ヒロアカみたいな世界に生まれたキーブレード使いはどうすればいいですか? 作:露人
雨の中、今日もリクは登校する。
ep19 くうかいさんのあした
ふわぁ〜ぁ。夜ふかししすぎちまった。いつもより眠ぃ…
ーーこれからはエゴサーチも程々にしていきましょうね。
ああ、そうだ。そうしよう。というかできるだけ見ないようにしよう。
ーー賢明な判断です。
心の中のクルークスと雨の中、傘をさし、雑談とあくびをしながらバス停までの道を歩くリク。
案の定バス停はもう長蛇の列が出来ている。
もう少し早く家を出るべきだったかな?なんて思いながらバスを待っていると、
「そこの体育祭のお笑い芸人さん!!」
何やら後ろから元気な声が聞こえてきた。だが、『空海さん』ではなく『体育祭のお笑い芸人』。
それは空海が今一番言われたくない名称である。
「は?んだとコラーー!」
脊髄反射で返事をしてしまったリク。振り返るとそこに立っていたのは見ず知らずの
自分と同じくらいの身長の青年だった。
「体育祭凄かったすね!!あんな事するの兄さんだけですよ!」
「兄さんて。ぱっと見ほぼ同じ年だろ?というかお笑い芸人て呼ぶのやめてくれ。
俺は仮にもヒーローを志している者だぜ?」
「へへへ…サーセン、兄さん!」
始めて話しかけたのに妙に距離感が近いこの青年。『これが陽キャと陰キャの違いなのか…』
と思いながら、そんな問答をしていると話を聞いていた周りの人も話しかけてきた。
「えっと…空海さん、ですよね?凄い!あの、質問良いですか!?」
「あのーすいません。写真、一緒に取ってくれませんでしょうか?」
大学生らしき女性、出勤途中のサラリーマンと、バス停で待つ人が次々に近付いて来た。
二回戦落ちにしては上々の知名度と言えるのだろうか?
結局空海はバスの中でもファンサービス(?)をすることになったのだった。
「お!おはよーさんリク!!」
教室に入ると上鳴が真っ先に話しかけてきた。今日の教室はいつもより騒がしく感じる。
それもそうだ。あの体育祭が終わった直後なのだから。
「おう、おはようです。」
「リク、お前も学校に来る途中話しかけられなかったか?」
どうやら皆も空海のバス停でのプチ有名人のような出来事があったようだ。
あの話しぶりを聞くに彼もやはり誰かに話しかけられたのだろう。
耳を澄ますと皆この手の話題で持ちきりだ。
『バス停での出来事はそこまで珍しいことではなかった。』という現実に
少し悲しみながらリクは答える。
「ああ、わりと大勢に。朝からまぁまぁ疲れちまったよ…」
「オイ空海!どんなやつに話しかけられたんだ!?正直にオイラに白状しろ!」
上鳴と談笑していると、峰田もすごい剣幕で話に入ってきた。
「色々いたぜ?サラリーマンに俺と同じ高校生に…あとJDとかかな?」
そう答えると峰田は声色を変え、怒りの言葉が火山の噴火ように噴き出した。
「てんめぇーー!!許さん!!オイラを差し置いて、なんで…なんでお前なんかが
JDに話しかけられたりしてんだよーー!!」
何やらご立腹のようだ。…話しぶりから察するに峰田には女性ファンはつかなかった。
もしくは女性ファンに出会えなかった。あるいはターゲットの年齢層の女性とは
かけ離れた年齢層の女性ファンとしか出会えなかったようだ。いつにもましてキレている。
「”お前なんか”だと!?テメー口の聞き方には気をつけろよ?」
「ふん!どーせお前は話しかけられたJDとかJKと連絡先交換して、
粉掛けてきたんだろーが!!俺に気安く話しかけんな!!」
拗ねている。間違いなく拗ねている。
だがそれを感じとるだけのコミュ力は空海は持ち合わせてはいなかった。
「はぁ!?連絡先の交換とか…してねーよ!!!」
「ん?何言い淀んでんだ?…まさか!図星だったんか!?」
「マジか空海!?やるな〜!」
言い淀みを指摘され、何やら大きな誤解が生まれそうになっているリク。慌てて弁明する。
「ち、違う違う!まぁたしかにやっておけばよかったと少し後悔してるけど・・・」
余計な一言が人を怒りの炎で包む。【口は災いの元】とはよく言ったもの、
やはり先人たちの言葉は偉大だ。
「殺す。殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺殺殺殺殺・・・・」
(ちいさな くうかいのこえを みみにして サツイが みなぎった)
「待って、待ってくれナガノパープルくん!」
「峰田だ!!」
「こういうときは連絡先交換しないほうが良いんだよ!」
空海がそう答えた時、峰田は疑問と針のように鋭い言葉を空海に投げかけた。
「なんでだよ!?お前は女に話しかけられないからこういうときにしかチャンスはねえだろ!?」
「グッ…お前、俺の心に来る一言を…だがな、こういう一時の気の迷いが後に後悔を生むんだ。」
「はぁ?」
「どういうことだよリク?」
「いいか?会って一時間もしてないような相手に連絡先を渡すのは果てしなく危険だ。
もし記者がそいつに『その人の連絡先を教えてくれたら10万渡します!』
とか言ってきたらそいつは俺の連絡先どーすると思うよ?」
「渡すな。(確信)」
「渡すだろうな」
この間わずか2秒。満場一致の答えだ。少しは悩んでほしかったな……と思いながら話は続く。
「だろ?ということは渡したやつだけじゃなく記者とかに俺の連絡先が出回る。
すると…何が起こる?」
少し考えた後に上鳴が答える。
「無限に連絡が来るんじゃね?」
「exactly. 記者から記者に無限に俺の連絡先が出回るってことが考えられるし、
何より会話が録音されて弱みを握られてしまうかもしれない。だから危険なんだ」
上鳴が納得したように頷く。だが峰田は違った。
「でもソレ、オメェが一歩踏み出せないのを肯定させる言い訳にも聞こえるぞ?」
「・・・」
「なんか言えよ空海」
痛いところをつかれ、口ごもる空海。そんな絶体絶命の時、ヒーローはやってくる。
我らが担任、相澤先生がやってきた。
「お前ら席につけ!早くしろー」
「はーい。(ナイスゥ!相澤先生!アイシテル♡)」
全員が席についた時、蛙吹が
「相澤先生包帯取れたのね、良かったわ」
と声をかけた。本当だ。相澤先生はもうミイラ男じゃない。
相澤先生は蛙吹の安堵の言葉に反応して、
「婆さんの処置が大ゲサなんだよ」
と答えた。『婆さん』とはおそらくリカバリーガールのことだろう。
(ガールという年ではないと会うたびに思うんだよな〜)
ーーヒーローネームが似合わなくなるほどの長い時間活躍しているということなのでしょう。
「んなもんより今日のヒーロー情報学はちょっと特別だぞ。今回の授業は…コードネーム、
つまりヒーロー名の考案だ」
胸膨らむやつキターー!!
「静かにしろ!!」
大盛りあがりで騒ぎ出すクラスをたしなめ、相澤先生は話を続ける。
「今回のヒーロー名の考案。これは先日話した【プロからのドラフト指名】に関係してくる」
そんなこと言ってたっけ?
ーー言ってましたよ。…話をちゃんと聞きましょう。
「指名が本格化するのは経験を積み、即戦力として判断される2・3年からだ。
つまり、今回来た指名は将来性に対する興味に近い」
その説明に葉隠が反応する。
「なるほどー!頂いた指名がそんまま自身へのハードルになるんですね!」
「そ。んで、その指名の集計結果がこうだ。例年はもっとバラけるんだが、二人に注目が偏った」
そう言いながら黒板に指名の集計結果を書き込んでいく。
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轟 4,123
爆豪 3,556
常闇 360
飯田 301
上鳴 272
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空海 1
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結果を見て峰田は緑谷の肩をゆすりながらに話しかける。
「無いな!怖かったんだやっぱ」
「うん…」
そしてそのまま空海に向かって叫ぶ。
「というか空海!?お前指名あんじゃねえか!?オイラにはないのに!…って空海?」
見ると空海は机に突っ伏しながら何やら呟いている。
「どうする?美人ヒーローの下について鼻の下を伸ばすか。それとも激戦区でレベリングするか…
ん?『どっちも』って?そんな…『強欲なんでしょう?』だと?まぁそうだけどよ…」
「オイ空海!聞いてんのか!?」
「ふぇ?な、ど、どうしたんだいった・・・って、え!俺に指名きてる!?なんで!?
どうして!?え?え?やったー!!」
「お前、今気がついたのかよ…」
おい静かにしろ!
再び騒がしくなったクラスを静かにし、先生は話を続ける。
「で、これを踏まえ、指名の有無関係なくいわゆる【職場体験】ってのに行ってもらう。
おまえらは一足先に経験してしまったが、プロの活動を実際に体験して、
より実りある訓練をしようってこった。」
(まぁ俺たちは入学早々ヴィランと戦闘したからな。
…歴代の一年生と比べて一歩半ぐらいは先に行ってるだろうな。)
ーーまぁ私達は入試で死も経験しましたけどね。
「まァ名前は仮ではあるが適当なもんは・・・」
と話していると、その言葉に続くように
「付けたら地獄を見ちゃうよ。この時の名が世に認知されて、
そのままソレがプロ名になってる人多いからね」
とミッドナイト先生が教室に現れた。
相澤先生はセリフを取られたのが悔しかったのかほんの少し拗ねながら
「まァ、そういうことだ。今回はその辺のセンスをミッドナイトさんに査定してもらう。
将来自分がどうなるのか、名前を付けることでイメージが固まりそこに近付いていく。
それが【名は体を表す】ってことだ。…【オールマイト】とかな」
そう言うと相澤先生は何処から寝袋を取り出し、ミッドナイト先生と入れ替わった。
『ヒーローネームを考える。』か。
ーーどうしましょうかね?
どーすっかな〜俺モナー
ーー恥ずかしくない名前にしましょう。
指名が入ったという喜びもつかの間、ヒーローネームを考えなくてはならない空海。
果たして空海はgoodでcoolなヒーローネームを思いつくことが出来るのか?