(完結)鹿野岸奇譚(デジモンサヴァイブ)   作:アズマケイ

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バイフーモンの試練6

俺とガイオウモンに課せられた最後と思われる霧幻の追憶で用意された戦場はあまりにもきついものだと突きつけられていた。

 

『主』の霧に飲まれて視界が真っ白になるたびに小さなケモノガミたちの断末魔が響き渡る地獄に呼び戻されてしまう。遊園地の破壊のかぎりをつくすムゲンドラモンたちに思いつく限りの方法で挑んでみるのだが、たった一人で勝利をもぎ取るのは無理だとガイオウモンがこぼすくらいには全然勝てなかった。賽の河原で石を積んだ方がまだ終わりそうな気すらしてくる。

 

そのうち、ジジモンたちをどうすれば早く逃がせるか、ダメージをなるべく追わないようにするにはどうしたらいいかくらいはわかるようになったがそれだけだった。ここはありえた未来において三鷹スバルの最期の記憶からできているのだ。ジジモンたちがはやく逃げられても助太刀が来るわけではないし、戦いが長引いたところでシェンウーモンがすでにミユキに取りついている『主』に殺された事実は覆せない。シェンウーモンの加護が失われガイオウモンは弱体化しても、封印の枷がなくなった主からエネルギーを供給されているムゲンドラモンは強くなることはあっても弱くなることは絶対にないのだ。

 

なにより『主』の霧に飲まれかけている遊園地は穢されてしまい、ガイオウモンのガイアリアクターに使えそうなエネルギーが確保できないのである。大爆発を起こしてもせいぜい修復モードにする時間をかせぐだけ。壊しても壊しても機械型ケモノガミの部下が自殺してパーツを提供し、エネルギーが無尽蔵に供給されるムゲンドラモンが修復を完了して再起動してしまう。

 

「俺らが死んだ後、たぶんジジモンが助けを呼びにいってくれてタクマたち来てくれたんだろうけどさ。よく勝てたなムゲンドラモンに」

 

「まあ、オレが奮闘した分ムゲンドラモン軍にダメージはそれなりにあったろうしね。それにあっちはまだ6人もいるんだ。死ぬ気で戦えば進化もできるだろうし、なんとかなるんじゃねえかなあ......。犠牲のひとつやふたつはありそうだが」

 

「あー、そっか。タクマたちにとってはまだまだ地獄は続くわけか」

 

「そうなりやすね。どんな未来をみてんのやら」

 

「なあ、ガイオウモン。俺らが勝てない間にたくさんの並行世界みることになるタクマたちと差が開いちゃわねえか?」

 

「チャツラモンはそのあたりしっかりしてるから、ちゃんと調整はしてくれると思うんだがねえうん」

 

「なんか自信なさげだなオイ」

 

「いやだって、さすがにオレもこれ以上作戦思いつかねえからさ」

 

「だよなあ......」

 

もはや原型をとどめていない城の城壁に身を隠しながら、いいかげん頭が回らなくなってきた俺たちはため息しかでてこなくなっていた。そのときだ。ムゲンドラモンの部下たちでもジジモンでもない声や音がしたのは。

 

「げ、この場に及んでまだ確認してない部下がいたのかよ」

 

「マジ?」

 

おそるおそる覗き込んでみると、それは敵ではなかった。明らかに今ここに飛ばされてきましたという顔をしてあたりを見渡しながら混乱している様子のリョウとシュウジがいたのである。俺は慌てて2人を呼んだ。

 

「いきなり全然違うところに飛ばされたから驚いたよ。きみがいてくれてよかった。ここは?」

 

「見ての通り、ありえた未来だよ。『主』に憑依されたミユキがムゲンドラモンたちに命じてシェンウーモンを殺すついでに遊園地破壊してるとこ。ケモノガミが転生できなくなるようにってな」

 

「もしかして、ここってスバルの記憶か?」

 

「そうそう、並行世界の俺が必ず死ぬ場所」

 

「おいおい、言い方」

 

「事実なんだから仕方ねえだろ、何回リトライしてると思ってんだよ。途中から数えるの諦めたわ。リョウとシュウジが来てくれてよかった」

 

「......きみ以外いないのかい?」

 

「あれ、ここまでの経緯知らねえの?」

 

リョウとシュウジは首を振った。ありえた未来において、ドクグモンたちに敗北した俺みたいな末路しかなかったらしく、修練にならないからとチャツラモンからひたすらケモノガミたちが湧き出してくるモンスターハウスに突っ込まされたとのこと。修練とはそういうものだと思っていたら全然違うからびっくりしたらしい。

 

俺とガイオウモンはとりあえずここに至るまでの経緯を簡単に説明した。自分の破滅の道を説明するのは苦痛以外の何者でもなかったけど、今の状況を打破するには2人のパートナーの力が絶対必要だ。背に腹は変えられなかった。

 

「スバルって案外思い込んだら修正効かないタイプなんだな、もっと頭柔らかいと思ってたよ。ロップモンはお前だってシュウジにいってたじゃねーか」

 

「どうしようもなくないかい、それ。そこまで偶然が重なったら疑心暗鬼にもなるし、ミユキたちに槍玉が上がるのは仕方ない気がするけど」

 

「......あの冷たすぎる目で辛辣なこと言われたせいでガキにびびってるなんてバレたら笑われると思ってたから、タクマにしか言わなかったんだよな。言わなくてよかった。まさかスバルがそーなっちまうとはなー。わかんねえもんだ」

 

「スバルはからかったりしないよ。ミノルじゃないんだから」

 

「まーな。でも、下手に頭回るとそっちの方向にいっちまうのか。スバルは頼りになるとは思ってたけど、完全に理論武装したやつが反対すると話が余計に拗れちまうんだな、怖」

 

「いいすぎだろう、リョウ」

 

「事実なんだからしかたねーだろ」

 

ボロクソである。俺はかなり凹んでいたが笑い話にしてもらった方が楽かもしれない。

 

「僕たちが戦ってきた見たことない敵は、ここで戦っていたんだね、リョウ」

 

「そーだな」

 

「おかげでどうやればダメージが与えられるかわかったよ。だからぼくたちに任せて」

 

「いけるかい?」

 

「うん、任せてシュウジ。ガイオウモンはムゲンドラモンをまかせたよ」

 

そこからは圧巻だった。

 

両腕のドリルで敵を串刺しにしながら陽動し、狭いところに誘い込んで地雷と一体化した虫が次から次へとムゲンドラモンの部下たちを自爆させていく。学ランをはためかせる真っ赤な二足歩行のケモノガミが激しい羽音を立てながら生き残った配下のケモノガミたちを殺していく。バンチョースティングモンとリョウに呼ばれたケモノガミは自慢げにドリルと化している腕を振り上げた。

 

優しく淡いピンク色の体色で見た目は聖母的な雰囲気があるケモノガミは、その可愛らしい見た目とは裏腹に巨大な雷雲を呼び、無数の雷を飛行能力があるケモノガミたちめがけて落とし、撃ち落としていく。かわした相手には雷が槍のように実体化させて貫いた。

 

バンチョースティングモンとケルビモンも周りの掃討をおえたらすぐに加勢してくれた。

 

「すげえや」

 

「やっぱ加勢があると違うねえ」

 

「オレも負けてらんねえな!」

 

ムゲンドラモンの砲台めがけて剣「菊燐」を合体させ、その怪しい光を一気に集中させて遠方の敵を討つ『燐火撃(りんかげき)』を乱射し、時間をかせぐ。そしてガイアリアクターで砲台の接合部を大爆発を起こしてその隙に一気に近づいて自重で潰れた砲台が動きをとめるのを好機に愛刀を振り上げる。真っ赤な斬撃がムゲンドラモンに超至近距離から襲いかかった。

 

さっき負けたときよりガイオウモンの一撃の威力が明らかに上がっていることに気づいた。ムゲンドラモンの装甲に走る傷が明らかにでかくなっている。もしかしたらガイオウモンは戦えば戦うほど強くなるケモノガミかもしれないとふと思う。

 

断末魔が響き渡る。大爆発が遊園地の中心で起こり、晴れたとき立っていたのはガイオウモンだけだった。

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