兄弟を守るために 作:パラパラオムライス
「や、やめてくれっ!命だけは!命だけばっ!?ぎゃあぁぁぁぁ腕がぁぁぁぁっ!」
「アッハハハ!うるさいって!そんなに騒がなくてもちゃんと殺してあげるから安心してよ」
広い空間で行われているのは、簡単に言えばショーである。
役者は2人。狩る者と餌という至ってシンプル。
お互いに素顔が出ないよう仮面を着けているが、狩る者が手にしているのは小さな片手ナイフ。それを両手に持ち、餌である相手の片腕を切断すると、そのまま馬乗りになって身体中をグサグサと刺していく。
そのショーを見下ろすように観戦する客もまた、素顔を隠すために仮面をつけていた。会場は大いに盛り上がっているのか、「カルラ!カルラ!カルラ!」と盛大なコールが会場を包んでいた。
カルラとは狩る者の名前なのだろう、今もなお相手の身体を刺し続ける
「あ、あぁ…ご…めん…なさ……い…」
餌の相手は何十回も刺されたことにより生き絶えた。涙を流し、懺悔の言葉を溢しながら逝ったその姿を見てさらに会場の熱は上がった
少年は観客に向けて手を振ると、足元に転がっている死体を冷たい眼差しで見下ろす。
「誰に謝ってたのさ?…まあ、どうでも良いや。それより安心してよ、あの世で寂しくない様に、───たくさん仲間を作ってあげるからさ」
役目を終えた少年は、これから起こるであろう喜劇を楽しみにしながら、この場を後にした。
ここは世界で最も残虐的なショーを開催していると裏社会では有名な国。
名を『コクザーン』。
世界貴族であり、この世界の頂点に君臨する
そんな国が、たった
そんなニュースの新聞を見ながらバリバリと煎餅を食っている、海軍本部中将のモンキー・D・ガープは目の前で同じく煎餅を食っている少年に視線を移す。
綺麗な黒髪は背中まで伸びており、目は真紅に輝いていた。
整った容姿はその華奢な身体つきから美少女と間違えられそうだが、これでもちゃんと男の子であった。
「…さっきからジロジロ見てるけど、俺にそんな趣味はないからな?」
「ぶわっはっはっ!違うわアホ!お前さんの起こしたニュースを見ておっただけじゃ。よくもまぁこんなクソガキがあんな惨状を起こしたもんだと思い出しての」
「もともと決まってたんだから仕方ないでしょ。あの国にいる奴ら、父上含めてみんな嫌いだったんだから。でも、行く宛て無くて困ってた所にあんたらが来てくれて助かったよ。やりたい事もなかったし」
「まさか、ああもあっさり
「まあまあ!俺もある意味被害者みたいなもんだし、最悪の場合、権力でもなんでも使って納得してもらうよう頑張るよ!このカルラに任せな〜!」
「はぁ〜。ガキは気楽で羨ましいのう…」
ガープは近い未来、同期に怒鳴られ減給やなんやと言われるんだろうな、と想像して深いため息をまた溢した。
目の前に座る少年、カルラはそんなの気にせずと次々と煎餅に食らいついていた。
そんな姿を見てガープは、つい先日の事を思い出していた。
違法賭博や残虐的なショーを開催しているという証拠を掴んだ海軍は、それに携わる人間を皆逮捕するために、本部の人間を『コクザーン』へと派遣した。
その任務を与えられたのが、海軍の英雄であるガープであった。
ガープは心底面倒臭そうにしていたが、同期であり海軍のトップである、海軍元帥・センゴクに最近仕事をしていないからと減給をチラつかされ、渋々任務にあたったのだ。
これまで何度も『コクザーン』の違法情報を掴んで検挙しようとしても、その国のトップはこの世界で最も地位の高い天竜人なため、簡単にあしらわれてしまっていた。
いくらその国王に就いている天竜人、名を「アルフィート・サイコス」が天竜人の中でも特に変わっている人物だからと言っても、そう何回も海軍が来てはその機嫌も悪くなるのは道理。次来たらその海軍全員を不敬と見なし死刑にする、と本部に脅していたのだが、今回はどうやっても揉み消せないほどの証拠が集まっているし、何より今回はその天竜人の頂点に立つ五老星の命令だったため、いくら「アルフィー・サイコス」が不敬だなんだと言えど、この逮捕は絶対だ。
だからセンゴクも信頼するガープにこの任を任せたのだった。
まぁそんな事は全く知らないし、どうでもいいガープは終始面倒臭そうにしながらもなんとか『コクザーン』に辿り着くとその島の異変さにすぐ気付いた。
(なんじゃ…人の気配が全くせん。いやそれよりもこれは…血の匂い、じゃな)
海岸まで香る血の匂いに思わず顔を歪ませるガープ。
ガープの船に乗っていた海軍の兵士たちはそのあまりの臭いに気分を悪くし、腹の中のものを戻してしまう者もいた。
(実践経験の少ないものはちと厳しいか…)
「ここからはわし1人で行く。全員船番じゃ。体調の悪い者は無理をするな」
ガープの意を汲み取ったのか、『お、お気をつけて!』とガープを見送る海兵一同。うむ、と船から飛び降りるとスタスタと国の方へと歩いていくガープ。
すぐに囲むようにある壁と門を見つけると、開けてくれそうな雰囲気はないことがわかっていたため、一発ぶん殴り壁を壊して中に入る。
するとブワッと一気に血の匂いがガープを襲う。
(…これは全員死んでおるようじゃな)
辺り一面壁などに付着していた返り血だらけのその光景。
念のためと、ガープは覇気で周りを確認するも生存本能らしきものはなかった。
どうしたものか、ととりあえず中央の城に向かって歩くガープ。
すると向かい側からペタッペタッと足音が近づいてくるのがわかった。
そちらの方に目を向けると、全身血だらけの礼装を着た子供が目を大きくあけてガープのことを見ていた。
この惨状で生き残りが、と一瞬考えがよぎるも直ぐにそれを捨てたガープ
なぜなら少年の手には、その身体に似合わない不気味なオーラを放つ日本刀が握られていたからだ。
「…おじさん見ない顔だね。てかその服、…海軍かな?」
「小さいのによう知っとるなボウズ。ところで一つ聞きたいんじゃが、この近くに生存者はおるかの?いたら案内して欲しいんじゃが…」
「あー生存者か。…多分いないかな。この島で生きてるのは恐らく俺だけだよ。誰も殺し漏らしてないなら、だけど」
あはは…と頬を掻く少年を観察するように見るガープ。
一見ただの子どもだが、その纏う雰囲気は異質だった。
全く隙がないその少年を見てガープはどうしたものかと考える。
「なるほどのう。それならボウズの事を教えてくれんか?そうじゃのう、とりあえず名前と歳じゃ」
「名前は
あとは、ここで解体屋してた!」
「アルフィート…ん?解体屋とはなんじゃ」
「…解体屋は解体屋だよ。逃げる人間を捕まえてショーで解体するんだよ。この国が時々やってる名物でね。僕はその解体屋の中でも1番人気なんだ〜。」
ガープが聞けば、急にその場に座ってつまんなそうに説明するカルラ。
それよりも気になったのはこのカルラという少年の姓。
アルフィートとはこの国の王、つまり天竜人と同じ名前という事。
これは予想していた以上に面倒くさい事になったと頭を抱えたい気持ちにかられるガープ。
もういっそのこと全部センゴクになすりつけれないか?なんて事も考えたりしていた。なんならこの少年を海軍に入れちゃえば?
だが、この少年は国中の人間を惨殺している。いくら少年といえどこれだけの大量虐殺をしている人間を海兵になんてとてもじゃないができない。
どうしたものかと考えるガープ。
するとカルラは何やらそんな考えを見透かしていたのか口を開いた。
「なんか変に百面相してるとこ悪いんだけどさ、別にこいつらって殺されても文句言えない奴らだからね。もともとこの国は父上が実験だなんだって犯罪歴のある奴隷だけを買って作った、言わば犯罪奴隷専用国家。この国に住む人間は全員罪人。今日行われたショーの観客だって裏社会でまあまあ有名な奴らだけしかいないし。僕はサイコパスな父上に殺しを強要されただけ。褒められはされど、責められる覚えはないから」
プイッと可愛らしくて頬を膨らませてそっぽを向くカルラは失礼しちゃうなーと怒っていた。カルラのその言葉を聞いて辺りの死体の顔を見ていくと、何人かは確かにガープでも新聞で見たことあるような顔があった。
そして出発前にセンゴクに見せてもらった『コクザーン』の情報資料の中にも確かにそんな様な事が載ってあった気がする。
(…それじゃあもしかして)
ガープは先ほどの自分の案を思い出す。
身寄りのない子どもで、自分と話している最中でも隙がない期待できる実力。
これは本人の希望次第ではスカウトできるんじゃないか、と。
このボウズが海軍に入ったら、ちょっと面白いんじゃないか、と。
「おいボウズ、お前海軍になる気はあるか?」
「…お、まじ?なるなる。ちょーなりたい」
「ぶわっはっはっはっ!すっごい適当!けどおもろいから決まりじゃ!」
こうしてカルラを連れて帰る事を決めたガープ。
だが後に、この判断が同期に怒鳴られる原因になると気づき、頭を抱える事をまだ知らない
ずっと考えていた話を書いてみようと思い投稿しました。
ゆっくりのんびり投稿していきたいと思うので、ミスとか読みにくいとかあるかもしれませんが、気楽に読んでいただければ嬉しいです。
それではこれからよろしくお願いします!
現在は原作開始の13年前ぐらいです!