(完結)鹿野岸奇譚(デジモンサヴァイブ)   作:アズマケイ

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チンロンモンの試練1

俺たちは壊滅状態になっている団地や商店街を抜け、西から東に伸びている大陸を横断し、地下水道に通じている海辺までやってきた。コテモンがマジラモンという十二神将と連絡をとっていたはずのチンロンモンの祠を目指して、ようやく目的地にたどり着いた。しかし、目印となる史跡がiPhoneのカメラモードをいくらかざしても見つからない。場所を間違えたのかと手分けしてみんなで探し回ったのだが見つからない。おかしいと思い始めたころ、俺とコテモンはようやくチンロンモンの祠の痕跡をみつけることになる。タクマたちを呼ぶため、俺は写真を載せながらグループLINEで一斉送信した。

 

「なんだこれ、ひでーことしやがる」

 

「うわあ、誰だよこんな罰当たりなことしたの」

 

チンロンモンの祠があった場所が跡形もなく消し飛ばされていたのだ。前撮影した画像と見比べてみる。背景の森の配置や海岸の位置からしてここで間違いないのに、なにも残ってはいなかったのである。カメラモードにしながら砂浜をさらってみると、ようやく祠の一部と思われる屋根や鈴、紅白の布、木片が次々と現れた。そのひとつを手にする俺を背後からタクマたちがやってきた。

 

「うわあ......」

 

「これはひどいね」

 

「跡形もないじゃん」

 

「これじゃチンロンモンとこにいけなくね?どうすんだ?」

 

「それだけじゃないよ、この海岸、ずっとノイズがひどいんだ。沢山のケモノガミたちの残滓が残ってる。もしかしたら、激しい戦闘があったのかもしれないよ」

 

タクマの言葉にチンロンモンの祠、これは明らかになにかあったとしかいいようがない。

 

「『主』の霧はあいかわらず出てないから、チンロンモンの影響下ではあるんだろうけど心配だね」

 

「たしかに団地とかはやばかったのに、この辺にきた途端、なんもなくなったもんな」

 

「んー、でもケモノガミの気配はしないよ、タクマ」

 

「なあ、もしかして、先越されたんじゃねえの?!祠ぶっ壊したのは俺たちが入れないようにするためで!」

 

「そんな......大丈夫かしら」

 

「バイフーモンあんだけ強かったんだから、大丈夫だってアオイさん」

 

「リョウの兄ちゃんのいう通りかもしれねえな......だとしたら相当まずいぜ。十二神将たちが先手打っただけならいいんだけどなあ」

 

「コテモン、ほかにチンロンモンとこに通じてる場所はねーの?」

 

「そうだねえ、普通に考えたら四聖獣様たちは地下の最深部におわすんだ。だから1番の近道は地下水道だね」

 

みんなの視線が地下水道に向く。

 

「そういえば教授に再会したとき、アグモンたちがとんでもなく強いやつが近づいてくるから逃げようっていってたよね。それってもしかして、『主』の配下じゃなくて十二神将だったのかな?」

 

「うーん、今思えば嫌な感じはしなかったよ」

 

「言われてみれば、たしかに。途方もないプレッシャーは感じたが、邪悪な感じはしなかったな」

 

「じゃあ地下水道から行けるかもってこと?急がなきゃやばくない?」

 

「敵の軍勢が待ち構えてるかもしれない、気をつけていこう」

 

シュウジの言葉にうなずいて、俺たちは地下水道の階段を降りることにした。『主』の霧は相変わらず出ていないがロップモンが暗黒進化しかかった曰く付きの場所だからか、道が狭くて挟み撃ちにされたらやばいからか、みんな緊張した面持ちだ。

 

真横の水路を流れる音だけがやけに大きく聞こえる。それが気のせいではなく、この先で行われている激しい戦いによるものだと真っ先に気づいたのは水路で移動していたシャコモンだった。ミウと目を合わせてうなずく。シャコモンはマーメイモンに進化した。マリンエンジェモンより早く移動できるからだろうか。

 

「じゃあ、お願いマーメイモン!先にいって様子をみてきて!」

 

「おーけい、任せて。ミウたちも早く来るんだよ!」

 

「うん!」

 

マーメイモンに先行してもらい、俺たちは背後からの奇襲に備えながらも先を急いだ。

 

戦いの音は次第に激しさを増し、断末魔混じりになっていく。視界が開け、三叉にわかれた水路に出る。それがチンロンモンの配下である3体の十二神将との初邂逅となるのだった。

 

「もう来やがったのか、はえーよ。もう少しで掃除終わってたのに」

 

そういって翼の返り血を払ったのはミヒラモンという虎に似た姿のケモノガミだった。

 

「そういうな、ミヒラモン。助太刀感謝するぞマーメイモン。私たちはどうしても得意な種族に偏りが出るからな」

 

そういってマーメイモンを労ったのは、俺たちがよく知ってるロップモンの進化先であるアンティラモンだった。

 

「え、じゃあ知ってたのかよ、コテモン」

 

「知るわけあるかい、十二神将は生まれたときから今の姿なんだ。進化前なんて存在してねえよ」

 

「あ、そっか」

 

「そりゃあびっくりしたさ、進化して初めて知ったよ。チンロンモン様のお膝元でロップモンが初進化した時は、巡り合わせってモンがあるんだなと思ったね」

 

ロップモンの進化先と一緒だが十二神将の方は胸に梵字がある違いがあるようだ。コテモンのいうことが本当なら、十二神将に暗黒進化しかかった場所を守護されていることになる。もしリョウに殴られてシュウジが改心してなかったら今頃十二神将の信用が地に落ち、当然ながら報告がいくチンロンモンたちに見限られていたわけだ。そりゃコテモンが十二神将や四聖獣のこと、教えてくれなくなるわけだと思った。

 

「つーか、マジラモン!話が全然ちげーじゃねえかい、なーにがあと10日は持ち堪えられるだよ!おかげで俺の面目丸潰れじゃねーかあ!!」

 

コテモンがビシィと竹刀をさしたのは、竜の姿をしたケモノガミだった。

 

「あっはっは、仕方ねーだろ情報は鮮度なんだよ。正確さを求めるにしたって分刻みで変わる動向なんざ逐一わかるかってんだ。もっと要求すんならもっと価値ある物品寄越しやがれ。それが嫌ならクンビラモンとこいけ、阿呆」

 

「はああっ!?あんだけアイテム渡しといてなんつーいいぐさだよ、てめー!」

 

「だいたいクンビラモンの予知外しまくる行動しかしねーお前らが原因だろーよ。喜ばしいことじゃねえか」

 

「私たちも本来なら弱体化するはずだったのだ、コテモン。そう言わないでやってくれ。今まで『主』の封印にさかれていたチンロンモン様の力が、認知の上昇で力を取り戻したためにむしろ強化されたんだ。そのかわり『主』の配下も眷属も同じ恩恵にあずかっているから一長一短だがな」

 

「あのー、みんな無事でよかったんだけどさ、チンロンモンの祠が壊されてたのはなんだったの?」

 

「あー、あれか?破壊しか能がねえピノッキモン共が入口がわからねえからって、俺たちを誘き出すために手当たり次第に破壊して回ったせいだぜ」

 

「ケモノガミは基本的に四聖獣様たちの祠を見つけ出す手段はないのだ」

 

「あ、そっか。iPhoneないから」

 

「ピノッキモンたちならすでに私たちが倒したから問題ない。安心してくれ」

 

「『主』にお前たちの誰かが飲み込まれていたら、その知識や道具を駆使されて今頃大惨事だったろうがな」

 

ミヒラモンに言われて俺たちは誰一人欠けることなくここまでこれて本当に良かったのだと痛感する。

 

「チンロンモン様から命は受けている。ミヒラモンたちは反対側の水路の軍勢の相手をするからな、私が案内しよう。ついてくるといい」

 

見慣れたアンティラモンなのに強者の風格がただようのはさすが十二神将といったところだろうか。

 

「くっそ、こんなことなら秘蔵のアイテム渡さなきゃよかったぜ。あの詐欺師め」

 

コテモンだけは納得いかないのかぶすくれていた。

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