(完結)鹿野岸奇譚(デジモンサヴァイブ)   作:アズマケイ

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スーツェーモンの祠にて

校舎の中はアオイたちが探してくれているので、スバルたちは自主的に校舎周りを調べてみた。焼却炉、ゴミ捨て場、動物の飼育小屋、運動会で使う備品のある倉庫、運動部が使う部室、トイレあたりだ。

 

探索をしてみるが相変わらず木造校舎と体育館、下駄箱とうさぎの飼育小屋がある、ありふれた小学校だった。

 

「どこにもねえなら、やっぱ隠れてんだな。うーん、ミユキの記憶を頼りに上書きされた感じだろうし、どこだこれ?廊下でも剥がしてみるか?」

 

「そうだねえ、全部剥がしちまうか!そしたら手っ取り早......」

 

いきなり顔を上げたコテモンが先に行かないよう制してくる。スバルは思わずあたりを見渡した。

 

「スバルの旦那、あぶねえ伏せな!」

 

スバルとコテモンの間をなにかがすり抜けていく。掠めたなにかに傷つけられたスバルはたまらず腕を抑えた。血がじわじわ溢れてくる。止まらない。

 

「スバルの旦那、大丈夫かい?!っこの野郎」

 

矢は乾いた、するどいひびきをたてて空気を裂き、木の幹に突き刺さる。弦打ちの音がさながら蝙蝠の羽音のように揺れた。スバルは意識が飛んでしまう。

 

「旦那!」

 

「動くんじゃねえぞ、一歩でも動いたら殺してやる」

 

ヘビの唸るような声がする。身動きが取れなくなったスバルはそのまま意識を失ってしまったのである。

 

「大丈夫か、殺してないだろうな?」

 

「殺してない、スーツェーモン様に殺されちまうじゃねえか」

 

倒れたコテモンとスバルを抱えて羊に似たケモノガミは立ち上がる。

 

「悪く思うなよ、おまえの存在は少なからずほかの人間たちに影響を与えているのだ。個々人の思想を図りたいスーツェーモン様の邪魔になるのだ。しばらく眠っているがいい」

 

「めんどくせえな、寝てるところ一網打尽にした方が手っ取り早いじゃねえか」

 

「馬鹿いうな、これは試練に必要だからやっているのだ。手を出すことは何人たりとも許されん。お前は邪魔する奴らがこないか見張っていろ」

 

「やれやれ、わかったよ」

 

白いヘビのケモノガミは悪態をついてこそいたが笑ったまま姿を消した。

 

ケモノガミはその性質から3つにわけられる。まずは周囲の環境を自分の住みやすい環境に変化させる種。結果としてさまざまな異常を発生させる。ベルゼブモンやガイオウモン、ボルトバウタモンがその筆頭だ。己の感情を第一に考える激情家が多い。

 

次に周囲の環境や自分の縄張りを守るように働きかける種。結果として前者と対抗する動きをとる。これは秩序やルールを最優先に考える道義的な者が多く、ウォーグレイモンが挙げられる。

 

最後は周囲の環境に自分を合わせて生息する種。ケレスモンメディウムあたりが属しており、前2つにも属さず、環境に働きかけるような動きはしない。ゆえに仲間を優先的に考える調和を重視する者が多い。

 

どれでもないのがバンチョースティングモンを始めとする属性を持っていない種。まだケモノガミが誕生したばかりの頃に「どのように生き抜くのか」が曖昧だった名残だと言われている。

 

同じケモノガミでも千差万別なのだ。その全てを人間たちとまた共存させたいと願う彼らがスーツェーモン様の試練に挑むにはこの少年たちは邪魔なのだ。羊のケモノガミは自分たちの祠をいち早く見つけ出したスバル達をかかえて校庭裏から姿を消した。

 

スバルが目を覚ますと、あたりは薄暗い洞窟の中だった。iPhoneのライトをかざしてみるとスーツェーモンと三体の配下の描かれた壁画がスバルを見下ろしていた。痛みに目を向けると包帯が巻かれていた。

 

「旦那!スバルの旦那ッ!よかった、目を覚さないかと思ってヒヤヒヤしたぜ。無事でよかった!」

 

「コテモン、よかった。大丈夫か?」

 

「そりゃこっちのセリフだぜ、旦那。」

 

「嫌だわ、野蛮なケモノガミが来ていいとこじゃないのよ」

 

インダラモンと名乗った馬の獣人はうんざりした様子で鼻を鳴らした。

 

「なにより美しくないわ、でてって頂戴。目が腐る」

 

背中に背負っている巨大な法螺貝を吹き鳴らし、『主』の眷属たちを粉砕し、叩きつけられてぼろぼろになった粘着質の物質すら吹き飛ばしてしまう。コテモンが進化するまもなくスーツェーモンの祠はいなくなってしまったのだった。

 

「やれやれ口ほどにもないわ。だから言ったのに馬鹿ねえ、そうは思わない?」

 

「相変わらずイケスかねえ野郎だぜ、インダラモン」

 

「なによ、その言い方。感じ悪いわねえ、全く。なーにがスバルの旦那に手を出したらタダじゃおかねえよ。完全体たった2体に制圧されてんじゃないわよ、なっさけないわねえ」

 

「んなっ!?いきなり襲撃する方が悪いじゃねえか、卑怯モンが」

 

「なにが卑怯者よ、戦いに卑怯もクソもないわ。勝った方が全てなのよ、わかる?ぐちゃぐちゃ御託ぬかす前に『主』の眷属の襲撃だったら死んでたんだから、そこんとこ反省しなさいよねえ」

 

「ぐうっ、痛いところつくじゃねえか」

 

「先に喧嘩ふっかけてきたのはそっちでしょうになにいってんのよ、阿呆ねえ」

 

インダラモンは法螺貝をふたたび背負い込みながら笑ったのだった。スーツェーモンの配下のようだ、敵ではないらしい。どうやらコテモンとはかなり相性が悪いらしく、かなり不機嫌になっている。

 

「悪く思わないで頂戴ね、アンタたちがいるとほかの人間たちの指標になっちゃって試練にならないのよ」

 

「んなのアリかよ、そんな理由でスバルの旦那が弾かれるなんて」

 

「だってアンタら試練の裏側まで予想とはいえぜーんぶ話しちゃうじゃないの。人間とケモノガミが不協和音奏でる前に芽をつまれちゃ試練にならないっての。情報提供も大概にしなさいよね」

 

「はあっ!?」

 

「いや俺そんなつもりじゃなかったんだけど」

 

「そうよそれよ、それが一番厄介なのよ全く......だいたいアンタのパートナーは十二神将だからパジラモンの悪夢から逃れられなくても誰の仕業か看破しちゃうじゃないの」

 

「あの悪夢突破できるのクンビラモンだけなんだ、そんくらい構わねーだろうが」

 

「なーにがそんくらい構わねえよ、全然よくないっつーの!試練だってバレたら人間たちの本質見極める前に正気になっちゃうでしょうが!人間の本性みるにはパートナーの進化をみるのが一番てっとり早いんだから邪魔しないで欲しいわね!」

 

「つうか幻覚で試験してんのかよ、『主』の眷属でいい加減耐性ついてんぞみんな」

 

「うっさいわね、アタシは担当じゃないからいいのよ。とにかく、アンタらは試練が終わるまでここでじっとしてなさいよ。下手に動かれて『主』側に場所がバレるのも面倒なんだから」

 

「あのさ、ここにいる俺たちの場所はバレてね?」

 

「それはいいのよ、パジラモンたちがいる場所がバレたらやだからっていってんの。つーわけでほかの人間たちの試練が終わるまで襲撃に対応するのアタシしかいないし、手伝って頂戴」

 

「はああっ!?勝手に拉致っといてなんだそりゃあ!」

 

「うっさいわね、こちとら分身とか器用な真似ができる奴が試練担当だからいないのよ!」

 

「あのヘビの野郎はどうした、パジラモンだけでいいじゃねえかよ」

 

「試練中に横槍入れる奴らから護衛するために決まってんじゃないの、頭働かせりゃそれくらいわかるでしょうに」

 

「うっせえ!」

 

ギャーギャー言い始めたコテモンたちの大声はスーツェーモンの祠全体に響き渡る。

 

「なあ、敵が気づいちまうから静かにした方がよくね?」

 

スバルの言葉にピタリと会話が止まる。祠の入り口から物音がし始める。

 

「言わんこっちゃねえ」

 

スバルはため息をついたのだった。

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