(完結)鹿野岸奇譚(デジモンサヴァイブ)   作:アズマケイ

3 / 68
コテモンと仲良しになるタイプの1日目

ケモノガミを祀る神社の禁足地にある遺跡の底が抜けて、俺は外の崖下まで落ちてしまったようだった。ずいぶん長く気絶していたようで目を覚ましたら誰もいなかった。iPhoneは圏外、文字化けメールがたくさん届く。ホラーのお約束ばかりだ。神隠しの当事者になってしまったという絶望感に苛まれながら、俺はカイトたちを探しながらあたりを彷徨い歩いた。

 

「げ」

 

なんか、霧が濃くなってきた気がする。爺さんから絶対に霧に近づくなと言われていた俺は真っ先に霧から逃れるべく走り出す。

 

なんか後ろから気配がする。iPhoneであたりを撮影するふりをしながら後ろを撮ると、後ろを振り返ると巨大な蜘蛛の脚を持つ牛みたいな胴体をしたケモノガミっぽいシルエットが見えた。

 

どっと汗が噴き出すのがわかった。俺はあわてて走り出す。音はしないのに濃厚な殺意と執拗に背後を追いかけてくる気配だけが迫り来る。

 

「オレのパートナーに手を出すたぁ、いい度胸だな」

 

なにかが振り下ろされる音がして、牛が絶叫するような鳴き声がした。そして、すさまじい衝撃波が飛んできて、俺は一瞬宙に浮いた。地面が裂けた。50メートルほど裂けた。すぐ真横が土砂崩れを起こしてなくなってしまう。体制を崩した俺はそのまま転がり落ちた。そのまま意識が飛んでしまう。

 

「あっ、やべっ」

 

気づいたら、俺は土砂が散乱する山道まで落ちてしまったようだった。泥だらけの体を払っていると、手拭いを渡された。顔を上げると剣道の防具を着ている爬虫類みたいなケモノガミがいた。

 

「あーよかった、目ぇ覚ましたみたいですねい、旦那。体は大丈夫かい?痛くない?」

 

「お、おう、ありがとう」

 

手拭いを受け取って体を拭いてみる。打撲やらかすり傷ができてるが、あの高さから落ちたにしては軽傷みたいだ。もしかしてこいつが助けてくれたんだろうか。

 

「もしかして、あのケモノガミから助けてくれたのか?」

 

こんなちっさいやつがあの蜘蛛と牛の合成みたいなケモノガミを一撃で屠るとは思わなかったが、シナイを持ってるこいつしか俺を介抱してくれそうな奴がいない。すごい力の持ち主みたいだ。

 

「いやあ、危ないところでしたねい。オレがこなけりゃどうなってたことか」

 

「ほんとにな!マジで助けてくれてありがとう」

 

「どーいたしまして。調子こいて怪我させちまって申し訳ない。オレはコテモンていうんでさあ、ところで旦那の名前は?」

 

「俺?俺か?えーっと、スバルだ、スバル。三鷹スバル」

 

「スバルか、いい名前だねえ旦那」

 

「そりゃどうも。なあ、コテモン。ここってあれか?神隠しにあったやつがくるっていう、門の向こう側?」

 

「よく知ってるねえ、久しぶりに聞いた言葉だ。大抵のやつらはわけわかんねえまんま、こっちに来ちまうからなあ。スバルの旦那は話が早くて助かるぜ、さすがはオレの相棒だ」

 

「あはは、いきなり相棒認定かよ」

 

「当然だろぉ?こちとらスバルの旦那が生まれてから軽く1428480日、だいたい3914年ほど待ってたんだ。相棒じゃなきゃなんだってんだ」

 

「ばかいえ、俺まだ16だぞ。んな年寄りじゃねえよ」

 

「あらま、そんなにあっちとこっちじゃ時間の流れがちげーのかい?そりゃまためんどくせえことになってんなあ」

 

「は?待て待て待て、時間の流れがちがう?そりゃどういう意味だよ!」

 

「どうもこうも、他に言いようがねえだろう?オレはスバルの旦那が産まれたから産まれたわけでね、何日経ったかずーっと数えてるわけよ。間違ってるわけがない。スバルの旦那も歳を間違えるような馬鹿なわけがない。なら答えはひとつ。違うかい?」

 

「そういやそうか......そーいやコテモン。ここってやっぱ爺さんがいってた彼岸なのか?」

 

「さあねえ......神隠しで子供が消えちまうたびにそっちの世界のもんがでてくる変なとこなのは確かだな」

 

「えっ、神隠しでこっちにくるんじゃねえのかよ」

 

「いんや、子供が消えちまうのは別モンだ。霧がどーとかいう話は伝わってねえのかい?」

 

「それは知ってる」

 

「霧がやべーのはこっちも同じさ。オレたちも迷惑してんだ。いきなり霧が濃くなってきたかと思ったら人間だろうがオレたちだろうが見境なく引き摺り込みやがる」

 

「引き摺り込む!?」

 

「他に言いようがねえんだよ、旦那。なんつーかこう、人間の手みてーなやつがたくさんでてきてすげえ力で引き摺り込んじまうのさ。よっぽど運がよくなけりゃまず助からねえ。のまれたら終わりだ、消えちまう。だから悪いことは言わねえぜ、スバルの旦那。霧が出てきたら、真っ先ににげな。アンタに死なれるとオレも困るのよ、さすがに死にたかねえや」

 

「えっ、そうなのか?」

 

「ここに迷い込んでくる人間にはかならず対応するオレたちみてーなやつがいてな、霧に引き摺り込まれたら最後そいつまで消えちまうのよ。せっかく会えたのに引き裂かれちゃたまんねえだろ?」

 

「たしかにそれはやだな。お前いいやつみたいだし。えーっとそうそう、じゃあコテモンが死んでも俺死ぬのか?」

 

「いんや、オレは卵になる。卵がかえるまでスバルの旦那を守れるやつは誰もいなくなっちまうな」

 

「げ、マジかよ。お前らケモノガミって神様の癖に卵生なのか。つーかそれは困るな普通に」

 

「な、困るだろ?だから霧には近づかねえ方がいいぜ、旦那」

 

「わかった、色々教えてくれてありがとうな、コテモン。マジで助かった」

 

「で、スバルの旦那はこれからどうしたいんだ?」

 

「そうだなぁ......たぶん、俺以外にもこっちに迷い込んでる奴がいるはずなんだよ。そいつらと合流してから帰る方法考えなきゃなあ......。コテモン、運良く知ってるとかないか?」

 

「いやあ、残念ながらそればっかりはオレも知らねえや。なにせそっちにいったことねえし、急にいなくなったやつなら知ってるがこっちからいったのか霧にのまれて死んだのかわからねえ」

 

「そっか、そりゃそーだよな......ケモノガミが出たってなったら爺さんたち大騒ぎするだろうしなあ......」

 

「ここで悩んでても埒があかねえや。どこいきやすかい?」

 

「うーん、じゃあ、まずは遺跡と神社にいくか。門がまだ開いてるか調べてみる」

 

「わかった、案内してやるからついてきな。こっちだよ」

 

俺はコテモンに連れられて、こっちの世界に迷い込む直前までいた遺跡と神社にいってみた。あっちの世界とあんまり変わらない気がするが、違いは踏み荒らされた足跡が彼岸花を踏み荒らし、わかりやすい道になっていることだろう。

 

コテモンが前に見かけた人間がやってたとかどうとかいうので、見よう見まねでiPhoneのカメラモードであたりを撮影してみた。変なノイズが走るあたりにはコテモンたちケモノガミが好む食べ物や真新しい治療道具があった。コテモンには見えて、俺には見えないものがカメラを通して認識すれば見えるようになるのはいかにもホラー映画とかゲームっぽい気がする。コテモンは絆創膏はるだけで傷が塞がるから、やっぱり神様なんだろう。

 

さっきからバッテリーが全然減ってないあたりからして、もしかしたらこっちの世界は電気とかを媒介にして現れてたりするのかもしれない。

 

「どうだ、コテモン?」

 

「やっぱダメだな、スバルの旦那。塞がってらあ」

 

「やっぱかあ......そんな気はしたんだよな」

 

遺跡の奥の方は、上に穴は空いてたんだが、コテモンに上の方に上がってもらったがあっちの世界に繋がっているわけではなさそうだった。外に出ると上の方からコテモンが飛び降りてきた。

 

「次はどこいきやす、旦那?ちなみにこのあたりは霧がよくでるから野宿はおすすめできねえな」

 

もう日が傾き始めている。これはたしかに早いとこ決断するのが早いのかもしれない。

 

「できたら霧が出ない屋根があるとこで野宿してーなあ......」

 

「それはオレも同感だ。最近はどこもかしこもすぐ霧が出やがる。安全地帯も減ってきて困ってんだよ」

 

「まじかよ、いつかこの世界霧に沈むんじゃねーのそれ?」

 

「笑えねえ冗談になりつつあんだよな、正直なところ」

 

「うわあ......はやいとここの世界から脱出しないとやばいじゃねえか。なあ、コテモン。野宿は我慢するからさ、こっちのこと詳しいケモノガミっていねえの?長老的な」

 

「長老ねえ......ぶっちゃけオレはこっちではかなり古参になんだが、それ以外ってなるとやっぱあれだな。ジジモンだ」

 

「ジジモン?」

 

「この世界ができる前からいるって話だ、本人は十何年前とかサバ読んでるけど。だいたいのことは知ってんじゃねーかな。ただ、食えねえ爺さんだから確信ついたこと言わねえとなんも教えちゃくれねえのよ」

 

「へえ......いいこと聞いた。それならカイトたちもジジモンに話聞きにくるかもしれねえな」

 

「なんつーんだっけ、キラキラした馬とかものすごいスピードで走る乗り物とかたくさんある場所に住んでるぜ」

 

「それってまさか遊園地とかいう?」

 

「そうそう、それだ遊園地だ。12230年前にできた場所でな、パートナーに会えねえケモノガミは死んだらそこで卵に生まれ変わるのよ。んで、また人生最初から。ちっこいあいだはジジモンが守ってくれるのさ。だからちっせえケモノガミしかいねえ」

 

「コテモンよりずっと昔じゃねえか、大丈夫なのかよそれ」

 

「なんかできた当時のまんま劣化しねえんだ、こっちは」

 

「へえ、時間が止まってんのかな。じゃあ大丈夫か、よかった。遊園地、遊園地か。なら野宿するのも楽そうだな、ありがとうコテモン。とりあえず遊園地目指していってみようぜ」

 

「よしきた、それなら1日どっかで野宿だな。そこに行くには山を越えてかなきゃなんねえんだが、オレが寝床にしてる洞穴があんのよ。とりあえずそこまで目指そうぜ、スバルの旦那。日が昇ったら出発だ」

 

「わかった、道案内よろしくな、コテモン」

 

「いいってことよ、これからよろしくなスバルの旦那。あ、そうそう、さっきのケモノガミ、ギュウキモンて奴なんだが取り逃しちまったんだ。絶対1人になっちゃいけねえよ、なんでか目をつけられるみてーだかんな」

 

「それを先にいえよ!!つうかなんで生まれる前のジジモンの歳まで知ってんだおまえ」

 

「あっはっは」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。