ヒロアカみたいな世界に生まれたキーブレード使いはどうすればいいですか?   作:露人

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Day6 生まれ変わる夢

 

今日の昼、いつもの海岸で待つ。

 

朝起きたらこんな置き手紙が磁石の枕元に置かれていた。たった一言だけの簡潔なものでは

あったが、筆で書かれていたその文には有無を言わせぬ圧があった。困惑のあまり磁石は今日、

二度寝をすることが出来なかった。

 

 

「お、おはよ〜」

 

「あらどうしたの、珍しく起きるの早いわね?」

 

「アハハ…ねぇおばちゃん、この手紙書いたの誰か知らない?」

 

台所に降りてきた磁石はおばちゃんに枕元に置かれていた手紙を渡す。それを見ておばちゃんは

少し驚いたが、すぐに頬が緩んで微笑んだ。

その表情はおばちゃんがなにか知っていると見て間違いなかった。

 

「え、その顔はたぶん知ってるんだよね?」

 

「いやぁ、私は知らないねぇ」

 

「嘘だぁ!絶対に知ってる顔だよ!それ!」

 

「まぁまぁ、言ってみれば良いじゃないですか。行っておいて損はないですよ」

 

「……まさかおばちゃんが書いたの?」

 

「ううん、それは違うとだけ言っておこうかねぇ」

 

そう言っておばあちゃんは朝ごはんの用意を始めて、そこでこの話題は終わってしまった。

まぁこんな手紙を枕元に置けるのは私が知っている人だろう。そうしたらこの手紙を書いたのが

おばちゃんじゃないとすれば残りはおじさんと綿と空海の3人。

だが、綿は昨日の夜から一緒にいて手紙を書いているところなんて見ていない。

おじさんに関しては朝早くに漁に出てしまうのでそもそも夕食の後すぐに布団で寝ていた。

……そうすると消去法で空海しかいなかった。空海とは昨日の夜から話せておらず、気まずい空気が流れている。その空気感は昨日の夜におじさん達に大丈夫かどうか聞かれたほどだった。

察するに空海は『家ではない場所で1対1で話そう』ということを伝えたかったのであろう。

それならばこんな手紙を枕元に置いた説明がつく。

……それがまさか果たし状のような文体で来るとは予想していなかったのだが。

 

・・・

・・

 

「おっ、来てくれたか!」

 

「やっぱりこの手紙を書いたのは空海くんだったんだね」

 

「なかなかイケてる文章だろ?」

 

「うん。果たし状みたいでびっくりした」

 

「まぁ、ニアリーイコールなんだけどな」

 

「そう……」

 

しばしの沈黙。それは波が2回ほど打ち寄せてくる程度の時間であったが、磁石の息を詰まらせるには十分すぎる程の時間だった。その沈黙に耐えられなくなり、磁石は乾燥してパサパサの口を

わずかに開いて声を出した。

 

「ぁ、あの……ごめn」

 

「磁石はさ、”今”何になりたいんだ?」

 

磁石の少しの震えが混じった声に被さるように空海は質問を投げかけた。唐突に投げられた

『今何になりたいのか』という質問。その答えはもう持っている。夢は持っている……はずだが

喉につかえてそれが出てこない。言葉が出てこず口をパクパクさせていると先に空海のほうが

口を開いた。

 

「人は夢という心の燃料がなくちゃ生きることが出来ない。って俺は思ってる。……でも今のお前にはそれがない、だろ?」

 

「……」

 

(そんなわけない!確かに持ってるんだ!私は夢を!でも……でもそれはもう諦めた、

心の奥深くに埋めたもの。もう口には出せないもの……)

 

「図星かいな……」

 

「いや……」

 

「何が違うんだ?ま、仮にあったとしてもここで胸を張って言えるような夢じゃねぇってことだろうな」

 

「……!」

 

「お前が元々持ってた『ヒーローになる』って夢は諦めた。…じゃあ夢を諦めたお前を何が生かしてるんだ?」

 

「私の夢は……」

 

「まさか、この後に及んで『ヒーローになる』って言うんじゃねーよな?【もう諦めた】な〜んて言える、その程度のもんだもんな?」

 

「その程度……?」

 

「そうだ、その夢は突発的なもんだったんだろ?だから、諦めたなんて言えるんだ。思い入れがないからな」

 

「いや、そんな事……」

 

「昨日言ってたいっぱい努力しました〜ってのもせいぜい1ヶ月、いや1週間程度の事なんだろうな」

 

「ッ……!」

 

「どうだ?図星だろ?悔しいけど事実だろ!?なぁ!」

 

「……がう…」

 

「なんだ?なんつった?全っ然聞こえねぇぞ?」

 

違う!勝手なこと言うな!

 

「ふーん?」

 

「私の夢はずっと、ずっ〜と前から!ヒーローになる事だ!今も変わらない!

そのための努力だって、ずっと!ずっと!!やってたんだ!!!」

 

怒りのままに叫ぶ磁石。その声は海の彼方、地平線を超えた先まで届いてしまうではないかと

思わせてしまう程のものだった。

 

「……諦められてねーじゃねえか」

 

「……そうだね。頭では無理って、叶わないものだってわかってるはずなのに……

諦めようとしてるのに……どうしてかそれ以外の夢が浮かばないんだ」

 

「心が命じてるんだ。そりゃあ誰にも、自分ですら止められないだろうよ」

 

「じゃあどうしたら!?」

 

「そもそも何で磁石はヒーローになろうって思ったんだ?」

 

「それは簡単なことだよ。困っている人を助けるにはヒーローしかないと思ったから」

 

「つまり困っている人、いや誰かを助けたい、だからヒーローになることが夢だった、と」

 

「うん、そう」

 

空海の質問にそう磁石が答える。すると空海は顎に手を当てて考え始めた。

そうしてしばらくの間ぶつぶつと呟きながらグルグルとあたりを左回りした後、

不意に思いついたかのように顔を上げた。

 

「それならさ、別にヒーローじゃなくても達成できるくね?」

 

「え?」

 

この人は何を言っているのか。人助けが出来る職業はヒーロー以外にほとんどないのに。

そう思い、怪訝な顔をする磁石だったが、空海は頬を緩めながら話し始めた。

 

「消防も警察もいいけど……磁石は弱いから無理だろうな」

 

「な、何よ!まだ私に嫌味があるの!?」

 

「いや、そうじゃない。人を助けるのに強い力なんていらないってことだ」

 

「え?」

 

「磁石の夢は困ってる人を助ける、だろ?」

 

「ええ、そうよ!困った人を助ける、それが私の憧れであり夢」

 

「そうだよな。ヒーローにはなれない、でも人は助けたいって夢を叶えたいと思うんだったら……ヒーローを助けるやつになればいいんじゃないか?」

 

「え?」

 

「巷で見るヒーローだって、私服で戦ってるわけじゃないだろ?コスチュームを着てる。

アイテムを持ってる。ということは、そいつに合ったコスチュームやらアイテムを作るやつだって必要なわけだ」

 

「あぁ、確かに……」

 

「自分の作ったものをヒーローが使って人を助ける。……それって間接的には自分も人助けを

してるってことになるだろ?」

 

目からウロコだったというように磁石は驚きの顔を見せる。だがすぐにその顔は曇ってしまった。

 

「でも私がなれるかな……」

 

「何だ?また諦めるための理由を考えてるのか?」

 

「いや、そうじゃないよ!ただちょっと不安なだけ」

 

「まだ始まってないのに暗い顔すんなって!大丈夫、磁石は手先が器用だしなれる!

なんたってあんな速さで定置網の網の補修ができるんだからな!」

 

「え、よりによってそこ!?アレは慣れだよ、慣れ」

 

「えー?でもスゲーと思うぞ?俺は教えられても多分網を絡ませるだけだからな」

 

「いや、そんなわけ無いでしょ!?」

 

「いや、そんな訳あるって!というか、やる前から無理だと思ってたら一生できないぞ!とりあえず挑戦してみてから考えろ!」

 

「ええ!?私こう見えても後先考えて行動するタイプなんですけど〜?」

 

空海の言葉に反応して二人の間で高度な舌戦が繰り広げられた。息つく暇もなく繰り広げられる

それは、日が陰るまで続き、それが終わる頃には磁石の未来への不安はどこかに吹き飛び、

今までの夢は新たな夢に生まれ変わったのだった・・・








7月15日(土)
空海くんと仲直りできた。本当に良かった〜!
というか思ってたよりあんまり怒ってなくてよかった。
もっと口聞かないぐらい怒ってると思ってた。
あと、空海くんの話を聞いて新しい夢が出来た……いや、夢が生まれ変わったって感じかな?
そんな空海くんは明日で帰っちゃうことに気づいた。
思ったより早くてびっくり。あっという間に終わっちゃったような気がする。……なにかここでの思い出を持って帰ってもらおうかな?
でも何にしよう……


そうだ!ねぇ綿ちゃん、___って何枚持ってる?

ーーえ〜とね……2枚だよ!でも〜何に使うの?

空海くんにそれを使った思い出の品を作ろうと思って……

ーーふ〜ん……でもと〜っても珍しいやつだからな〜?

お願い!一生のお願いだから!

ーー……じゃあシーソルトアイス15本奢ってね?

うっ……

ーーまぁ〜私もリっくんになにかしようと思ってたから〜10本にしようかな?

グッ…わ、わかった!わかった!奢るから!

ーーオッケー!交渉成立〜!はい、コレ

うぅ…出費が痛い……
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