(完結)鹿野岸奇譚(デジモンサヴァイブ)   作:アズマケイ

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コテモンと仲良しになるタイプの2日目

すっかり日が落ちてあたりが暗くなり始めたころ、ようやく俺たちは遊園地に行く山道のハズレにあるコテモンの寝床にたどり着いた。生い茂った木々に隠されている上にiPhoneで見ないと入り口がわからないあたり、侵入者に見つからないことを徹底してる。それだけ霧が脅威なんだろう。ここまでしないと安心して寝れないってことだろうか。

 

「へえー、意外と広いんだな、コテモンの洞窟」

 

「だろい?」

 

人間が迷い込んで霧に消えるたびに出現する民家や建物から良さそうなものを掻っ払ってきたというそこは、ちょっとしたキャンプ場になっていた。コテモンはさっそく竹刀に不思議な力を使って火を飛ばし、焚き火をつけてくれた。

 

ゆらゆらと炎の明かりが洞窟全体を薄ぼんやりと照らす。ここは洞窟にあとから石を運び込んで作られたと思われる遺跡だった。あの禁足地にある祠と構造がよく似ている。よく似たタッチの壁画があり、ケモノガミ文字も刻まれている。

 

あの史跡の第三層にある東西南北に描かれた巨大なケモノガミのうち、北に描かれた亀みたいなケモノガミの真下に三体のケモノガミが描かれていた。

 

水無瀬教授が見たら喜びそうだ。

 

「撮っていいか?」

 

「これをかい?オレのって訳じゃねえから構やしねえさ。でもなんでまた?」

 

「たぶん、こっちにきてる教授......あー、遺跡を研究してるお偉いさんが喜ぶだろうなあって」

 

「へえ、お偉いさんがねえ......これまた大変なとこにきちまったんだな、可哀想に。ここらあたりはなんでか霧が出ねえんだ。寝床にするにはちょうどいいってね」

 

「いいとこ見つけたんだな」

 

「そういうことでい」

 

「ふーん、霧が出ねえってことはやっぱ神聖なもんなのか、これ......でもあそこはよく出るんだよな?」

 

「そうでさあ、原因は正直よくわからんね。オレが生まれる前からずーっとそうだったから」

 

「そっか。えーっと、北を守護する神は手足となる三体のケモノガミを作っ」

 

「うええっ!?」

 

「わああっ!?なんだよコテモン、いきなりでけえ声出すな、びっくりしたじゃねえか」

 

「あーあー、すまねえつい。まさか読める人間がいるたあ思わなかったんだよ、あっはっは」

 

「あー、なるほど?さっき言ったお偉いさんが教えてくれたんだよ」

 

「へえー、そいつはすげえや。一回会ってみてえなあ」

 

「俺も早いとこ合流したいな、教授もコテモンみてーなやつと会えてたらいいんだけど」

 

「卵になってなきゃ会いに行くと思うぜ」

 

「そういうもんか?」

 

「そういうもんでさあ、スバルの旦那がこっちにきたとき、ビビビビって電流が走ったかんな。だいたいの場所くらいならわかるぜ」

 

「へえ、そりゃすげえな。頼りにしてる」

 

「はっは、任しといてくれ」

 

軽口を叩きながら、コテモンが道すがら人間に害のないきのみを見繕ってくれたから、しっかり火を通して食べることにする。

 

「こうやって迷い込んできた人間を助けてんのか?」

 

「まあねえ、出逢っちまったらなんかの縁だ。死なれちゃ寝覚めが悪いだろ?だからパートナーと会うまでは付き合ってやることもあったさ」

 

「そっか」

 

「おうよ」

 

いったん会話が途切れた。パートナーと会えた人間がコテモンと別れた後どうなったのか聞いてしまったら、俺の未来が確定してしまいそうな気がして、さすがに言えなかったのだ。たぶんコテモンも気を遣ってくれたらしく、まだ真新しい毛布を出してくれた。

 

「明日は早いんだ、さっさと寝た方がいいぜスバルの旦那。火の番はオレがしとくから、限界になったら交代してくれい」

 

「おっけー、今日はありがとうな、コテモン」

 

「いいってことよ」

 

神隠しに遭ってどうなるかと思ったが、コテモンのおかげでなんとかなる気がした。おかげで疲れが溜まっていた俺はすぐ寝ることができたのだった。

 

 

 

 

 

目をつけられたみたいだ、というコテモンの警告は本物だったみたいだ。コテモンの寝床をあとにした俺たちは遊園地に続く山道を歩いているところだったのだが、あちらこちらから視線を感じる。昨日のあの殺意によく似た気配がしている。コテモン曰くギュウキモンの手下のドクグモンとコドクグモンというデカい蜘蛛みたいなやつらがたくさん潜んでいるらしい。

 

「ギュウキモンがこんだけ執拗に付け狙うのは初めてだぜ、旦那。アンタ、オレと出会う前になんかしたんじゃないだろうな?コロニー荒らすとか、喧嘩売るとか」

 

「知らねえよ、そんなの!?コテモンの方じゃねえのか、因縁つけたとか」

 

「うーん、てんで記憶がねえな。ただドクグモンたちは昔から手を焼いてるんでね、そのうち一体が進化しちまったのかもしれねえな」

 

「コテモンのせいじゃねえか!!」 

 

「いやーすまねえスバルの旦那。まさかこんなことになるたあ思わなかった。これは俺も進化するしかねえな」

 

「進化?なんだそりゃ」

 

「人間だって子供から大人、老人になんだろう?ケモノガミだって同じことがいえんのさ、人間と違うのは一瞬で姿形が変わること。普通は進化したら戻らねえんだがパートナーがいると大人と子供を繰り返すことができんのよ。だから普通より強くなれるって寸法さ。だからケモノガミは普通はパートナーに会えたら喜ぶのさ、誰だってこんな危ない世界死にたくねえんだから」

 

「あー、なるほど..................ん、待てよ?なら、コテモンも同じってことか?」

 

コテモンが俺の前に進み出る。ガサガサとわざとらしく音を立ててコドクグモン、ドクグモンと思われるケモノガミの大群が俺たちの前に現れた。あたりを見渡してみると周りを取り囲まれてしまっているようだ。

 

「理解がはやくて助かるぜ旦那。こちとら待ち焦がれすぎて昨日からテンション上がりっぱなしなんだ、わかってくれるだろ?男なら強くなりたいってのは本能なんだからよ」

 

コテモンの声が笑っている。なんて嬉しそうなんだろう。

 

「まして命より大切なパートナーと出会えたんだ、守らなきゃなんねえもんが増えた俺には怖いものなんてねーんだ」

 

コテモンはそういいながら竹刀を抜いた。

 

「みてな、スバルの旦那。ケモノガミは人間の可能性を拡張する存在だ。つまり、オレはアンタの可能性そのものだってこと、今ここで見せてやるよ!!」

 

その刹那、コテモンの足元を中心として突如突風が走った。眩い光を纏いながらその風はコテモンを包み込んでいく。

 

あたり一帯を覆い尽くすほどに存在しているドクグモンたちを薙ぎ払うように、その光から閃光が走った。ドクグモンたちが薙ぎ払われていく。圧倒的な数の暴力で俺たちを追い詰めるつもりだったらしいドクグモンたちはその光に近づくことすらできないらしく、じりじりと後退しているのが見えた。

 

また閃光が走る。それが刀の残像だと気付いたのは、光を突き破って巨大な二本の刀が現れたからだ。コテモンではなかった。白い仮面を被ったオレンジ髪の剣鬼が俺を守るようにしてドクグモンたちの軍勢に立ち塞がる。

 

「これが、しんか......?」

 

「そうでさあ、スバルの旦那。やっぱりパートナーがいると勝手が違うが悪い気はしねえ。同じ進化でも自力とは訳が違う。負ける気がしねえや」

 

仮面に阻まれて表情は臨めないがそいつは心底嬉しそうに笑っていた。

 

「ちいとばかり数が多すぎるんだよ、てめーら。仲良く喧嘩でもしてな」

 

2本の刀から怪しげな光が浮かび上がり、地面に突き立てられる。その瞬間からドクグモン、コドクグモンたちの挙動がいきなりおかしくなる。糸で味方を拘束したり、毒で攻撃したりとフレンドリーファイアが炸裂し、みるみるうちに軍勢が自滅していくではないか。

 

「さあて、そろそろ狩りどきってやつだね」

 

今度は2本の刀が開いて目がけて振り下ろされた。

 

「一刀両断!!」

 

ドクグモンが一撃で屠られた。吹き飛ばされた個体が別の個体を複数潰してしまった。昨日助けてくれたのはこの技だったんだろうか、それにしては威力が落ちてるような気がするのは気のせいか。

 

次々とドクグモンたちが葬られていく。

 

「すげえ......!!すげえじゃん、コテモン!」

 

歓声を上げるころにはあらかたの敵が片付いてしまったのだった。

 

「あ、今のオレはヤシャモンていうんでさあ、よろしく」

 

「ヤシャモンか、改めてよろしくな!」

 

握手しようと近づいた俺の目の前でヤシャモンはコテモンに戻ってしまった。

 

「あれ、戻っちゃったなコテモン」

 

「これがパートナーの力を借りた進化なんでさあ、これを繰り返すと進化の時間も長くなるし、強くなってく。ただし時間制限付きっていうね」

 

「あー、なるほど」

 

後ろからガサガサと音がする。俺はコテモンと顔を見合わせた。

 

「なあ、次はいつ進化できるんだ?」

 

「そうさねえ、とりあえず腹減ったからなんか食べないとダメだな」

 

「じゃあ、今襲われたら?」

 

「そりゃあ、逃げるしかないよ」

 

「ですよねー」

 

俺たちは一目散にドクグモンの援軍から逃げ出したのだった。

 

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