ヒロアカみたいな世界に生まれたキーブレード使いはどうすればいいですか? 作:露人
この記録はKMN-0010-Pの意識レベルを上昇させる可能性があるため、
特例でサイト内の低危険物収容ロッカーへ保管されています。
俺は突如として起きた大地震によって倒れてきた巨大タンスに潰されて死んだ……ハズだったが、どうやら違うようだった。
最初に目を覚ました時、俺はなにかの研究施設のような所でホルマリン漬けにされていた。
ついでに俺の腕には鋭いヒレが生えていて、歯が鋭く研がれていた。
意味がわからないと思うが大丈夫だ。俺もわからない。だが確かなのはここは日本語が使われてる場所、おそらく日本ってこと。そして俺は死んだハズだがなぜか生きてるということの2つ。
素晴らしい。俺はまだ生きてる。未練の有無が勝負を分けたのだろうか?だが問題はココが、
いや、この世界は俺の知ってる世界とは大きく違うということなのだが。
次に目を覚ました時、俺は窓もドアも照明もない、だが明るい真っ白な部屋にいた。
素晴らしいことにこの部屋はなかなか広い。俺が住んでた格安の6畳間の聖域より遥かにな。
だが残念なことにここには机がない。椅子がない。ベッドがない。
というか家具が一つも、飾りの一つもない。これでは退屈で死んでしまう!
……まぁ俺は一回死んでるんだがな。と、そんなことはさておいて。
今まで起きた事とわかったことを箇条書きに書き出そうと思う。
何かわかるかもしれないからな。
起きたこと
・俺はタンスに潰されて死んだ。(ハズ)
・目覚めたらホルマリン漬け(?)にされていた。
・腕に鋭いヒレが生えてて、歯がめっちゃ鋭くなってた。
・インタビューされた。(2〜3回?)
わかったこと
・なんでか生きてる。
・多分日本(でもなんか違う)
・腕に付いてるヒレは『コセイ』ってものによって生えてるらしい。
・前より体が軽く感じる。
と、ここまで書いてわかったことが一つある。それは……ここは多分漫画の世界だということ!
そしてその中でも多分ヒロアカの世界だ!最高だな!だがまだここが何処なのかはわかってない。それに加えて、なぜ俺がここに幽閉されてるかがわからない。もっと情報を集めなければ。
ここの食事はお世辞にも良いとは言えない。なぜならここに来てから俺は固形物をまだ一回も口にしてないからだ。来る日も来る日もウィダーinゼリーのような
こんなんじゃ一向に腹は満たされない。しかもそのゼリーは薄味、いや無味無臭だ。
ああ、肉が、野菜が、魚が食いたい。
今日、夢を見た。俺が生きたトカゲを躍り食いさせられる夢。
確かに肉を食いたいといったがそうじゃない。
しかも噛み砕いたときの食感やらグチャグチャになったトカゲの喉越しやらに
恐ろしくリアリティがあった。まるで本当に食ったことのあるような、『一体誰の経験なんだ?』そう思ってしまうようなリアリティ。できればもう見たくない。
だが最近そういった情景の夢を見続けているような気がする。ここと同じような真っ白な部屋で、白衣の男たちに実験のように色々なものを食わされる夢が。
……糞を食う夢とかを見ることはないと信じたい。
今日の夢は前に見た気がした。夢がローテーションして繰り返されているような気がする。
夢ってリピート再生されるものなのか?俺は脳科学者じゃないからわからない。
そんな繰り返される夢の中で一番嬉しいのは味付けのされてない茹で鶏肉を食う夢だ。
どれくらい嬉しいかと言うとあれはもう……毎日でも見たいぐらい。
まぁ裏を返すとそれ以外碌なもん食わされてないってことなのだが。
前まで見ていた夢の中に副音声で謎の声が聞こえて来るようになった。
『助けて』やら『もう嫌だ』とか『どうしてそんな事するの』だとか。
凄まじいリアリティの夢に副音声まで付いてきた。しかもあの声の悲壮感から
この声の持ち主はこのトカゲやら何やらを食わされてる当事者だろう。
これはもう夢で起きてきた情景は実際に起きた事と思わざるを得ない。
だがもしこれが本当ならなぜ俺にそんな夢が見れるのかという疑問が浮かぶのだがな。
……まさかこれは俺が実際に経験したこと?
いやいや、俺はそんなひどい目に遭った覚えはないのだが。
最悪だ。初めての夢だ。だが今日の夢は本当に見たくなかった。凄惨で猟奇的で今も吐きそうだ。
手帳が俺のなけなしの胃液で汚れないように手短に記す。
俺は真っ白な部屋から俺は逃げ出して別の部屋に入って……管に繋がれた脳みそむき出しの化け物に襲いかかって殺した。そんでソイツを……俺は喰った。聞こえた声はすすり泣くような、
笑っているような声で一言、『これで……終われる』と言った。こんな感じだ。
そんじゃあ吐いてくる。
あれから夢を見ることはなくなった。嬉しいかとそうでもない。なぜならあのふざけた夢だけが
このなにもない部屋で暇をつぶせる唯一の手段だったからだ。
というか最後に見た夢がアレとは……最後ぐらい鶏肉の夢が良かった。
あとあの夢で見たあの化け物って脳無だよな。……まさか、ね。大丈夫。
俺の脳みそはオープンカーには乗ってない。ちゃんと屋根がついてる。けど……
窓もドアもない真っ白な部屋。代わり映えのしない無味無臭のゼリー状の餌。
毎日見ていた恐ろしいリアリティの謎の夢。俺の腕に生えた鋭いヒレ。
使いどころのない鋭い歯。広がるヒロアカの世界。……いや、最後のは違うような気がする。
だってまだ俺はヒーローもアカデミアも見ていない。今の所見たのは白衣を着た人間だけだ。
火を吹く人も見てないし、物を手に引き寄せる人もいない。
今からでもここを抜け出して外の世界ってものを知りたいものだ。
わかった。全て。何もかも。いや、気付きたくなかっただけかも知れないが。最初のホルマリン漬け。移された先の真っ白な何もない部屋。
恐ろしい夢。撒き散らされた点が全て繋がった。
俺は脳無、そしてここはAFOの脳無製造兼研究施設だ。
なんで脳無なのに脳みそモロ出しじゃないのかは知らん。この体は最新型か何かだろう。
流れはこうだ。まず最初に俺は死んでヒロアカの世界に転生した。
だが手違いなのか心だけが飛ばされた。体のない心だけの存在が現世に残れるわけない。
そんなときに瓶詰めにされ、まだ生きているこの体があった。
夢から推測するにこの体の本当の持ち主は脳無だがAFOの操り人形になる気はなかった。
せめてヤツの計画を狂わせようと他の脳無を喰い殺して何らかの方法で心を捨てた。
だから
いや、そうとしか考えられない。
あと今日のインタビューで研究員達が俺を見て「拘束具が〜」とか「制御装置の製作は〜」とか言っていたのが聞こえた。アイツらから見たら俺は自我を持つイレギュラーな脳無という
認識なのだろう。……俺が俺でなくなる時は、そう遠くないのかもしれない。
意識が朦朧としてきた。おそらくこの部屋に笑気ガスが注入されているのだろう。
薄れる意識の中遠くから重いものを持った人の足音が聞こえる。
どうやらその時が来たようだ。もうすぐ俺は俺でなくなる。だが俺は諦めない。
この代わり映えのしない白い地獄とこれから着させられる冷たい呪いの鎧から俺を解き放ち、
俺にヒーローとアカデミアを見せてくれるような存在が現れることを。