(完結)鹿野岸奇譚(デジモンサヴァイブ)   作:アズマケイ

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ミユキをさがす5日目

 

教授が教えてくれたとおり、こちらの島には昭和の雰囲気がただよい、どこか懐かしさを覚える商店街や集合団地があった。

 

ミノルたちを探したが見つからない。仕方ないから、もうひとつの目的を優先しよう。俺はiPhoneで認識したアイテムを回収しつつ、商店街の中に足を踏みいれた。中に入り、あたりを物色する。

 

お目当ては食品売り場がある小さなスーパーの生鮮食品売り場だ。学校にある避難所用の保存食のように、商品はなぜか新品だ。賞味期限が50年前で切れていることに目をつぶれば普通に食べることができそうだ。別に持って帰るわけじゃないから気にすんな、コテモン。

 

次は真向かいにあった本屋だ。50年も前だと消費税もないから週刊少年ジャンプは80円だ、合併号だからか少し高い。主な連載陣はというと......俺がギリギリ知ってた漫画家は永井豪先生、ちばてつや先生、松本零士先生。でも作品名は全然出てこなかった。爺さんあたりに聞いたらわかるかもしれない。

この他、赤塚不二夫先生や水島新司先生の読み切り作品が載っていた。

 

この当時はやっぱり野球漫画、それもジャイアンツが登場する作品が多い。魔法や妖物ばかりでスポーツ漫画がついにゼロとなった今のジャンプと比べてみると、題材の流行り廃りがはっきりしている気がする。

「やっぱ50年前ばっかだな」

 

ジャンプを商品棚に戻して、俺は外に出た。誰もいないならちょうどいいや。近くのベンチに座った俺はiPhoneの電卓アプリを起動した。

 

「なにしてんです、旦那?」

 

興味津々でコテモンがベンチに上がると、こちらを覗き込んできた。

 

現実世界の1時間がケモノガミ世界の10日に相当するなら、現実世界の1日は24時間だからケモノガミ世界は240日経過することになる。現実世界の一ヶ月ならケモノガミ世界の7440日。現実世界の1年ならケモノガミ世界の89280日。なら、現実世界の50年は?

 

俺は4464000日というとんでもない数字が弾き出されたもんだから、思わず指が止まる。365で割れば一年で計算したら12230年だ。どっかで聞いた数字だな。

 

「コテモン、遊園地ができたのはたしか、12230年前だよな?」

 

「そうだぜ、スバルの旦那。あらためて計算なんかしてどうしたよ。現実世界の1時間はこっちの10日くらいだって計算したろ?」

 

「いや、そうなんだけどさ。初日にコテモンがいってたこと思い出してな。『主』の霧に人間が引き摺り込まれたら、一時的に霧が晴れて、その人間の記憶から生み出された新たな場所が生まれるってやつ」

 

「あー、たしかにいったな。それがどうしたんでい」

 

「もしかして、12230年前にできた場所ってのは、遊園地だけじゃなかったりするのか?」

 

「てーと?」

 

「電波塔とか、ダムとか、学校とか。もっといえばこっちの島にある商店街や集合団地なんかも全部12230年前にできたんじゃねえのか」

 

「うーん、この辺りにくるのは初めてだからねえ、西を管轄してる十二神将に聞かねえとわからねえや。だがスバルの旦那のいうとおりだと思うぜ、たぶん」

 

「だよなァ......ここまで50年前の日付出されたら間違いねえわ。なあ、コテモン」

 

「なんだい、旦那」

 

「お前、神隠しにあった人間をパートナーに出会うまで人間案内してやったことあるんだろ?」

 

「いったねえ、そんなことも」

 

「水無瀬ミユキと水無瀬アキハルをレナモンとガブモンに引き合わせたのはお前か?」

 

「さあ、どうだったか。人間の名前いちいち覚えてねえからわからねえや」

 

「わからねえわけねえだろうよ、この二人が迷い込んで、ガラッとこの世界が今みたいに変わったはずだ。水無瀬教授が生きてる以上、水無瀬ミユキが『主』に引き摺り込まれなきゃこんな世界になってねえはずだからな。シェンウーモンの配下で十二神将やってたはずのお前なら、クンビラモンからなんかしら予知受けて動けるはずだろ。俺の知ってるコテモンは小学生ふたりが迷い込んできたらほっとくはずがねえからな」

 

「......こういうとき、パートナーが頭回ると困るんだよなァ。でも、俺がしたのは前話したとおり、引き合わせるまででさァ。あの子たちは北側に帰るヒントがねえとわかると旅立っちまったからな。『主』の配下から守れるのは北にいるときだけでぃ」

 

「ほんとか?」

 

「もちろん」

 

「じゃあ、コテモンから見てあの水無瀬ミユキはなんなんだ?『主』に引き摺り込まれたら、普通は助からねえんだろう?」

 

「さあ......」

 

「コテモン」

 

「マジでわかんねえんだから、仕方ないじゃねーかい、旦那。あんときみたいに助けを求められたらいくらでも手は貸すがね、オレらは『主』の配下を殺すことはできても『主』はどうすることもできねえんだよ」

 

「助けてはいたんだな」

 

「まあねぇ......次あったときはすでにああだったからなァ。なんかあったんだろうとは察したが、オレらに迷惑はかけらんねえからってすぐ出ていっちまうから、いつしか霧が出てねえ場所まで同行するのが当たり前になっちまってたな」

 

「ずっとああだった?ミユキもハルも?」

 

「そうでさァ」

 

「なあ、コテモン。もしかして、『主』の配下が探してる贄ってのは、もしかして俺たちじゃなくてミユキのことじゃねえだろうな?」

 

「だったらどうしやす?」

 

「どうもしねえよ。得体がしれねえから調べはするけど、二人が俺たちに危害加えねえ間は仲間だ。そんな昔から逃げ回ってるなら俺たちが死んでも生き残れるってことだろうし、タクマたちにいったところでミユキたちを『主』に差し出すような真似するやつなんかいねえだろ」

 

「スバルの旦那もしねえだろ?」

 

「あたりまえのこというなよ」

 

「それでこそ、オレの自慢のパートナーだぜ。ところでミユキとハルに話はすんのかい?」

 

「『主』をどうするのかタクマたちが考え始めたらでいいんじゃねえかな。だってハルはあれだろ、ジジモンみてーに巻き込みたくない半分、諦め半分、期待数ミリって感じがするしな。しばらくは『主』の配下がミユキを誘拐しねえように目を光らせた方がいいかもしれねえ。いくらハルでも一人じゃキツいだろうしな。教授と合流してから、なんかハルのやつミユキから離れて一人でいることが多くなってやがる」

 

「あー......張本人が12230年ぶりにこっちの世界にきちまったからねえ......ミユキはアキハルだと認識出来てねえだろうが、ハルは違うか」

 

「違うだろうな。ミユキはなあ......人間だとは思うんだよな。人間どうあがいても120年しか生きられないって言われてんのに、100倍の長さを生きてんだ。あんだけボーっとしてんのも無理ねえのかもしれない。ただ年取らねえのが明らかにおかしい。なんかあったんだろうが、それを教えてもらうにはハルに頼りになるって思ってもらわなきゃ無理だろ」

 

「違いねえや」

 

「うん、やっぱあれだな。ミノルたちには頑張ってたち治ってもらわねえとだめだ。あとはガブモンだっけ、教授のパートナー探さねえとな。12230年もたってたら、相当転生繰り返してるか、何かしらの強さは得てるはずだしな」

 

「どうしやすか?」

 

「んー、ミユキ探すか。ハルはなんとかする手段がある方だろうから。ハルといたらミノルたち探してみる」

 

「わかりやしたぜ、旦那。そういやミユキは海岸の方にいやしたね」 

 

「そっちから先に回るか」

 

俺たちはミユキを探して商店街を後にした。

 

 

 

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