(完結)鹿野岸奇譚(デジモンサヴァイブ)   作:アズマケイ

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戦い描写がうまくいかず省略しました、申し訳ない。


スーツェーモンの試練9

仕切り直しにしては長すぎる闘いはようやく決着がついた。今までの四聖獣の戦いとは違って、赤い12個の球体を規定の時間までにいくつ破壊できるか、あるいは規定の時間までスバルたちが立っていられるかだった。

 

ケモノガミを第一に考えるスーツェーモンは、試練中とはいえ手加減して敗北するという手加減が全く出来なかったのだ。

 

おかげで全然勝った気はしない。だが予想以上に見込みがあるとスーツェーモンへの進化をファルコモンに解禁するくらいには、スバル達を認めてくれたのはたしかだった。

 

スーツェーモンとの闘いは熾烈を極めたが、なんとか勝利をおさめることができた。だがその代償は大きく、コテモンたちはさらに小さなケモノガミにまで退化してしまったのである。スバルの腕の中には猫のような犬のような水色のよくわからないケモノガミが収まっている。

 

約束どおり、スーツェーモンは加護を授けてくれた。そして、これからこの世界をどうしていくのかはインターネットにケモノガミの都市伝説を広めて様子をみるまで結論を先延ばしすることに同意してくれた。

 

明日挑むことになるであろう水無瀬ハルチカとファンロンモンが支配するケモノガミ世界の『主』への戦いに、力を貸してくれるとも。

 

そして今、スバル達は今なおミユキとハルが融合して憑依したままのユキハの話を聞くべく、耳を傾けているのである。

 

『私は何も知らされていませんでした』

 

ユキハは語り出す。

 

日本海を渡る渡航技術に優れた大陸の民が時々襲撃を仕掛けてくるようになり、朝廷は地方で力をつけ始めていたのちに武士の始まりとなる者たちを派遣する事件が増え始めていた。

 

ケモノガミがいた時代だ、戦いは熾烈を極め、毎回多数の死傷者が出ていた。ゆえにケモノガミの神を人工的に作り上げるのは国を守るためにも急務だという情勢もあった。

 

当時、ケモノガミ信仰の総本山にしてケモノガミのことをよく知る水無瀬家は、その立場ゆえに朝廷で勢力があまりにも大きくなりすぎていた。貴族でもなく、皇族でもなく、神職にもかかわらず戦において欠かすことができない存在だったからだ。

 

ケモノガミ信仰は古来から日本土着の信仰でありながら怪異と結びつきが強いために、自ら片割れたるケモノガミがいながら苦々しく思う宗教勢力もいた。

 

水無瀬家は朝廷内の勢力争いに敗れたともいえるのかもしれない。

 

朝廷側の思惑が知らされたのはケモノガミと人間の世界がふたつにわかれ、門が閉じられたあと。逃げ延びた朝廷側の護衛役が実は逃亡を監視する役割を担っていたことを知らされた時、ユキハは最愛の弟を失ったのである。そして、なにも知らなかったために無事の帰還を願って渡した不老長寿を意味する紫色の勾玉がハルチカにとっての呪詛と解釈され、絶望する弟にトドメをさしたことを知った。

 

水無瀬ユキハは門から水無瀬ハルチカが帰還する事を最後まで願っていたが叶わないことを知った。死後に奇跡が起きてハルチカの霊魂が門から帰還できた時に黄泉の国にいくための道標として奉納したらしい。

 

いくら水無瀬家が鹿野岸を治めるケモノガミ信仰の総本山たる一族とはいえ、この国を治める朝廷と比べれば由緒は所詮地方の豪族、塵芥に等しい。なにも意義を申し立てることすらできなかった。

 

ケモノガミの消失はケモノガミ信仰の消滅を意味した。水無瀬家は存在意義を完全に喪失した。それでも水無瀬ユキハは水無瀬家当主として鹿野岸の人々を守らなければならず、朝廷の怒りに触れてお家断絶こそ免れたが鹿野岸から毎年生贄を捧げなければならない役目を負わされたのだ。朝廷側が秘密裏に進めていた計画が失敗したにもかかわらず、騙されていた水無瀬家は汚名を被る羽目になったのである。

 

1000年前には当然のように存在したケモノガミという誰もが知り得た怪異が一夜にして全世界から消滅したという事実。そこから派生する混乱。あらゆる責任が水無瀬家に負わされた。人間だけで秩序を作り上げることになったことで朝廷側の力は強まったが、誰もが身を守るために武器をとらなけばならなくなり、武士の時代へと移り変わっていく。

 

門は水無瀬家の秘術により作り上げられたものだ。ゆえに水無瀬ユキハは門を開けられたが、自身が行くことは絶対に許されなかった。門の先に一歩でも足を踏み入れたら反乱を起こすと見做されて一族、鹿野岸の民を危険因子として皆殺しにすると言われたのだ。監視役として代々朝廷側から使者が送られてきて身動きがとれなかったともいう。

 

やがてこの国の中心が朝廷から幕府に移り変わっても監視は続けられ、明治に入りケモノガミ信仰が廃れる頃には全てが形骸化していた。生贄を捧げる風習は廃れたが、神隠しとして現代にまで水無瀬家に課せられた呪いは継続している。

 

『話してくれてありがとうございます。スーツェーモンたちのお話を聞いて、我が弟ハルチカの壮絶な最期をようやく知ることができました。この国を護りたいという尊い願いを叶えるために過酷な旅に出て、朝廷に仕えるという目標のために邁進してきた貴方がたを、最悪な形で裏切ってしまい、本当にごめんなさい』

 

深々と頭を下げる巫女の姿をしたサクヤモンにスーツェーモンの従者の少年は静かに首を振った。

 

歴史の教科書、あるいは大河ドラマでよくある話がたくさん出てきて、スバルたちはある意味感動していた。スーツェーモンたちが歴史の潮流の中に埋もれてしまった実在の人々が目の前にいるのだ。今までは水無瀬教授の長年の研究成果から知識を得ていたが、水無瀬ユキハたちはまさに時代の生き証人といっても過言ではないからだ。

 

『あちらの世界ではそのような状況になっていたのですね。私達には難しい世界の話だ』

 

『ますます失望したぞ、水無瀬ユキハ。我らを政争の道具にしたあげく、我が半身らが下した苦渋の決断すら良いように利用されたとは。水無瀬一族はどこまで無能なのだ。無能なら無能なりの動き方があろうに、ケモノガミをなんだと思っていたのだ貴様らは』

 

『返す言葉もありません......私達はケモノガミ信仰を護るあまりに、他の手立てであなた方をお守りする手段が無さすぎました。そもそも政争に関わるべきではなかった』

 

スーツェーモンはタクマ達を見る。

 

『聞いていたか、ニンゲンども。ケモノガミを道具にするとはこういうことだ。今の貴様らの世界は広い。ニンゲンの数も多い。必ずやケモノガミを道具にするニンゲン、あるいは自ら力を欲してニンゲンを利用するケモノガミが現れよう。ケモノガミを道具にすると水無瀬一族の二の舞になるのだ。ゆめゆめ忘れてくれるなよ。我が忠告を聞いてなお、共存を主張したのだ。貴様らが大人になったとき、ケモノガミとニンゲンの在り方が疎かになった暁には。それが引き金になり争いが絶えぬ、今の世界より悪い世界が到来していたのならば。今度こそニンゲンもろともケモノガミも世界も心中してくれよう。その果てに待ち受けるのは塵芥すら残らぬ未来だと思え』

 

この場にいる誰もがスーツェーモンの言葉が脅し文句でないことはわかっていた。なにせ先程終わったばかりの戦いでいやというほど思い知らされたからだ。スバルたちは大きく頷いたのだった。

 

「長きに渡る試練をよくぞ突破した、ニンゲンたちよ。今日はゆっくり休むがいい。護衛は我らが務めようぞ」

 

ようやく口を開いたパジラモンがパートナーたちを回復してくれる。気づくとスバルたちは体育館に戻されていたのだった。

 

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