(完結)鹿野岸奇譚(デジモンサヴァイブ)   作:アズマケイ

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激情ルート(鹿野岸奇譚ver)

 

異変が起きたのは、ムゲンドラモンの軍勢がスバルの最期を嘲笑したときだろうか。それともジジモンから校舎に匿ってくれと頼まれたときだろうか。行き先が同じならスバルを拒否する必要はなかったとカイトが指摘したときだろうか。

 

ハルを『主』のところに送ったと平然と言い切るスバルが恐ろしかったのは事実だ。仲間だったはずなのに、『主』の霧に送り込むなんて死ぬよりえぐいことだとスバルは知っているはずなのに。いくら殺しに来たとミユキがこの世界を破壊して回ってるとスバルがいっても、先に恐怖が来てしまったのだ。

 

「いうだけなら楽だよな、10日間も何してたんだよお前ら。まさか一歩も出ずなのか?ミユキがずっと襲撃してたわけじゃねーだろうに。ミユキを助けるんじゃなかったのか。助けに行けよ、殺してほしくねえんなら」

 

スバルは邪魔した水無瀬教授とミユキを助けたいと10日前と同じようにいいきっだタクマにそういって去っていった。その時言われた言葉がアオイの心をなぜかひどくえぐったのかもしれない。

 

四つ足歩行のケルベロモンが熾烈を極めるムゲンドラモン軍との戦いの最中、突然二足歩行になったあたりから、なにかおかしいとアオイ自身思っていた。ケルベロモンがいうには、ムゲンドラモンに供給されているエネルギーは途方もない悪意だから、それを断たないととまらない。でも四つ足だと噛み砕けない。だから生体外殻に包まれた全身はそのままに二足歩行になり、悪意に染まったエネルギーを供給するパーツを噛み砕くため両腕が発達した強靱な肉体へとモードチェンジし、両肩にあった頭が両腕の大きな頭に変化する異様な姿になったのだと話していた。

 

たしかにケルベロモンが人狼モードという姿になり、ムゲンドラモンに噛み付きながら零距離で炎弾をぶち込んだり、ダイナミックな動作から足の鉤爪を斬り下ろしたりして大ダメージを与えて戦いに貢献できた。必殺技である灼熱の業火『ヘルファイアー』は、変異前のケルベロモンと比べても格段に威力が強化されていた。

 

「あなたの正義がそうさせたのよ、アオイ。すごいわ」

 

進化できないけどムゲンドラモン戦に貢献できたとラブラモンは喜んでいたが、アオイは内心怖かった。今は亡きコテモンがラブラモンはもうひとりのアオイだといっていた言葉が無性に恐ろしく感じた。自分の中にこんな暴力性があるなんて信じたくなかったのかもしれない。

 

みんなぼろぼろだった。なんとかムゲンドラモンたちに勝てたが遊園地は跡形もなく破壊し尽くされていて、小さなケモノガミたちはスバルたちがジジモンたちを庇ってくれた子達以外は9割が死んだと聞かされた。ミユキはすでにいなくなっていて、タクマがいうミユキを助ける方法もジジモンからはあいまいな話しか聞けなかった。みんな校舎に帰る最中沈黙していた。

 

やっぱりミユキを助ける方法はみつからず、ムゲンドラモンが言っていた門に向かうという言葉を頼りに史跡に行くしかないということになった。

 

次の日。朝から小さなケモノガミ達の世話に明け暮れていたアオイたちは、何体か外に出てしまったとジジモンから聞いて手分けして探したのだ。そしたら『主』の霧が迫ってきて、それで?

 

「アオイさん、やめよ。無理に追いかけることないよ。私たちの修練は敵を倒すことなんだから」

 

「サキさん......」

 

「ほら、ひどい顔してるよ、やめよ、やめ。アオイさんが持たなくなっちゃうよ。ラブラモンが進化すらできなくなっちゃう」

 

「でも......でも......この世界の私は......」

 

「アオイさんじゃないでしょ。この世界のアオイさんだって頑張ったとは思うけど、うまくいかなかったんだよ。代わりに私たちがもっといい未来に連れてってあげなくちゃ」

 

「そうよ、アオイ。チャツラモンが言ってた未来に連れて行ってあげてって、サキのいってる意味だと思うわ。そんな顔してほしいわけじゃないと思うよ」

 

「でも......」

 

「アオイが嫌なら人狼モードにはならないから、ね?」

 

「だめよ、ラブラモン。だって今の私たちがピエモンに勝つには人狼モードしか......。ううんごめんなさい、ラブラモン。私嘘ついたわ。私本当は人狼モードいやなの、だってこの世界の私と同じことしてる......これしかなかったってことになる......私はこの世界の私とは違うって証明したいの。だからもう少し手伝ってくれる?」

 

この先でアオイたちはタクマがケモノガミ世界になんとか送り返したはずのピエモンと遭遇したのだ。この時点でピエモンはミユキに憑依している『主』に歌の力を使われて直々に呼び戻されており、感激して今度こそ門の向こうに敬愛する『主』と共に出撃する気満々だったのだ。その前に手土産をと襲ってきたのである。

 

アオイとサキがみたこの世界線の未来は2人にとって生き地獄のような未来だった。小さなケモノガミたちを人質にとられ、『主』の霧が迫り来る中無茶苦茶な選択肢をピエモンに突きつけられ、挙げ句の果てにアオイはサキたちと小さなケモノガミたちみんなを失った。怒りに我を失ったケルベロモンはピエモンに勝負を挑むが返り討ちにされ、力尽きて退化したラブラモンごと殺される寸前に悪夢が起きた。

 

ラブラモンとアオイから真っ黒なモヤが噴き出してきて、なんと彼女たちを融合、ケモノガミに進化させてしまったのである。

 

アオイたちの悲鳴を聞いてやってきたタクマたちを待っていたのは、恐怖と暴力をもって悪を討つ歪んだ正義の代行者がピエモンを咀嚼する様子だった。

 

悪人を咀嚼することだけに悦びを見出すケモノガミは体中に鋭い牙の並んだ口を持ち、その口は獲物を求めてガチガチと音を立てる。その異様さにタクマたちの引き攣った顔が忘れられなかった。

 

そのケモノガミの持つ技はどれも悪人を冥界に突き落とす凶悪さを秘めており、技の1つ「ヘルズゲート」は闇より巨大な口を出現させて悪人を丸飲みにし、飲み込んだ相手を断片化されたデータの屑にまで分解してしまう。

 

胸の牙を解放し黒き闇を解き放つ「ハガードクラスター」は、あらゆる物質も吸い込み全てを蒸発させていく。

 

そしてプルートモンが戦いに熱中するあまり発動させてしまう「ケイオスライツ」は狂暴の極みであり、体中の口で敵に噛みついては一咬みごとにデータをむさぼり喰う姿となり、おぞましき捕食者の様だった。

 

その全てでもってピエモンを断罪するところを見られてしまったアオイのかろうじて残っていた自我は完全に崩壊。本能の赴くままに冥界に堕ちるに相応しい罪人や悪人を求めて流浪し、獲物を見つければ一面を濃い闇に包みこんで捕食するために闇に溶けていった。

 

もちろん行き先は『主』に憑依されたミユキ、そして彼女に従う配下たち、眷属達、『主』を巣食う無数の怨念たちである。

 

ゆえにこれからアオイたちはピエモンとプルートモン、『主』いう悪夢の象徴たちと戦わなければならないのだが、あまりの残虐さを目の当たりにしてアオイが挑む前から心が折れかかっている状態だったのだ。

 

アオイがケルベロモン人狼モードがプルートモンと符合するところがありすぎるが故に、強いとわかっていても嫌がるのは無理もない。サキも痛いほど気持ちがわかっていた。

 

「とりあえず、ピエモンをケルベロモンたちで倒す方法探そうよ、アオイさん」

 

「でも、どうやって......?」

 

「チャツラモンは強さはパートナーの強さだけじゃないっていってたじゃない。頼るのも強さだって」

 

「それはそうだけど、タクマくんたちはいないし......」

 

「そーじゃなくて、この子たちだよ」 

 

サキは何度も助けるうちにチャツラモンが引き継いでいいと言ってくれたため、戦うたびにそれなりに進化してしまった元小さい子達がいた。

 

「普通のケモノガミは進化したら元に戻らないみたいだし、強くなってくれたら心強くない?」

 

 

 

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