クンビラモンたちが今どこにいるのかジジモンから聞いた俺はコテモンをみる。気づいたコテモンは頷くなり進化した。
「ヤシャモン、神通力頼むぜ」
「了解だぜ、スバルの旦那。オレに任せな」
白い仮面が怪しく光り、超能力が発動する。タクマたちがなんだなんだと見てくるので、ヤシャモンはあらゆる超能力が使えるのだとかわりに教えてやった。たとえば傀儡の術とか千里眼とか。
戦場とかした遊園地の敵の陣形を把握したヤシャモンは仲間を見渡して、ガイオウモンのときとクレニアムモンのときで戦いやすかった敵をざっと説明してくれる。これでウォーグレイモンたちも有利な敵を選んで戦えるはずだ。俺はタクマたちに分散するよう告げた。わかれて個別で確実に仕留めた方が効率がいいだろう。
「修練で嫌ってほどやったからね、精度にゃ自信がある。安心しな」
ヤシャモンはガイオウモンに進化した。ムゲンドラモンの部下たちはムゲンドラモンを倒すより先に始末しないと、自害してパーツを提供してくるのだ。今回はタクマたちがいるから、どうみても部下から片付けた方がはやい。
そういうとみんな納得してくれた。
ちなみに、部下たちはそれぞれ以下のとおりだ。メタルグレイモンは胸部パーツと左腕のトライデントアームを転用している。メタルマメモンはサイコブラスターをムゲンキャノンに転用、アンドロモンは頭部の装甲を膝に転用。 メガドラモンは頭パーツとメガハンドを転用。 メタルティラノモンは下顎のパーツと腹部を転用となる。
つまり、部下たちを全滅させれば回復するタイミングが潰せるのだ。
「えっと、じゃあ敵の近くにいける地下通路を案内するよ。ついてきて!」
ミウがタクマたちを途中まで案内するようだ。女王の間の隠し通路に消えていったタクマたちを見届けて、俺たちはその大きな扉からいけるベランダに出た。
散々苦しめられたあの必殺技のムゲンキャノンを封じるためにもメタルマメモンたちを倒した方がいい。散っていったタクマたちを見届けて、ガイオウモンが菊燐を抜いた。剣先から鞘に至るまで不思議な光が浮かび、次第に輝きを増し始める。
「さあて、オレたちもはじめっか」
相手の軍勢はこちらに気づいてすらない。ベランダから豪快に飛び降りたガイオウモンは敵陣の真ん中に降り立つなり、菊燐の斬撃が波紋のように広がっていった。その真っ赤な光は次々と敵を真っ二つに両断する。死ななかったのはムゲンドラモンの直属の部下たちだけだ。
「さあて、かかって来な。一人残らず菊燐の錆にしてやるよ!」
一体一体着実に仕留めていくガイオウモン。その度に菊燐の斬撃によく似た真っ赤な粒子が四散し、菊燐に新たな力を付与していく。俺は奇襲をしかけようとする敵がいないかベランダから探す。視界の隅に散々苦しめられてきたムゲンキャノンににた光の収束を見た俺は声を張り上げた。
「ガイオウモン、12時の方角からエネルギーブラスターが来るぜ!」
「おうよ、任せな!」
ベランダから叫ぶ俺に頷いたガイオウモン。すさかず死角からぶっ放されたメタルマメモンの必殺技を真正面から叩き切り、上から跳躍して降りかぶられた鋭い鉤爪を菊燐で受け止めた。火花が散る。
「てめーのブラスターがムゲンドラモンに使われちゃ困るのよ。今ここで破壊させてもらうぜ!」
真っ先にエネルギーブラスターを破壊したガイオウモンは足元に転がったそれを念入りに切り刻んでいく。鉤爪でなお抵抗するメタルマメモンの攻撃をあえて受け、そのまま火花が散るブラスターの方に抑え込んでいく。行き場を失ったエネルギーが次第に嫌な音や光を伴いながら広がる。爆発が起こる。メタルマメモンごと大爆破が起き、あたりに爆風が吹き荒れた。
「いっちょあがりだ。降りてきな、スバルの旦那。他の奴らの助太刀に行きやしょうや」
手招きするガイオウモンに頷いた俺はベランダから飛び降りる。受け止めてくれたガイオウモンに降ろしてもらった俺は、ベランダから見えた戦場を説明する。
「よし、じゃあ次いくか」
「急ごうぜ、ガイオウモン」
「おうよ」
戦場を駆ける俺たちに霧が立ち込めてくる。
「げっ、『主』の霧は入り込めないんじゃなかったのかよ?」
「いや、違うね。これはあれだ。シェンウーモン様の霧だ」
「シェンウーモンの?まじで?」
「そうさ、嫌な感じはしねえだろ?それにオレらの進行を邪魔するようなとこにはたちこめてねえ」
「ほんとだ、他の奴らはこっちに気づいてないのそのせいか」
俺たちはなんともないのだが、敵の様子がさっきからおかしい。あらぬところを攻撃したり、味方に襲い掛かったり、どんどん自爆していくではないか。
「幻覚みせてんだな。精神破壊すんのはジジモンが冥府に送っちまったから効果ありそうな敵残ってねえし、今回は意味なしだが」
にやりとガイオウモンが笑う。そしておもむろに立ち止まると菊燐を抜いた。
「おもしれえもんを見せてやるよ、スバルの旦那。ここはシェンウーモン様のおわす北側だ。ゆえに十二神将たる俺が一番加護を得られる場所でもある。それがなにを意味するのか。さあ、ご照覧あれだ」
ガイオウモンのもつ菊燐が不思議な光に包まれていく。周りの霧をものみこんでいく。いつもの大爆発を起こすのかと思いきや、光は勢いを増していき、ガイオウモンの姿形が変わっていくではないか。これはまさか───────?!
光を突き破り、菊燐が現れる。だが二刀流だったはずの刃はひとつしかない。斬撃が実体化して広がるはずの赤い光はどこにもなく、風すらなかった。驚くほどの静寂があたりを支配していた。
「!?」
連鎖的にあたりにいたケモノガミたちが真っ二つに切り裂かれていく。悲鳴すら上がらないということは、本人は切られたことすら気づいていないようだった。ばたばたと倒れていくケモノガミたち。胴体が真っ二つになっていて、そこから赤い粒子が溢れ出て消えていき、その赤い粒子はガイオウモンがいるはずの光の向こう側に吸い込まれていく。
「天燐厳刀流(てんりんいっとうりゅう)の真髄は、音も無く一瞬で相手を斬り捨てる静の剣術なのさ。これを極めた者を前にしたら最期、敵は一分の隙も見つけられず、近寄ることすらままならないまましんじまうのよ。奥義『刀華静謐(とうかせいひつ)、どうだい旦那?わるかねえだろう?」
ガイオウモンの姿が変わっていた。
「そいつはよかった」
びっくりしすぎて驚くしかない俺に、悪戯が大成功したとでもいいたげに、ガイオウモンはうれしそうに笑っている。
剣道を小さい時からやってきた俺だって腕こそ落ちてるだろうけど剣士の端くれだからわかるのだ。
たった今、ガイオウモンは周囲の敵をたった一太刀で切り伏せたのだ。比喩ではない。具体的にだ。こんな広範囲の敵に自分達が斬られたことも悟らせず。これなら下手をしたら静かに戦いの幕を引くことだって可能だろう。それくらいの強さをガイオウモンは俺の目の前で惜しげもなく披露してくれたのだ。驚かない方が無理だ。
「数多の悲劇を乗り越えて、到達しえない未来をようやく掴めそうなオレらにシェンウーモン様がくださった力だ。ありがたく使わせてもらおうぜ、旦那」
「え、そうなのか?シェンウーモンが?」
「おうよ。誇っていいぜ、スバルの旦那。アンタは認められたんだ。もちろんこれだけじゃねえぜ。剣豪ってのは静と動の剣術を使い分けてこそだ、さあ行きやしょう旦那。オレの全力はこんなモンじゃねえってこと見せてやるよ」