分からないの?それは大変ね........」

 

「まあ.........はい」

 

 

港から移動して訪れたのは村の中にある小さな酒場。そこの店長である“マキノ”さんという女性にシャンクスさんが俺の事を話せば、心配するようにそう言われる。

 

 

それにしてもこの人美人すぎる。八幡マトモに顔見れないんだけど。

 

 

「........ハチマン、マキノにデレデレしてる」

 

「やめてね?」

 

 

そんな俺の様子をジト目で見てくるウタ。別にデレデレなんてしてないし?ただ女性との関わりが少なかったから緊張してるだけだし?俺とウタの会話に「あらあら」と微笑むマキノさん。そんな姿も絵になりますね、はい。

 

 

「私だって、マキノくらいになったらハチマンをのーさつ?できるくらい美人になるんだから!」

 

「はいはい、可愛い可愛い」

 

 

俺の適当な返しが気に食わなかったのか、俺の肩をポカポカ叩いてくるウタ。まあ、子供の力だから大したことない..........あ待ってやっぱちょっと痛いかもやめてやめて。

 

 

「ふふっ、仲が良いのね」

 

「体のいい遊び相手と思われてるだけですよ」

 

 

その後、一応マキノさんにも俺の故郷のことについて聞いてみたが、曰く“海を長く冒険している船長(シャンクス)さんが知らないことは流石に知らない”ということだった。まあ、それもそうか。

 

 

「それで、ハチマンくんはこれからどうするの?」

 

「どうする、と言われても.........」

 

 

元いた世界に帰るにしろ帰り方が分からない。海に出れば何か分かるかもしれないが、航海術など持ち合わせていないうえに、こんな海賊だらけの世界でひ弱な俺が生きていけるとも思えない。

 

 

俺がマキノさんの言葉に逡巡していたその時、答えを出したのはまさかのシャンクスさんだった。

 

 

「その事なんだが、しばらくハチマンをこの村に住まわせてやってくれないか?」

 

「は?」

 

 

シャンクスさんが出した提案に、当事者である俺の方が疑問の声を上げてしまう。頼まれたマキノさんも了承し、俺を無視して話がどんどん進んでいく。

 

 

「ちょ、どういうつもりですか?」

 

「故郷を探すにしろ、何の情報も無しじゃ手の打ちようがない。かと言って、いつまでも海賊船に乗っていたらお前の身が危ない。だとしたら、ここにしばらく厄介になった方がいいだろ?」

 

 

シャンクスさんの言うことは至極その通りだ。現実に帰る手立てもなければ、頼れるような知り合いなんかも当然居ない。だからといって、このまま赤髪海賊団にいつまでもお世話になるわけにもいかない。はっきり言って戦えもしない俺が居ても邪魔なだけだろう。あと、普通に危険が多い。

 

 

「幸い部屋は余ってるから好きに使って構わないわよ」

 

 

笑顔でそう告げるマキノさん。そこまで言われるとむしろ断りにくい。ルフィといいマキノさんといい、この村の人達は警戒心とかいう言葉を知らないのだろうか。あと、笑顔が凄く眩しいです。

 

 

「.......分かりました。ただ、お世話になるだけで何もしないのは申し訳ないので、このお店の手伝いをさせてください」

 

「そんな........お客様にお店を手伝ってもらうわけには........」

 

「客なんてそんな良いもんじゃないでしょ。言うなれば押しかけの居候みたいなものなんで。それに、俺は養われる気はあっても施しを受けるつもりはないんで」

 

「それはどう違うんだよ........」

 

「ハチマン、この村に残るのか!?それならおれが村を案内してやる!」

 

「ちょっと、ルフィ!何勝手に決めてるの!案内なら私がするから!」

 

 

結局俺はそのまま押し切り、住まわせてもらう代わりに店員として働くことになった。あと、そこのガキンチョ二人は当事者抜きで勝手に決めんな。この世界にはそんな人しかおらんのか。

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