「まずはその軟弱な加護を剥がしてやろうか」
バイフーモンがマリンエンジェモンに襲いかかり、ガイオウモンたちを覆っていた加護がかき消されてしまう。
琥珀色の球体が音もなく静止した。そしてどんどん光りを増し、あっという間に俺たちの視界は白に覆い尽くされてしまった。
気づいた時にはマリンエンジェモンやウォーグレイモン、ケルビモン、ヴァロドゥルモン、ケレスモンメディウムが金属化していた。たった一撃で俺たちの仲間は半壊してしまったことになる。あまりの威力に俺たちは息を呑んだ。
バイフーモンは金属化したケモノガミたちには目もくれず、何故か金属化しないガイオウモンたちではなくスピードで金属化を免れたがアヌビモンに牙が剥く。たしかこの金属化は意識は残るようだからバイフーモンが殺生与奪を握っているらしい。『主』の配下や眷属は一体残らずその爪の餌食になり、絶命していたことを考えると、手加減してくれているようだ。
ベルゼブモンとガイオウモンがすかさずバイフーモンに攻撃を浴びせるが一撃で敵を屠ってきた必殺技すらバイフーモンに届く前に四散するか、その体に傷をつける前に12の琥珀の球体に邪魔されてはじかれてしまう。かわりに盾になった琥珀色の球体のひとつにひびが入った。まさかこの球体全部剥がさないとバイフーモンに攻撃が届かないやつだろうか。
「うげ、やっぱ球体壊さなきゃダメなやつか!あれ全部バイフーモン様の魂なんだよ」
「12個壊さなきゃなんねえとかそんな大事なこと早くいえ!」
「仕方ねえだろ、噂でしか知らなかったんだよ!見たのはこれが初めてだ!敵対したことねーんだよ!」
「ピラミッドパワー!」
アヌビモンは不思議な力でバイフーモンを四角錐の中に閉じ込めてしまうが、即座に破られてしまう。
「アメミッド!」
アヌビモンの足元に魔方陣が形成され、そこから沢山の人型のケルベロモンが現れた。そして琥珀色の球体目掛けてとびかかっていく。がりがりと腕にある犬の顎が球体を攻撃しはじめた。地獄の業火を思わせる火炎攻撃が球体をつつんでいく。
「トラウマに耐え召喚してきたか!その意気やよし。だが完全体で我に攻撃が届くと思うてか!」
球体が琥珀色に輝き始め、また俺たちの目を焼いた。光が消えた頃には人型のケルベロモンたちは一体残らず金属の銅像と化してしまった。
バイフーモンの高笑いが聞こえてくる。
「トラウマ?」
「アオイもなんかあったのか......無理すんなよ」
「もう大丈夫よ、ありがとう。人狼モードならケルベロモンより強いから行けると思ったんだけどダメみたい」
ガイオウモンがケルベロモンとベルゼブモンたちがヒビを入れた球体目掛けて急接近する。超至近距離まで近づいたガイオウモンが菊燐を抜いた。バイフーモンの聖地ゆえに蓄えられた神聖なエネルギーが集められ、白い光が渦となって収束していく。
「これでどうだ、ガイアリアクター!」
「支援するぜ、ガイオウモン!」
ベルゼブモンがすかさず二丁のショットガンで全弾をぶちこんだ。ガイオウモンの菊燐が振り下ろされる。怪しい光の軌跡を残し、その軌跡が十文字に琥珀色の球体を切り裂いた。
「すげえ、真っ二つだ!」
「ベルゼブモン、やれるか」
「ああ、まだ余力はあるぜ」
少しの沈黙、球体の斜め半分が斜めにずれる。それは光りを失い地面に落下した。ガラスが砕け散るような音がして、そこからガイオウモンが菊隣にさらにエネルギーを蓄えていく。
「なるほど、少しはやるようだ。ならばこちらも応えねばならんなあ!」
豪快に笑ったバイフーモンの纏う空気が様変わりした。明らかにこちらにまでビリビリとしたものがぶつけられ、ガイオウモンたちは身動きすら取れないのか明らかに動きが遅くなる。
「我が魂をひとつ奪ったのは汝らが初めてよ。少しばかり侮りすぎていたようだ、失礼なことをしたな、すまぬ。我らの世界の行末にまで心を砕いてくれたのだ、この程度なわけがなかったな!」
琥珀色の球体にガイオウモンがふたたび重圧を跳ねのけて一撃を入れる。ベルゼブモンも先ほどのように一撃を叩きこむ。だが真っ二つに切れたはずの球体が深い傷を負わせただけで破壊には至らなかった。
「どうした、どうした。汝らの覚悟はその程度か!」
バイフーモンが咆哮する。11となった琥珀色の球体からガイオウモンたち目掛けてまた強烈な光が襲いかかってきた。ガイオウモンは光を切り刻もうとするが11もある巨大な球体が四方八方に一斉照射するとさすがに無理だったのか、じわじわと金属化がはじまる。ベルゼブモンがとっさにアヌビモンを庇ってそのまま金属化してしまった。
「ガイオウモン!」
「ベルゼブモンまで......なんつー強さだよ」
光が消え去ったあとには2体の銅像がウォーグレイモンたちの仲間入りをしてしまった。とうとうまともに動けるのはアヌビモンだけになってしまった。たまらず俺はアオイをみた。アオイは手を合わせたまま祈るようにアヌビモンを見ている。
なんとかアヌビモンに助言することができないか、必死で頭を働かせる。記憶を探る。思い出せ、最初にウォーグレイモンたちが金属化したのにガイオウモンたちが金属化しなかったのはなぜだ。ガイオウモンたちはまともにダメージが通ったようだから相性の問題だろうか。
それともウォーグレイモンとガイオウモンになにか違いがあるのか?ガイオウモンとベルゼブモンとケルベロモン人狼モードにあって、ウォーグレイモンと普通のケルベロモンにないものは?違いといえば黒いやつとそれ以外しか浮かばないが、あえていうならケルベロモンよりケルベロモン人狼モードの方が邪悪な感じがした気がする。
バイフーモンがトラウマうんぬんいってたから、人狼モードは修練の時にアオイたちの前に立ち塞がった暗黒進化した姿なんだろうか?
「いくら人間の想いが強かろうと、パートナーとの絆が強かろうと、敵を倒せぬならば意味はない。強さに繋げられなければ所詮は絵に描いた餅よ。中途半端な強さなどなんの役にもたたぬ。どうする、降参するか?また修練に挑み再挑戦しても我は一向に構わぬぞ」
バイフーモンの勝利宣言にも似た言葉に首を振ったのはアオイだった。
「まだよ、まだやらせてください。まだアヌビモンがいるもの」
「しかしなあ、アヌビモンは我との相性が悪いであろう。召喚できる冥界の魔獣がこの程度では話にならんぞ」
「ベルゼブモンたちがアヌビモンを庇ってくれたんだもの、それに報いなくちゃいけないわ」
「アオイ......」
「私はもう覚悟したわ、アヌビモン。もう大丈夫、心配しないで。だからやりましょう、私たちにはまだ残された手があるもの!」
「アオイ......わかりました。あなたが覚悟を決めたなら、もう迷うことはありません。さあ、行きましょう、アオイ。バイフーモンに見せてやりましょう、私たちの覚悟を」
「ええ!」
アオイとアヌビモンがなにをいってるのかわからなかったのだが、じっとバイフーモンとの戦いを見ていたサキが驚いたように目を丸くしている。
「アオイさん......アヌビモン......やるの?」
信じられないという顔をしているサキにアオイとアヌビモンはうなずいた。
その時だ。禍々しいながらも邪悪な感じはしない不思議な光がアオイとアヌビモンを包みこみはじめたのは。光が消え去ったとき、アオイもアヌビモンもそこにはいなかった。そこにいたのは真っ黒な装甲に身を纏った、見たこともないケモノガミだったのである。
「我が名はプルートモン。バイフーモン、貴様に罪はないが我が前に立ちはだかるというのならば容赦はせぬ。それこそが罪なのだからな」
「アオイとアヌビモンが合体しやがった」
「そんなのアリなのか」
驚いている俺たちを尻目にサキが声を上げた。
「頑張って、プルートモン!バイフーモンなんかやっつけちゃえ!!」