泥棒はヒガンバナに酔いしれて   作:俺っちは勝者の味方ー!

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 〜見切り発車で投稿することの悪い点〜
・ネタが切れると投稿スピードも比例してダウン。
・難しい文書いてると自分でも何が伝えたかったのかが分からなくなる。
…どうも、どちらにも該当する駄作者です。テンポ悪くてさーせん。

そして、11話にしてついに明かされた真島の才能…!ルパン三世Part4のニクスと似たような感じっすね。
厳密には違うんですけど、暗闇だと敵無しって感じがしてあれはあれでカッコいい…



ショータイムは事件の香り

 

ルパンの予告が全国に報道されてから半半日と経たずして、東京は見物客が多く集い何時にもまして人口密度が高くなっていた。今日が休日だという理由も相まって、郊外に住む生粋のルパンファンからSNSで情報を拡散しようと試みるインフルエンサーまで、趣味嗜好の異なるさまざまな人間が街を闊歩して回る。

 

ルパンが天見に皮肉ったようにまさにお祭り状態だ。昼のワイドショー番組で本人が乱入してからというものの、人々の熱狂ぶりは冷めるどころかますます激しく昂っていた。

 

刺激の足りない日常からの解放による反動か、観客の誰もがとても生き生きしているように感じられる。その光景を拝められれば、泥棒名利に尽きるってもんだ。

 

 

「……で、対する俺らは惨めったらしく用水路からの潜入って訳か」

 

「うるへー、今さら変えるかよ。俺は元からこういう手筈で行くって決めてたんだかんな」

 

 

どうやらそう思っていたのは俺だけみたい。ほぉんと手厳し。

これからルパンと次元はウェットスーツを纏って、用水路…つまりは水中を伝って屋敷内にお邪魔する。泥棒対策の定番である赤外線レーダーをわざわざ気にする必要が無いから、潜入までの道のりはかなり楽だ。…さて。

 

 

「そろそろ良い頃合いだろ。頼んだぜ、五ェ門」

 

「委細承知」

 

 

五ェ門には外で待機してもらう必要があるので、早速別行動だ。後はルパンと次元…二人だけの力量が試される。

目指すは1km先の天見邸。泥棒達はそれぞれ、賑わいと活気に照らされた街の影に溶け込み息を潜めるのであった。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

ーーーーそれから、下水路も入り混じった暗闇の世界を進むこと30分。

天見邸を囲うお堀に現着した二人は、屋内に繋がる通気口を目指してさらに水中を泳いでゆく。庭園だけに留まらず、敷地外にまで渋い拘りを持ってくれていた天見には感謝だ。…相手からすりゃ発狂ものだろうけど。

 

外の光が届かない水中のさらに次、狭く重苦しい空気で満ちた穴を這って進んでいると光が漏れ出ている箇所を発見する。いよいよ出口だ。

そこが繋がっていたのは廊下の天井だった。左右と誰もいないことを確認し、静かに金網を退かす。

 

 

「次元」

 

 

先に降りたルパンが声を潜めて短く相棒の名を呼べば、彼も音を立てずに着地する。窮屈な暗がりから現れた二人は既に警備員の制服を纏っており、屋敷内の集団に紛れ込む下拵えは万全だ。

 

 

「それじゃ、制御室を抑えに行って来ますよと」

 

「ああ」

 

 

ここで二人も互いに反対の方向へと歩き出す。次元はもう一つ上の階を、ルパンは同階にある地下階層への入り口を目指して。

警備員に変装しているとはいえ、同僚内での矛盾が生じて怪しまれたくはないので、鉢合わせを警戒しながら進む。

 

 

「中央区画、異常無し。西区画、そちらはどうだ」

 

『警察が巡回してるんで少しばかり喧しいですが、侵入された形跡は見つかりませんね』

 

 

警備員二人の内の一人が通信機片手に仲間と連絡を取り合っている。それを側で聞いているとちゃんちゃら可笑しくて仕方がない。もう変な虫はとっくに忍び込んでるってのに…間抜けだねえ。

 

 

「なら、警察の手を中央区画(こっち)にも寄越してくれ。詰めが甘い、とまたあの人から小言を食らっちまう」

 

『了解。今すぐ移すので、もう少し待ってて下さい』

 

 

男は通信を切り終えると、ふと気付いた。隣にいたはずの同僚が何時の間にか消えている…。

目を離したのはたった数秒だけだ。そんな短時間で持ち場を離れられる訳が無いと、目の前の事実を否定した…その時。

 

 

「!」

 

 

シュルシュルと天井から垂れて来たロープが、忽ち男の体に縛り付きその身柄を拘束してしまう。突然の出来事に狼狽する彼は状況を把握せんと天井を見上げたが、同時にそこから迫る靴底が顔面にめり込む。鼻の骨が折れた痛覚が神経を迸るのを最後に、男は意識を手放した。

 

 

「頭上に要注意…ってな」

 

 

一連のやり取りの全てを天井に張り付いて盗み聞きしていたルパンは、着地ざまに…縄で縛ったもう一人の警備員も床上に下ろしてやる。どちらも気絶しているところ気の毒だが、気付かれると面倒(めんど)いので手近な空き部屋でもうちっとお寝んねしてもらおう。悪いね。

 

 

「さてと」

 

 

懐に入れておいた暗視ゴーグルを掛けると、予想は的中。赤外線がエレベーターと非常用階段の置かれた広間中に張り巡らされている。

 

 

「それも可動式。何処からも通させないつもりなのね」

 

 

加えて、天井と両側の壁から放出される無数の赤外線は絶え間無く動き続けており、誰も通さぬと言わんばかりの働きっぷりだ。これでは殆ど隙間が生じないので、流石のルパンもお手上げである。………()()()()()()()()

 

 

「どうだ、次元?回線は見つかったか」

 

『ちょっと待ってろ、もうすぐで終わる。……あったぞ』

 

 

次元から返答が届くと、ゴーグル越しに見えていた赤外線は綺麗さっぱりなくなった。足を踏み入れられなかった場所を簡単に探ってみるが、どうやら赤外線以外のセキュリティは無さそうだ。

 

 

「サンキュー、次元。お前はそこで待っててくれ。後で落ち合おう」

 

『あいよ』

 

 

エレベーターの乗車ボタンを押すと間を置かずに扉が開く。金庫が保管されている地下行きの切符は誰でも得られる訳か…なら、ここは設計者の厚意に甘えさせて貰おう。

 

 

 ウィーン………チン

 

 

錫杖が収められている最下層へは存外すぐに到着した。調べでは、あのシンプルにして強力無比なセキュリティが設置されているゆえ、最下層(ここ)には警備の手は及んでいない。

 

だが、奴ならきっといるはずだ。万が一の事態を想定しワルサーを抜く心構えを決すると、開扉と共に外界に飛び出した。

 

 

 

 

 

「……なんでい、とっつぁんも誰もいねえでねぇの」

 

 

だだっ広い金庫室はこれまで天見が収集してきたコレクションを除くと全くもぬけの殻で、銭形はおろか他の警備の者さえいなかった。何時もの鬼警部なら引率の部下と共に宝のガードを固めていたり、血眼になって追い掛けてくるってのに…今回のヤマは本当にイレギュラーな事態ばかり起こる。

 

別段現時点で支障が出ている訳じゃないし、一般的な泥棒からすればむしろ面倒が減ると思われるだろうが、ルパンにとっては決定的な何かが欠けていた。後々それを解消する目処を立てているとはいえ、やはり不服だ。

 

 

「予告時間きっかりまであと3分ね…悔やんでてもしゃーないし、ぱっぱと始めっか」

 

 

ハッキングで監視カメラは誤魔化してあるが、愚痴を溢せるほど暇でもない。さっさと仕上げに取り掛からねば。

 

…だが、数ある芸術品達の中で一際眩い輝きを放つ獲物はすぐに目に留まった。ずっと眺めていたら寝食さえも忘れてしまいそうなこれこそが、天照大御神の錫杖。昔と何ら変わらぬ造形美に思わずうっとりしてしまうも、タイムリミットの存在が吹き飛びそうになる理性を現実に引き戻す。

 

ルパンは錫杖を納めている金庫横のコンピュータをちょちょいと操作し、左目に装着したモノクルに天見の眼球のデータを映し出す。

錫杖奪取の最後の鍵は()であり、解錠には虹彩認証が不可欠なのだ。

液晶パネルに眼を近づける。するとすぐさま承認が下りて、プシュー…とガラス張りの金庫内に空気が流れ込む音が響く。

 

 

「ああ…会いたかったぜ。俺()のお宝ちゃん」

 

 

錫杖というには全長145cmとこぢんまりした可愛らしいサイズのそれに、花を労るように優しく触れる。手垢や指紋を付けたくないので、手袋を填め、より丁寧に。

 

そっと台座から取り出し、忍ばせていた折り畳み式の円筒型ケースに納めるにも、流れるような手際でスマートにこなす。熟練の泥棒にとって、大きな目標(ゴール)を目の前にして尚も平常心を保つなんざ容易いこった。

 

そして、無駄なく一瞬で本日のメインディッシュを完食したルパンは、適当な警備システムを作動させようかと辺りを物色し始めた。

 

 

 

 

 

 

 ガァン………

 

 

まさにその時。何だ、何処からか今にも消え入りそうな音が聞こえてきた。そいつの出所は金庫室の奥、行き止まりになっている場所からだった。天見邸の間取り図には、音の発生源となる何らかの生活空間は載っていなかったが……まさか、か。

 

 

 ガコン

 

 

「あら、ビンゴ」

 

 

錫杖を包んだケースを肩に掛けたルパンは最奥の壁に手を触れ、微量な力を込める。すると、その触れた箇所はスライド式の扉となっており、簡単な動作一つで更なる地下へと続く階段が目の前に現れた。

 

天見の裏の顔について何ら収穫を得られなかったから尚のこと、ぞくぞくと興味と探究心が湧き立つ。精巧に隠し通路が設けられていれば、それに見合った秘密もまた必ず存在するものと相場は決まっている。

自分の経験則だが、おそらく()()もその例に漏れないのだろう。むしろ、そうでなくてはつまらない。深ぁい闇のベールに包まれた謎は、俺がこの世を生きる上での生命線。だから…

 

 

「行くっきゃねえでしょ…!」

 

 

この大泥棒としての(さが)には逆らえない。頼りない灯りがぽつぽつと付いているだけの階段に足を踏み入れ、ルパンはついに底の見えない奈落へと消えていってしまった。

 

 

果たして、彼を待ち受ける真実や如何にーーーーーーーー

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 〜千束side〜

 

あと5分で9時か…ちょっと緊張するなあ。

あ、どもー。私とたきなは現在進行形で張り込み兼巡回をしています。

 

夕方頃からちょっくら歩いただけで、スリや痴漢をする輩と5人出くわしたっけ?どっちも未遂って体でお巡りさんに引き渡したけど、これからパレードでもおっ始めるんかレベルの人混みの中を動くのは本当に骨折れた。羽目を外す人が極端に多くなってて嫌になる。

 

そゆわけで、私達は今そこから少し離れた公園で休憩してる。街が目覚める前の澄んだ空気が好きだけど、晴れた夜の静けさも悪くないね。騒がしい場所にずっといたから、余計にそう思えちゃう。

 

 

「…あの。私、千束に一つ聞きそびれていたことがあるんです」

 

「ん?どしたの、薮から棒に」

 

 

私に聞きたいことか…なんだろ?

 

 

「今回の任務は、ルパン三世の()()が目標として掲げられています。もし彼と相見えた時、命令違反になりかねなくても千束は彼を殺さない選択を取りますか?」

 

 

なぁんだ、そんなこと。私の答えはもう決まってるよ。私は…

 

 

「勿論殺さない。例え相手が世界中を股にかける大泥棒でもね」

 

「やっぱり、『気分が悪いから』ですか」

 

「そ。私はどんな状況、どんな相手であっても、自分で決めた()()()()()を貫く。楠木さんやフキから良い顔されないのは今さらだし。第一あのルパン三世(おじさん)が逃げに徹し続けたら、どうせ私達じゃ勝てっこないもん」

 

「! ふふっ、意外ですね。千束がそんなネガティブな見解を口にするなんて」

 

 

おい。私の話に食いついてきたのは別に構わんけど、ホントに意外そうな顔して笑うな!

 

 

「む〜、それじゃたきなはどうなのさ。ルパンを殺す為の具体的な算段があるっていうの?」

 

「一応、クルミさんが見せてくれた動画をヒントにイメージトレーニングはしておいたのですが」

 

 

うんうん。まあ、普通はそれが最適解。予習するには十分過ぎる教材がネット上にごろごろ落ちてるんだし。けど、やっぱねぇ…

 

 

「ちっちっち、たきなさんや。それだけの工夫で捕まえられてれば、警察やルパンの専任捜査官なんていらないと思わんかね。私達の一般的な常識を軽々と超えてくるから厄介なんだよ、彼は」

 

「ご心配なく。型破りな人間の相手は、既に千束で慣れてますから」

 

「だとしてもだよ。……っておい、私を引き合いに出してくんな」

 

 

全く、いつの間にこんな生意気な()になったのやら。

お母さんはそんな子に育てた覚えはありません。

 

 

「とにかくね。あの人…元々のポテンシャルがすごく高いから、正攻法な闘いに持ち込めなければ殺そうなんて夢のまた夢。私が使ってるゴム弾は至近距離で撃たなきゃ当たらんから、もっと無理なの」

 

「…まだ会ったこともない人のはずなんですけど、随分と彼を買うんですね」

 

「そりゃ私、ルパン三世のファンだから」

 

「そうですか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい?…ファン?それって、ルパンの……え、えぇ?」

 

 

うおっほー!良いリアクション頂きやしたよ、たきなさん!最近可愛いに磨きがかかってるから、その呆けちゃった表情も最高だよ〜。けど、もう少し私に喋らせて欲しいな。ここ結構大事なとこだから。

 

 

「お尋ね者をファンだなんておかしいと思うでしょ。私達の立場上なら殊更ね」

 

 

ーーーー初めは映画やフィクションの登場人物だと思っていた人が、なんと本当は実在して…世の中の色んな()()()()()を実現させちゃってさ。10年以上も昔のことだけど、今でも覚えてる。初めてルパン三世を知った日のこと。

 

テレビ越しで見たあの時の興奮は忘れられないし、当時は圧巻とカッコいいの一言しか出なかった。それと一緒に、(いい)(わるい)も関係なく、見ている人を楽しませる才能を持ったすごい泥棒さんだなって思ったんだ。

 

 

「…なるほど。長いこと彼を慕っているからこその見解だったんですね、あれ」

 

「うん。自分で言うのもなんだけど、洋画に出てくる俳優ばりに熟知してるつもりだかんね」

 

 

ルパンのファンになったきっかけを話せば、たきなは合点がいったような表情で頷く。

今の話をたきなはどう感じたのか…ちょっと聞いてみたくなった。

 

 

「ねえ。たきなから見てさ、犯罪者を擁護してるような私は変かな。それとも幻滅しt…「いいえ。確かに驚きはしましたが、人の好き嫌いは自由です。別におかしいとは思いませんし、千束が心から好きなものを他人が否定することの方が間違いでしょう」…わお」

 

 

おっおう…これまたすげぇ食い気味で意見してくれたよ、この娘。

でも、そっか。そんな風に言ってくれるのは嬉しいなあ。話の流れの中で、なし崩し的に暴露しちゃった時は少し不安だったけど、杞憂に過ぎなかったみたい。

 

 

「それと、千束は一つ勘違いをしています」

 

「ほえ?」

 

「私は一言も『()()()()()()』とは言っていません。あくまで千束の意志を聞いただけなのに、なんだか私の本心が度外視されているようでちょっと傷つきました」

 

「うっ、それはごめん…。てえーと、つまり?」

 

「千束の望みを一緒に背負います。私もルパンを狙う分には彼の命は奪いません。………千束の相棒、ですから」

 

「! ありがとう、たきな」

 

 

あれだけDAへの早期復帰を願ってたたきなが、今じゃ自分から命令違反の片棒を担いでくれるようになるなんて…。人はどう変わってゆくのかわからない。

でも、今のたきなの方がずっと可愛くて、自分の感情にとても素直になれていると思う。可愛いのは元からだけど。

 

なんて…そんな他愛ない会話をしていると、遠くから鳴り響く警報音に私達ははっとした。

さっと腕時計を確認してみれば、それの指し示す時刻は9時丁度。さあ、ついに来たよこの時が…!

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

一方ーーーーーーーー

 

 

「おっ、始めやがった」

 

 

制御室を制圧した次元はルパンの来訪を一服しながら待っていた。わざとセキュリティに引っかかって観衆を沸かせ、大胆にここからの逃走を図るというのが奴のセオリーゆえに、この警報も言わば計算内。ルパンからの脱走の合図でもある為、次元は全く焦っていなかった。

 

吸っていたマルボロを捨て、変装も解き身軽になっていると、廊下の突き当たりからいよいよルパンが現れた。同時に、彼に乗じて逃げるべく、次元も走り出せる体勢を構えたが…

 

 

「わっせわっせわっせ!!」

 

「「「「待てー、ルパン!」」」」

 

「……ぬお!?」

 

 

それを追って後ろからぞろぞろと湧いて出てきた警察&警備員(客人達)の異様な多さに、ダンディーな髭面パッパは目ん玉をひん剥いて絶句した。

大人の余裕は一瞬で無へと還り、隣に並んでどちゃどちゃ走る相棒宛てに怒号を飛ばす。

 

 

「うおぉい!?テメェ、何でこんな団体様を連れて来やがった!17文字以内で説明しやがれ!」

 

「地下にいた天見に見つかったった!」

 

「何ぃ!?」

 

 

子どもの喧嘩のような言い合いをしていても、取り巻く状況は依然として変わらぬまま…徐々に逃げ道は断たれてゆく。

 

 

「くっそう、西館からもおいでだあ…」

 

「正面玄関は?」

 

「突っ切れる訳ねえでしょ」

 

 

あわや四面楚歌に陥る前に、二人はエレベーターを介して屋上へ上がらないかと試みる。が…

 

 

「動かねえ。野郎(にゃろう)エレベーター(こ い つ)の電源を切りやがったな」

 

「となると…」

 

 

双方の視線が注がれるのは階段だった。どうやら考えていることは同じらしい。

 

 

「「人間様の足を舐めんなよ(舐めんじゃねえ)!」」

 

 

人生は山あり谷ありで、思った通りにいかないことがほとんどだ。計画が狂うのには慣れたもんだと、二人は不屈の精神のもとに足を回転させて駆け上がる。

テレビ局に似て天見邸は一階毎の階段の位置が異なる為、例え屋敷内の構造を網羅していても足を止めれば瞬く間に敵に囲まれてしまう。

 

 

「そぉらあっ!」

 

「ほっ」

 

 

立ちはだかる障害を躱し、押し倒し、時に殴って掻い潜り…そして、息が少し切れ始めた頃に漸く屋上へと辿り着く。

屋外へ出る為の扉に手を掛け、ルパンは一早く脱出作業に移ろうとする。

 

…が、これがいけなかった。僅かな疲労が注意力を散漫させ、ルパンは()()()の警戒を完全に怠っていたのだ。針の穴ほどの油断さえも命取りになるとわかっていたのに…。

 

 

「っ!!」

 

「! おい、ルパン!」

 

 

一発。銃弾が二の腕ギリギリを掠めたことで、ジャケットの袖が破れる。擦り傷の一つも負わなかったが、もうコンマ5秒反応が遅れていたら利き腕がお陀仏になっていたところだ。

 

…この射線に誤差を生じさせない銃の腕前を持つ男を、俺は知っている。

 

 

「テメェ、銭形…!」

 

 

次元が睨んだ。ルパンを狙った者に一発報復せんと腰の愛銃に手を掛けたが、サプレッサーの取り付けられたM1911を構える銭形を一目見て歯噛みする。彼の鉄仮面と隙を一切感じさせない出立ちに気圧(けお)され、一滴の冷や汗が頬を伝った。

 

 

「へぇ…」

 

 

しかし、次元とは対照的にルパンは不敵に笑みを浮かべ、口角を吊り上げる。まるでこの展開を待ち望んだいたかのように。

 

肌寒い風が屋上を横切り、ジャケットが…トレンチコートが靡く。両者は暫し睨み合い、吹き抜ける風が止むのを待った。

 




キリ悪いけど、もう長いから分けます。
リコリスが本格的に絡み出すのは次からかな。
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