「あぶねえ、スバルの旦那!!」
いきなり俺とミユキはヴァジラモンに吹っ飛ばされた。とっさにミユキを庇った俺はそのまま地面にたたきつけられる。痛みに耐えながらのろのろと顔を上げるとさっきまで俺がいた場所の真下に魔方陣が出現し、下からビームが発射された。
「ヴァジラモン!!」
ヴァジラモンが直撃して空中に放り投げられてしまう。ヴァジラモンが痛みに顔を歪ませながらパオチェンでビームを両断し、その下にあった魔方陣が細切れになってビームがかききえた。
「ちゃちい技なんて使ってないで姿を現したらどうだい、卑怯モンがァ!!」
パオチェンが幾度も地面に突き刺さり、斬撃が四方八方50メートルに渡り広がっていき、衝撃波があたりに震撼する。近くにあった集合団地の棟や駐輪場、錆び付いていた自動車がふっとばされたり、崩壊したり、空間がずたずたに引き裂かれていく。魔方陣が出現しかかっては何十にも亀裂が走り、出現する前に光が消えていく。光が収縮し、なにかが現れようとするたびにパオチェンの餌食になった。
「ちい、ちょこまかと!!」
ヴァジラモンは乱暴に血を拭いながらあたりを見渡し、魔方陣が発生するたびにその空間ごと切り伏せていった。
「ふっふっふ、戦況を一瞬でひっくり返すにはどうしたらいいか、教えてさしあげましょうか」
「スバルの旦那っ!!」
いきなり真後ろから巨大なカマが俺の首元に突きつけられたもんだから、固まるしかなかった。ミユキが呆然と座り込んでいる。
「ミユキに手ェ出してみろ、許さねえからな」
啖呵をきる俺に後ろから嘲笑がふってくる。ヴァジラモンは舌打ちをして俺の真後ろにいるなにかをすごい形相でにらみつけた。
「それはですねえ、戦局のキーマンとなるケモノガミを死角から一撃で屠ること。そうすれば一瞬にして戦況をかえることができる。失敗したとしても、そのケモノガミにパートナーたる人間がいるならば話は別だ。強さをあたえると共に弱点でもあるのだから、こちらを屠ればいい」
おそるおそる顔を上げると、トランプのジョーカーみたいなやつが立っていた。俺に気づいたのかにたりと笑っている。
「そうすればキーマンもろとも死ぬのだからたやすいものだ。そうでしょう、アルケニモン?」
「いいところに来てくれたねえ、ジョーカーモン。そのまま人質にとってくれりゃあヴァジラモンは動けないわけだ。さあ、なぶり殺しにされるのをみてるがいいさ」
「なにを甘っちょろいことをいってるんです?」
「なんだって?」
「最後のチャンスだからと見に来てみれば馬鹿の一つ覚えみたいに精神攻撃ばかりして。出会ったばかりならともかく、逆に結束を固めるばかりじゃありませんか。人間もケモノガミも似たような苦境にばかり立たされるといいかげん耐性がつくんですよ」
「なっ!?」
次の瞬間、アルケニモンと俺を拘束していたカマ目がけて無数のコウモリが襲いかかってきた。アルケニモンはあっというまに見えなくなり、断末魔が響き渡る。カマが払い除けられ、俺は地面にそのまま尻餅をついてしまった。
「ほらもう戦いが始まっているではありませんか、カイト。あなたのつまらないプライドのせいで、親友のピンチにまた出遅れていますよ」
「う、うるせえな!遅れて悪い、スバル!」
「カイト!」
「私はヴァンデモンと申します、以後お見知りおきを。さて、私は抹殺した敵を傀儡として復活させることができましてね。面白いものをみせてさしあげましょうか」
ヴァンデモンはサングルゥモンの進化先だろうか、あれも吸血狼のケモノガミだって話だからそのまま吸血鬼に進化したらしい。よかった、カイトとドラクモンは通過儀礼を無事に突破できたらしかった。
ヴァンデモンが指を鳴らすと、アルケニモンによく似たケモノガミがコウモリからでてきた。
「これであなたの味方はいなくなりましたよ、どうします?素直に引いた方がみのためでは?」
ヴァンデモンの挑発にジョーカーみたいなケモノガミは不敵に笑うだけだ。
「なにがおかしいんでぇ」
「戦局がよくわかっていないのは、貴方たちの方ではありませんかな?」
「なんですって?」
「ヴァジラモンが必死に私の魔方陣を掻き消していた理由がおわかりでない?この人間を助けるより先に私を倒すべきでしたね、たった今進化したらしいあなたでは無理ですけども。私は通りすがりの切り札と言われてましてね、私が味方した側は必ず勝つと言われているのですよ。それはなぜか?物分かりの悪い貴方たちに、直々に教えて差し上げましょうか。それはねえ」
カマを振り上げた道化師が跳躍し、広場の蛍光灯に飛び乗った。そして両手をかかげる。
「来るぞ!!」
「カイトはスバルとミユキをつれて、はやくここからお逃げなさい!!」
無数のコウモリが俺たちをつつみこむ。
「みなさまご機嫌よう。そして、さようなら」
無数の魔方陣の向こう側に黒い螺旋が生えてくる。その中央に歪な空間がのぞく。ここではないどこかだった。暗くて中はのぞめないが、真っ赤な目がふたつみえた。全身がフルメタルに覆われたケモノガミがこちらを見つめているのがみえた。数々のサイボーグのパーツを組み合わせて造られており、見上げるほどの巨大だった。そのケモノガミの背後には巨大な大砲のようなものがあり、じわじわと光が集束していくのが見えた。
「無限キャノン!!」
正体不明のケモノガミが咆哮した瞬間、さっきまで俺たちがいた場所が巨大なエネルギー咆によって跡形もなく吹っ飛ばされてしまった。集合団地の棟がいくつも轟音と共に崩れていき、残ったのは巨大な穴が2つ。そこから亀裂が走り一気に瓦解していく。
コウモリが四散し、俺たちを商店街まで連れてきてくれたらしいヴァンデモンが逃げるよう促してくる。ミユキは力が抜けて立てないらしい。俺は痛みで背負えない。カイトが見かねてミユキを背負ってくれた。
「ふっふっふ、何処へ逃げようというのです?私が神出鬼没なのは見ているでしょうに芸がありませんねえ」
道化師がカマを振るうとまた空間が歪み、大小さまざまな魔方陣が空中に出現していく。
「ジョーカーモンめ、めんどくせえ事ばっかしやがって。自分で戦いやがれ」
「いやですねえ、タイマンだと私に勝ち目ないじゃありませんか。お互い何万年も戦ってきた仲じゃありませんか、また死んでみたらどうです?どうせあなた遊園地で復活するんですから。あ、今はパートナーがいるから人間が死んだら復活できなくなるんでしたっけねえ!?」
ニタニタ笑いながらジョーカーモンと名乗ったケモノガミが蛍光灯を飛び移りながら挑発してくる。
「なるほど、ヴァジラモンあなた普通のケモノガミじゃないんですね。色々知りすぎていておかしいと思ってはいましたが敵じゃないなら話は後でいい。つまり、ジョーカーモンとヴァジラモンを一騎討ちできる状況にすればいいわけですね、なら話がはやい」
ヴァンデモンがヴァジラモンと共にまたコウモリとなって別の空間からぶち込まれるジョーカーモンじゃないなにかの必殺技をかわしてくれる。
「威力は凄まじいですがタイムラグがある。ヴァジラモンでかわせる魔方陣など私の敵ではない。なら頭を使えばいい。いきますよ、ヴァジラモン」
「そうだな、だからオレはスバルの旦那たちに賭けることにしたんだからよォ。ほかの十二神将たちに、四聖獣様達に思いださせてやってくれ。かつて世界がひとつだったころみてえな、ケモノガミと人間の無限の可能性ってやつをな!!」
話の半分も飲み込めなかったらしいカイトが目をぱちくりさせながら俺を見てくる。
「いや、俺も知らねえ話ばっかだから。こっちみんな」
「お前でわかんねえなら俺もわからねえんだよ、しっかりしろよ」
「理解放棄すんな、脳筋」
「うっせえ」
「ナチュラルに暴力が選択肢に入るお前のパートナーがなんでこんな賢いんだ、カイト」
「うっせえばか」
ちょっと気にしてるらしいカイトがマジ切れしてきたので黙ることにする。俺たちにできることは邪魔にならないようミユキを守りながら逃げることだけだ。